エビデンスベースドプラクティスにおける収集した情報に関する批判的吟味

竹林崇先生のコラム
患者教育, その他
リハデミー編集部
2024.05.06
リハデミー編集部
2024.05.06

<本コラムの目標>

・エビデンスベースドプラクティスにおけるSTEP3となる批判的吟味を理解する

・批判的吟味に役立つツール等を理解し、使ってみる

1. エビデンスベースドプラクティスにおける批判的吟味の意味

 エビデンスベースドプラクティスを実施していく上で、表1に示すようにSTEP1, 2を通して、臨床疑問を投げかけ、それらを解決するためのエビデンスを検索していきます。

 しかしながら、第4回『エビデンスベースドプラクティスに臨床で取り組むための具体的な方法:STEP2において、どこから情報を取ってくれば良いか?』で示した、研究デザインによる正確性の評価だけでは不十分であり、このフィルターを通すだけでは、多くの文献が対象となり、情報過多な状況に陥ります。情報が多いことに越したことはありませんが、とにかく不正確な情報が多く集まると、結果が一定せず、臨床の問題を解決するための方法を選択するのがとても難しくなります。

 そこで必要になるのがSTEP 3の『批判的吟味』です。これを行うことで、比較的正確性の高い研究デザインによって導き出された知識をさらに厳選していく作業を行なっていきます。これを行うことにより、情報過多を解消する、科学的欠陥のある文献を削除することができ、臨床疑問を解決するために最適な情報を厳選することができます。

2. 批判的吟味に用いるツールについて

 批判的吟味に役立つツールやチェックリストはたくさん公表されています。しかも、その多くは無料で公開されているものが多いです。臨床疑問の種別(治療法、病院、診断等、多岐にわたります)によって、使用、または求める研究デザインの種類(ランダム化比較試験、コホート試験、等)が決定するのと同じように、その種別に応じて、批判的吟味におけるプロセスも異なることを注意してください。全ての臨床疑問の種別に対して、同じ方法を用いると、正確な吟味を妨げることがあります。いかにいくつかのツールを紹介していきます。


①Critical Appraisal Skills Programme(CASP)

 CASPは研究を批判的吟味するためのツールであり、8つチェックリストで構成されています。8つとは、CASP Systematic review Checklist、CASP Randomised Controlled Trial Checklist, CASP Diagnostic Checklist, CASP Economic Evaluation Checklist, CASP Qualitative Checklist, CASP Case Control Checklist, CASP Cohort Study Checklist, CASP Clinical Prediction Rule Checklist,から構成されている.これらは、究のデザインによって使用するチェックリストが異なっている点に注意してください。

https://casp-uk.net/


②Critical appraisal tools pathway

 スコットランド国民保険サービスが提供する、必要な支援や治療、そして、検索対象とする研究デザインに応じて、ツールの選択ができるWebサイトです。

http://www.ckp.scot.nhs.uk/Published/PathwayViewer.aspx?fileId=1560


③Critical Appraisal Tool

 さまざまな種類の医学的証拠(システマティックレビュー、診断研究、予後研究、無作為化比較試験)を批判的に評価するためのツールやワークシートが含まれています。Centre for Evidence-Based Medicineにより提供されています。

https://www.cebm.ox.ac.uk/resources/ebm-tools/critical-appraisal-tools


 収集した多くの情報について、これらのツールを利用し、その結果の正確性について、批判的な吟味を行なっていきます。その上で、自身が抱えている臨床疑問を解決する『比較的正確性の高い情報』を吟味し、実現可能性を考えながら、眼前の対象者の方に適応していくことが重要だと考えられています。

 EBPについては、このSTEP2とSTEP3でうまく情報を収集し、取捨選択ができるようになると、運用の質が飛躍的に向上すると筆者自身も考えています。


参照文献

Straus, S. E., Glasziou, P., Richardson, W. S., & Haynes, R. B. (2011). Evidence-Based Medicine: How to practice and teach it (4th ed.). Edinburgh: Churchill Livingstone/Elsevier.

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