Constraint-induced movement therapy(CI療法)における2つの課題指向型練習(2)〜Task practice〜
<本コラムの目標>
1. CI療法におけるTask practiceの概念を知る
2.Task practiceの効能を知る
3.Task practiceにおける課題の実施方法を知る
1. Task practiceって何?
Shapingは麻痺の改善をはじめとした機能回復に焦点を当てており、関節運動に焦点化するようなことはなく活動レベルのパフォーマンスの改善を目的としたアプローチです。さらに、課題を実施した際の自己効力感の育成を通した、行動変容に焦点を当てた課題指向型アプローチです。機能を改善するという目的以上に,環境調整や自助具の使用なども含め,麻痺手で目標とした作業課題の遂行が可能になることを目的としている.ですから、使用する課題も、対象者の目標に沿った活動そのもの(食事、整容,趣味活動等)を利用することが多いです。
さて、表1に実際に用いるTask practiceの例を記載します。表1のTask practiceは、料理動作を目標としています。Shapingにより、料理動作に必要な機能的な関節運動レベルの動作を反復練習し、その後、環境調整を整えた上で、料理動作(この課題では特に包丁の操作)を実際に行っていき、パフォーマンスの向上を目標に何度も何度も活動を繰り返し、動作を学習していきます。
また、反復して練習を実施して行くことで、能力の向上が見られた際は,表1に示したように,操作する物品や着る食材、実施する作業環境などを調整し、より実生活に近い、難易度の高い状況で練習を実施していきます。
2. ShapingとTask practiceの効能の違い
前回のコラム(Constraint-induced movement therapy(CI療法)における2つの課題指向型練習(1)〜Shaping〜から解説してきましたが、課題指向型練習の中でもShapingはより機能指向型練習(筋力練習や神経筋促通術のように、機能の改善を目的としたアプローチ方法)に近い特性を持っているが、Task practiceは課題指向型練習そのものといった特徴を持っています。実際に、先行研究でも影響を与えるアウトカムに特徴があると言われています。
Taubら[1]は、CI療法における課題指向型アプローチをShapingのみで実施した群と、Task practiceのみで実施した群で、結果がどのように異なったかを検討しています(図1)。検討結果は、Shapingのみ実施した群は、Task practiceのみを実施した群に比べ、ICFにおいて、身体機能構造(機能的な部分)に含まれる麻痺手のパフォーマンスを測定するWolf Motor Function Testが有意に改善したと報告しています。
ここだけ見ると、Shapingをやった方が、麻痺の改善が進み、麻痺手の能力が上がるといった印象を持つかも知れません。しかしながら、ICFの活動・参加(活動に関する部分)に含まれる実生活における麻痺手の使用行動を測定するMotor Activity Logにおいては,Task practiceのみを実施した群の方が、Shapingのみを実施した群に比べ生活における麻痺手の使用頻度が向上したと報告しています。
これはとても不思議な現象です。例え、手が動くようになっても、練習の種類によって、生活の中で使わない、といったケースが想定されるということを示しています。こういった研究から、対象者の問題点を評価し、Shaping、Task practiceのどちらの分量を多めに設定するか等を鑑みつつ、対象者にアプローチを実施して行くことが求められます。
参照文献
Taub E, et al: Method for Ennhancing Real-world use of more affected arm in chronic stroke: Transfer package of Constraint-induced movement therapy. Stroke 44 (5): 1383-1388, 2013
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