Constraint-induced movement therapy(CI療法)のエビデンス

竹林崇先生のコラム
運動器疾患, その他
リハデミー編集部
2024.06.17
リハデミー編集部
2024.06.17

<本コラムの目的>

・CI療法のエビデンスを知る


アプローチのエビデンスとは?

リハビリテーションに関わっているとエビデンスという言葉をよく聞きます。エビデンスとは、正確な臨床研究において、示された結果を指します(正確な研究法については、以前のコラム『エビデンスベースドプラクティスに臨床で取り組むための具体的な方法』 https://x.com/rehatech_links/status/1772861017690964141 を参照ください)。特にシステマティックレビューやメタアナリシスや、それらの結果について社会的情勢を鑑みた上で議論し、まとめられたガイドラインに関しては、アプローチ方法が対象者に対し、どのような結果を示す確率が高いのかを示す、臨床の指標となりうるものです。これらを参考に、臨床におけるアプローチ方法を選択するのも、標準的なアプローチを実施していく上で、大切な事です。

1. 有名なシステマティックレビュー&メタアナリシスの結果から

 CI療法に関わる比較的新しく、有名なシステマティックレビュー&メタアナリシスに Corbettaら[1]の論文があります。この論文のリサーチクエッションは『脳卒中を有する対象者の方に対するCI療法もしくは修正CI療法、Forced use therapy(麻痺手の生活内での強制使用)が、それら以外のアプローチと比べて、上肢の運動機能、生活における麻痺手の使用行動にとって有効かどうか』でした。

 システマチックレビュー&とメタアナリシスを確認するときに大切なのは、『何が何に対して有効か?』といった対象を理解して読むことが大切です。この研究では、対照群にCI療法、修正CI療法、Forced use therapy以外のものを選択しているので、本格的にCI療法が他療法に比べ、優れた結果を残せるかどうかを確認しています。この対照の中には、従来の作業療法・理学療法といったものもあれば、ボバースコンセプト、両手動作練習といったなかなかパワーが強い療法も含まれています。

 さて、結果としては、42件の研究が採択されました。研究の対象を増やすために、ランダム化比較試験の他に、偽ランダム化比較試験もサンプルの中に含まれていました。そういった影響もあり、若干、研究の正確性に欠ける部分も頭においておくことが必要です。

 これらの結果、CI療法もしくは修正CI療法、Forced use therapyはその他のアプローチに比べ、有意な運動機能の改善を認めました。ただし、3つの研究において、長期的なフォローアップがなされていたが、この点に関しては、その他のアプローチに比べ、有意な結果が認められなかったと報告しています。


システマティックレビューとメタアナリシスとは?

システマティックレビューは一定の正確性の基準を満たした研究デザインを有する質の高い研究を調査し、エビデンスを適切に分析・統合を行う手法のことを指します(正確な手順で行われたランダム化比較試験を対象とする研究が多いです)。メタアナリシスとは、システマティックレビュー等で集められた過去に行われた複数の研究結果を統合するための統計解析手法であり、それらによって、いくつかの研究の結果の傾向を確認することができます。

2. 代表的なガイドラインの結果から

 ガイドラインとは、上記で示したシステマティックレビューとメタアナリシスの結果を参考に、専門家や当事者等が、コストや社会的なインフラといった観点から実現可能性等を鑑みた上で、アプローチ自体の推奨度を提示する媒体であり、標準治療を行う上で、指標とされる媒体である。

 例えば、米国脳卒中学会のガイドラインを確認すると、CI療法と修正CI療法については、高齢な脳卒中を罹患した対象者の上肢麻痺を改善するための合理的な手段であるとし、エビデンスレベルⅡ、推奨度A(治療や処置が有用であることを推奨する、複数のランダム化試験またはメタアナリシスから得られたエビデンス)としている。

 また,Canadian best practiceでは、従来のCI療法または修正CI療法は、能動的な手関節伸展が20度以上、能動的な中手骨指節骨間(Metacarpo Phalangeal: MP)関節伸展が10度以上で、感覚障害がほとんどなく、認知機能が正常である対象者群に対して考慮すべきです[エビデンスレベル:早期-レベルA;後期-レベルA(レベルA: 対象者に日常的に治療を行うことを強く推奨します。治療が重要な健康アウトカムを改善することを示す十分な証拠があり、有益性が有害性を大幅に上回ると結論づけています。)]としています。

 最後に、本邦の脳卒中治療ガイドラインでは、軽度から中等度の上肢麻痺に対しては、麻痺側上司を強制使用させる訓練など特定の動作の反復を含む訓練を行うよう勧められる(推奨度A [行うよう勧められる、行うべきである]、エビデンスレベル高[良質な複数RCTによる一貫したエビデンス、もしくは観察研究などによる圧倒的なエビデンスがある。今後の研究により評価が変わることはまずない])とされています。


参照文献

1. Corbetta, Davide, et al. "Constraint‐induced movement therapy for upper extremities in people with stroke." Cochrane Database of Systematic Reviews 10 (2015).

2. Winstein, Carolee J., et al. "Guidelines for adult stroke rehabilitation and recovery: a guideline for healthcare professionals from the American Heart Association/American Stroke Association." Stroke 47.6 (2016): e98-e169.

3. Gladstone, David J., et al. "Canadian stroke best practice recommendations: secondary prevention of stroke update 2020." Canadian Journal of Neurological Sciences 49.3 (2022): 315-337.

4. 松野悟之. "脳卒中治療ガイドライン 2021 におけるリハビリテーション領域の動向." 理学療法科学 37.1 (2022): 129-141.

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