リハビリテーションにおける予後予測の一般的な手続きについて(1)

竹林崇先生のコラム
患者教育
リハデミー編集部
2023.08.09
リハデミー編集部
2023.08.09

<抄録>

 リハビリテーションを実施する上で、様々な技術や知識が必要とされている。一般的に多くの療法士は、麻痺や身体機能、高次脳機能障害に対する知識や治療技術そのものの研鑽に時間をかけることが多い。しかしながら、人の人生に寄り添うリハビリテーションには、それら治療技術以外にも多くのものが必要となる。近年、障害に対する知識や治療技術のほかに必要な知識の一つとして、予後予測もリハビリテーションを円滑に履行する上で、必要な技術と考えられている。前回のコラムである『リハビリテーションにおける予後予測が必要な理由について』において、予後予測はより良いリハビリテーションアプローチを対象者に提供するものであると述べた。こういった背景から、予後予測は一度ではなく、複数回に渡り実施し、その都度リハビリテーションアプローチを修正し、より良い予後を対象者に提供することが必要となる。これらについて3回に渡り解説を行っていく。第一回は、予後予測を進めるための具体的な手順について、対象者の目標・ニーズの確認、目標・ニーズに適合したアウトカムを取得、アウトカムを利用して複数の予後予測法を実施・予後の幅を確認、までを解説を行っていく。

1. リハビリテーションにおける具体的な予後予測の進め方

 前回のコラムである『リハビリテーションにおける予後予測が必要な理由について』において、予後予測はより良いリハビリテーションアプローチを対象者に提供するものであると述べた。未来予知的に予後予測を実施するとするならば、対象者を担当した冒頭に1度ないし,中間に1度程度実施すれば良い。しかしながら、上記にもあるように、眼前の対象者のためにより良いリハビリテーションを提供する目的で、予後予測を実施する場合、1度や2度で終わることなく,継続的に実施する中で、リハビリテーションアプローチを修正する必要がある。こう言った観点から実際にどのように予後予測に取り組むかについて、簡単に紹介を行う。

2. 予後予測の実際の手続き

1)対象者の目標・ニーズを確認する:予後予測を行う際、医療者の興味は生命予後や疾患の重症度、身体機能といった機能的なものに偏る印象がある。しかしながら、対象者により良いリハビリテーションを提供するためには、対象者の目標やニーズに関する予後を予測し,そこから得た情報を活かすことが求められる。したがって、まずは目標やニーズの聴取から確実に実施することが必要である。


2)目標・ニーズに適合したアウトカムを取得:過去の予後予測研究では、概ね、ゴールドスタンダードのアウトカムを利用し、その領域におけるアウトカムの経過を示している。つまり、同じ尺度(定規)を使って、眼前の対象者の方が、過去の研究においては、どのような経過を辿っているのかを比べる必要がある。したがって、目標・ニーズに適合し、かつ先行研究でよく使われているアウトカムの取得を行い、比較することが重要となる。


3)アウトカムを利用して複数の予後予測法を実施・予後の幅を確認:予後予測を実施する際、複数の予後予測法を並行して実施することは非常に重要である。その理由としては、100%的中する予後予測法は現状存在せず、識者からどれだけ評価の高い予後予測法であったとしても、長所と短所を持ち合わせているものである。つまり、1つの予後予測法を使った際、その予後予測法が持つ短所に眼前の対象者が偶然含まれていた場合、どれだけ評価が高く、予測確率が高い予後予測法であっても、正確な予後を導き出せる可能性は皆無である。したがって、複数の予後予測法を併用することで、予後予測の幅(様々な予後予測法を用いた際の上限と下限の幅)を理解し、それらで示された予測値を標準的な予後と位置付け、アプローチを実施することが必要である。

まとめ

 本コラムにおいては、予後予測の具体的手続きである対象者の目標・ニーズの確認、目標・ニーズに適合したアウトカムを取得、アウトカムを利用して複数の予後予測法を実施・予後の幅を確認、について解説を行った。次回はこの後の手続きについて、解説を行う。

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