【アーカイブ】運動学習研究の最新の知見と臨床での活かし方

運動器疾患
  • 川崎 翼 先生 / 濵田裕幸 先生 / 秋月千典 先生 / 鈴木博人 先生 / 菅田陽怜 先生 / 金 起徹 先生
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プログラム

運動学習とは,永続的な動作やスキル獲得のためのプロセスである。臨床リハビリテーションにおいて、歩行能力や日常生活能力の改善には、この運動学習を促す手続きが必要となる。すなわち、運動学習に関する知識とその実践方法を学ぶことは、リハビリテーションの効果を高めることに直結する。しかしながら、リハビリテーション対象者は、脳やその他の身体の変調または病態を有しているため、健常人のように運動学習が円滑に進まないことがある。また、健常人の運動学習では有効とされる知見が、リハビリテーション対象者には応用できない場合があることも知られている。そこで今回、こういった課題を解決すべく、リハビリテーション対象者の運動学習を促すための手続きを体系的に学ぶための講座を企画した。


<講習会目標>

各講座は、運動学習に関する知識を体系的かつ網羅的に学ぶことができるよう配慮されている。運動学習を理解する上で必要な基本的知識(第1講座)を提示する。第1講座を踏まえた第2,3,5,6講座では、臨床で利用可能な運動学習を促すための具体的な介入方法(ニューロモジュレーション、認知的介入、言語教示・練習計画、目的指向型トレーニング)を提示する。第4,7講座では、運動学習効率に影響する背景として、精神状況や神経活動に関する内容を提示する。最後の第8講座では、これまで学んだ運動学習に関する知識がどのように臨床で用いられているのか理解を深めるために実症例を提示する。本講座を通じて、対象者の運動学習が効果的に支援できるよう、運動学習に関する知識を深く理解してもらいたい。

 

【講座内容】

第1講座:リハビリテーションにおける運動学習の基礎知識

講師:川崎 翼 先生


運動学習は元来、心理学領域で研究されてきた。現在運動学習はスポーツ心理学の中心的トピックの一つであり、スポーツパフォーマンス向上に主眼が置かれた検証が盛んである。こういった検証結果は、リハビリテーション対象者の動作獲得の支援に応用できることがある。しかし、実際にはリハビリテーション対象者の病態は多様であり、獲得したい動作もスポーツパフォーマンスと異なる場合が多い。このため、リハビリテーションを促すための運動学習に関する知識が別途必要になる。本講座では、リハビリテーション実施に必要な運動学習の基礎知識と考え方について概説する。また、講座全体の趣旨と目的を含め、第2講座以降の流れを説明する。


<学習内容>

・運動学習の定義

・運動学習理論について

・運動学習に関する基本的用語


<学習目標>

各講座を円滑に学び、深く理解するために必要な運動学習に関する定義、理論、基本的な用語を理解する。


第2講座:運動学習を促すニューロモジュレーション技術の理論と実際

講師:濵田 裕幸 先生


限られた期間の中で、機能回復や動作能力の改善を図るためには、リハビリテーション介入のみならず、多角的なアプローチが求められる。近年、頭皮上からの磁気や電気刺激といった脳活動を修飾するニューロモジュレーション手法によるアプローチが注目されている。そこで、本講座では、ニューロモジュレーション手法の理論を整理した上で、運動学習時の神経活動に基づくアプローチの効果を紹介する。さらに、運動学習に対する効果をリハビリテーションへ応用するための克服すべき課題を提示し、臨床展開のためのアプローチ方法の提案を行う。


<学習内容>

・ニューロモジュレーション手法の種類と特徴

・運動学習に対するニューロモジュレーションによる介入戦略

・ニューロモジュレーション介入による運動学習への効果と課題


<学習目標>

種々のニューロモジュレーション手法の特徴とその効果、注意点を理解する。


第3講座:運動学習を促す認知的介入

講師:川崎 翼 先生


認知的介入は身体的な負担をかけずに行えるため、易疲労性や活動制限を有する方における重要な介入手段になる。また認知的介入は、リハビリテーション時間外の安全な介入手段になり得るため、幅広い対象者に適応可能である。運動イメージトレーニングや運動観察療法は代表的な認知的介入であり、近年これらの運動学習効果の検証が進められてきている。本講座では、まず運動イメージトレーニングや運動観察療法が、運動学習にどのような効果をもたらすかついて説明する。その上で、これらの介入効果を高めるための工夫や注意点について提示し、臨床リハビリテーションにおける効果的な認知的介入の実践を支援する。


<学習内容>

・運動イメージ介入による運動学習効果

・運動観察療法による運動学習効果

・運動イメージ介入、運動観察療法を効果的に行うための考え方と工夫


<学習目標>

身体運動を伴うことなく行える認知的介入の概要(効果)と具体的な方法を理解する。


第4講座:運動学習効果に影響する精神的要因

講師:秋月 千典 先生


運動学習では、対象者の能動的関与が必要不可欠である。そのため、セラピストが練習環境や練習条件を適切に調整したとしても、対象者の能動的な身体的・精神的活動が不足していれば、その効果は十分に発揮されない。従って、リハビリテーションの現場において運動学習の効果を高めるためには、対象者の精神的要因も考慮に入れたアプローチを構築する必要がある。そこで、本講座では、学習者の精神的要因として主に動機づけに焦点を当て、学習者の精神的要因が運動学習に与える影響及び精神的要因を考慮に入れたアプローチ方法について解説を行う。


<学習内容>

・運動学習に影響を与える精神的要因

・動機づけについて

・内発動機づけに焦点を当てたアプローチ


<学習目標>

学習者の精神的要因が運動学習に与える影響及び精神的要因を考慮に入れたアプローチ方法を理解する。


第5講座:運動学習を促す言語教示の仕方と練習計画方法

講師:鈴木 博人 先生


運動心理学分野において、指導方法論(声がけの仕方、フィードバックの与え方など)や練習計画法(練習課題の組み立て方)など重要なテーマが取り上げられてきた。これらのデータはリハビリテーションと関連深く、セラピストの一挙手一投足が運動学習に影響しうる要因であることを示唆している。そこで本講座では、指導方法論から「言語教示」を取り上げ、Focus of attentionに関する研究を中心に紹介する。また、練習計画法からは「全体法・部分法」や「ブロック練習・ランダム練習」などについて解説する。さらに、既存のデータの限界について明示し、運動学習理論を臨床応用する場合の注意点について共有したい。


<学習内容>

・Focus of attentionについて

・言語強化について

・練習計画法に関する運動学習効果について


<学習目標>

声がけ(言語教示・言語強化)および練習計画法について運動学習理論の観点から理解する。


第6講座:運動学習の知見を活かした目的指向型トレーニングの設定方法

講師:秋月 千典 先生


運動制御理論及び運動学習理論を基盤としたアプローチ方法として、課題指向型アプローチ(トレーニング)が提案されている。課題指向型アプローチでは、対象者のニーズや病態に合わせた課題の設定、練習強度や課題難易度の調整などが求められる。そのため、課題指向型アプローチの内容は、画一的なものではなくテーラーメイド型に設定・調整されたものとなる。本講座では、課題指向型アプローチについての概説に加え、運動学習の知見を活かした実践方法について提案を行う。


<学習内容>

・目的指向型トレーニングについて

・課題の設定方法

・課題難易度の調整方法


<学習目標>

目的指向型トレーニングの概要とその実践方法(課題設定、練習強度、課題難易度の調整方法)を理解する。


第7講座:運動学習に関連する神経活動

講師:菅田 陽怜 先生


理学療法の臨床場面において、運動学習の理論を用いたトレーニングが利用される機会は多い。しかしながら、運動学習に関わる脳内機構について、現時点ですべてが明らかにされたとは言い難い。そのため、運動学習のプロセスを応用した理学療法が経験則のみに基づいて使用されている例も少なくない。科学的根拠に基づく理学療法(EBPT)という概念のもと、理学療法のエビデンスを構築・強化していくためには運動学習に関わる脳内の神経機構を理解することが重要である。そこで講座では、運動学習に関わる脳内機構に焦点を当て、様々な脳科学研究から得られた知見をもとに、運動学習について概説したい。


<学習内容>

・各種運動学習に関わる脳内神経機構について

・運動学習による脳活動の変化について

・脳領域の変調による運動学習の変化について


<学習目標>

運動学習に関わる脳内の神経機構について理解する。


第8講座:運動学習理論を用いたリハビリテーション介入の実際(整形外科疾患・中枢神経疾患)

講師:金 起徹 先生


リハビリテーションでは疾病から生じた機能障害を治療し、その機能障害から引き起こされている動作パフォーマンスの低下を改善させることが重要である。しかしながら、これら機能障害は必ず治癒するものではなく、残存機能を有効に用いた運動を学習することが必要であり、そのためには常に運動学習理論を利用または応用することが不可欠である。本講座では実際のリハビリテーション介入でどのように運動学習理論を用いているかを症例を提示しながら解説していく。


<学習内容>

・評価方法について

・介入方針について

・適応と限界について


<学習目標>

症例に対して運動学習理論を用いるために必要な評価、方法について理解する。

講座リスト

  • リハビリテーションにおける運動学習の基礎知識

    川崎 翼 先生
  • 運動学習を促すニューロモジュレーション技術の理論と実際

    濵田裕幸 先生
  • 運動学習を促す認知的介入

    川崎 翼 先生
  • 運動学習効果に影響する精神的要因

    秋月千典 先生
  • 運動学習を促す言語教示の仕方と練習計画方法

    鈴木博人 先生
  • 運動学習の知見を活かした目的指向型トレーニングの設定方法

    秋月千典 先生
  • 運動学習に関連する神経活動

    菅田陽怜 先生
  • 運動学習理論を用いたリハビリテーション介入の実際(整形外科疾患・中枢神経疾患)

    金 起徹 先生

講師紹介

  • 川崎 翼 先生

    理学療法士
    東京国際大学医療健康学部理学療法学科准教授
  • 濵田裕幸 先生

    理学療法士
    東京大学 大学院工学系研究科 精密工学専攻 特任助教
  • 秋月千典 先生

    理学療法士
    目白大学保健医療学部理学療法学科 講師
  • 鈴木博人 先生

    理学療法士
    東北文化学園大学 医療福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻 講師
  • 菅田陽怜 先生

    理学療法士
    大分大学 福祉健康科学部 理学療法コース 准教授
  • 金 起徹 先生

    理学療法士
    川口脳神経外科リハビリクリニック
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