Constraint-induced movement therapy(CI療法)における2つの課題指向型練習(1)〜Shaping〜

竹林崇先生のコラム
運動器疾患, その他
リハデミー編集部
2024.06.24
リハデミー編集部
2024.06.24

<本コラムの目標>

1. CI療法におけるShapingの概念を知る

2. Shapingの効能を知る

3. Shaping課題の実施方法を知る


1. Shapingって何?

 Shapingとは、CI療法において採用されている2つの課題指向型練習のうちの1つです。行動心理学を基盤とした手法であり、練習課題に細やかで連続的な難易度調整を施すことで、運動もしくは活動における目標を達成するためのアプローチと考えられています。

 表1で示すShapingの一例を見ていただくと、Shapingは、ブロックを移動する、練習場面における特異的な物品を操作するといったものが多く、活動そのものを練習する課題指向型練習というよりは,目標となる活動に必要な関節運動を分析し,それらの関節運動の運動機能の向上を目的とした練習方法です。

 その根拠として,MorrisらやTaubらは、アラバマ大学のCI療法プロトコルにおいて、練習課題を提示する際に、練習課題の目的となるTarget movement (練習目的となる関節運動)を設定しています。こういった背景からも、Shapingは課題指向型アプローチの中でも特に「機能的」な側面が強いものと解釈できます。

2. Target movementはどのように決めれば良いか?

 基本的に、Target Movementは異常な共同運動パターンの逆の関節運動となることが多いです。例えば、対象者の近位関節である肩・肘・前腕においては,異常な共同運動パターンが、肩甲帯の伸展,挙上、肩関節の外転、内旋、肘関節の屈曲、を示していたとすると、作成するShapingは、課題の中に、肩甲帯の屈曲、下制、肩関節の内転、外旋、肘関節の伸展、を含むものを作成することとなります。

 また、遠位関節である手関節・手部の異常な共同運動パターンについては、例えば、手関節掌屈、母指の内転、母指IP関節の屈曲、2-4指の母指Metacarpophalamgeal関節(MP: 中手指節間関節)、proximal interphalangeal関節(PIP:近位指節間関節)・distal interphalangeal関節(DIP:遠位指節間関節)の屈曲が挙げられ、特にMP関節においては屈伸ともに随意的な動きは乏しく、物品の把持などはPIP・DIPの屈伸にて実施し、さらに、全ての手指は屈曲・伸展共同運動に支配されており,各指を分離して運動することが困難であったとします。

こういった手関節・手部の状況で、Shapingにおける課題の中に含むべき関節運動は、手関節の背屈、母指の外転、掌側外転、母指・小指の対立、MP関節の屈伸、DIP・PIP関節の伸展などが挙げられます。また,各手指の分離した運動を促すために、それぞれの手指を独立して動かすことができる能力(指折り等)も必要となるでしょう。これらの異常な共同運動パターンをしっかり評価し、その逆の動きを課題に落とし込み、反復運動を行うことで麻痺が軽減し、運動機能が向上します。

 また、筆者は、練習課題を作成する場合には,基本的に肩甲帯、肩関節、肘関節といった近位関節を対象とした課題から導入していきます。近位関節の運動機能の向上に伴い、徐々に前腕、手関節、手指に対する課題を作成し、実施します。これは、近位関節の機能がある程度確立されていなければ、中枢部での固定が不十分となり、遠位関節の運動機能のポテンシャルを十分に発揮できないためです。こういった注意点に留意しながら、Shapingにおける課題設定を行なっていきます。


参照文献

1. University of Alabama, Birmingham (UAB): UAB training for CI therapy. UAB CI therapy research group, 2011

2. 竹林崇.上肢運動障害の作業療法: 麻痺手に対する作業運動学と作業治療学の実際. 文光堂,東京,2018

前の記事

Constraint-induced m...

次の記事

Constraint-induced m...

Top