意思決定の中に行動療法を取り入れて欲しい-後編-

意思決定の中に行動療法を取り入れて欲しい-後編-
リハデミー編集部
2019.03.05
リハデミー編集部
2019.03.05

学生たちに情報を比較して選択してほしい

藤本:最後にお聞きしたいのが、私が知っている限り初めてだと思うのですが、講習会をたくさんされているのにプラスしてSNSを用いてインスタや寺岡先生のされている

竹林:ライスタですか?

藤本:SNSを用いたりツイッターで発信したりしている先生は他にはいらっしゃらないですよね?今の所。

竹林:うちの京極さんもしていますけれども。

藤本:noteで資料ですね。今日は講習会事業ですけれども、講習会事業の競合にもなってくると思っているのですが。

竹林:はい。

藤本:色々な層の人がいて、講習会にいることで満足してしまう受講生の方がすごく多いと思っています。そういった方が講習会にきても結局学ばないで、医療者の行動変容にもならないと思っています。

SNSを通じて、まずは流れてくる情報を受け取ることをしっかり行ったうえで講習会に行くと相乗効果になるのかなと思うんです。そうすると、おそらく競合というより、入門と応用編とで、住み分けができてくると感じています。

今後、座学は基本的にはSNSの形でも良くなってくると思います。より実践的な、たとえば患者さんをここに連れてきて、デモをするとかに繋げられるとすごくいいなと思います。SNSを始めたきっかけはありますか?

竹林:始めたきっかけは、寺岡さんと京極さんがやる!って、テンションが上がっていたので。僕は台湾にいるときに見たんですが、可能性を感じました。少し年配のおじさんからいろいろ聞かれることが多いのですが、Facebookで発信をしていたのでそのような対象になったのだろうなと思っています。

僕たちがこれから変えていかないといけない部分は、中堅どころを変えることももちろんですけれども、学生たちをどう変えていくかを考える必要があると思って、学生の話を聞いたら、twitterですよ!という話がでてきたんですよね。しかも単発だと認知負荷が高くないので、情報をたくさん投げていくことで、学生たちにこういう世界があるんだということを見てもらいたかったんです。あとは手前味噌ですけれども、吉備国際大学は、そこそこよい教育をしていると思うんです。

藤本:思います。京極先生を始めとして。

竹林:僕らがやっている教育を他大学の学生に見てもらいたかったんですよね。自分たちの学校と比較して情報を選択してもらうというか。自分の行っている大学の世界観しか学生にはなくて、その大学の世界観が作業療法の世界観になってしまうわけですよね。色々なモデルが存在する作業療法では、非常にリスクになるわけです。リスクヘッジではないですけれども、新人系の人がいて、どんな講義をしているのか、大学でも講義をしているんだということを、色々な大学の学生に触れてもらったら、その学生たちが卒業して一般職についたときに、影響力があるだろうなと思いました。

藤本:受講の大学で教員の競争がなくて教員の質が落ちてしまった場合に、SNSを使って情報が他から得られたら、「授業に出る意味はあるんですか」と聞けると思うんですよ。 

竹林:それでクレームがきたら困りますけどね。

藤本:困りますね。でも他大学の授業を見る機会はほぼないですよね。世界展開までできたら、世界の情報ももっと入ってきやすくなりますし、先駆けとしてよいことだなと思います。

竹林:もう少し資源が確保できてきたら、言語の問題を解決して、中国とか韓国とかアジア圏に展開していけるとかなりいいのではと思っています。

藤本:アジア圏はしたほうがいいですよね。変な知恵ばっかりですので。

竹林:ああいうシステムを使って広げてくとキャッチアップできる人も増えるので、キャッチアップできる人を各地域に作って、その子達がリアルの講習会を開いてくれたらいいと思うんですよね。

藤本:そうですね。

竹林:僕自身もリアルでやるときは、時間内だったら無条件に患者さんの相談にも乗れるのですが、SNSは個人情報の問題があるので症例検討を投げられてもごめんなさいと言います。SNSは議論やワークショップで思考を伝えることができるので、役割が全く違うと思っています。目的別にSNSを広げていきたいなとは思っています。

藤本:インスタで共同研究者を求めたら大規模の研究ができるのではないですか?

竹林:コホートとかだったらよいと思うんですけれど、介入研究になるとどうでしょうか。

藤本:差がでますかね?

竹林:インターベーションの部分でばらつきがでるのであんまり良い手段ではないですけれども、同じようなことですよね。ライスタではないですが、他施設で色々なところにつながりがある中で、フィーゲルメイヤーのテスト理論など、共分散構造分析などを行うときに莫大な調査対象の数が必要となりますよね。そういった研究を行うときにネットワークはすごく使いやすいと思います。

藤本:今、レセプトでリハビリテーションは、リハビリをしたか、していないか、しか出ないので、定性的なデータをとっていく必要があると思うんですよね。定量的なデータももちろんですけれども、変な話、SNSを活用したデータベースを作れるのではと思っていまして。是非やってみてください。

竹林:今回もGoogleでアンケートを作って、向こうで打ち込んでもらってこっちで集計するという形をとっているので。

藤本:いいですね。

竹林:ですので、特に観察研究で横断のものに関しては、かなり使えるフレームワークだろうなとは思います。

藤本:一応いつも質問を聞いているんですが、何かありますでしょうか?

竹林:ちょっといつもと違う話題展開になっているかもしれないですね。CI療法を売っている割には、この手技はどうですか?みたいな話を基本的にあまりしないので、すみません。

受講生:手技のところで目の前の利用者さんがよくなればオッケーというのがリハビリは多いという話がでたのですが、少しずれてしまうかもしれないんですけれども。

前々から思っていたのが、自分の手技、例えば、ボバースやPNF、CI、川平法でもなんでもいいのですが、病院を出ている先輩や上司が自分の手技以外の手技をすると悪い顔をするとか、無理やり自分の手技に従わせるとか、講習会にでると他の手技の悪口を言う人が多いなど、自分と違うやり方に対して寛容じゃないな、全然認めないな、と感じています。

どうしてこんなに不寛容なのか、プライドがあるのか?と思うのですが。

それは昔からなのか、つい最近なのか、ずっと気になっていたので教えてください。

藤本:人格じゃないですか?

竹林:人の問題というのはやはりあるとは思うんですが、リハビリテーションの派生の仕方が、どちらかというと、作業療法は指揮者が集まってこういう定義でやりましょうという形でスタートラインをきって作っているんですよ。でも理学療法の人は腕自慢なんですね。「俺、何千人みた」って同時期に世界で多数でてきているんです。

結局、みた人数や称賛される人数が派生のモデルのアウトカムになっているというのがベースにあるのではないかなと基本的には思います。

あとは経験年数が長くなると手技自体が自分と同化してしまうというか、手技がけなされると自分がけなされているように感じて、怒る人はすごく多いと思います。それでもちゃんとクリアカットに分けている人がいるので、まあ人格というのはある意味正しいかとは思うのですが。

ただ、手技の母体がバックグラウンドにあるので、どうしてもそういった状況になりやすいのではと思います。以前に比べたら少しはよくなってきている気はします。僕は、アウトカムはそういう所をメインにパワーがあると思っています。ただ得体が知れないんですよね。何がどうできるのかをアウトカムでしっかり整理されていないですし。僕自身はやっていないから、批判も肯定もしないというスタンスです。でもパワーはあるのだろうなと思います。そのパワーを早く示してくださいねと色々な先生に言い始めてから15年経ってもまだ全然変わらないので、否定することは簡単でも変えることは難しいかなと思います。僕にとっては、否定するのは難しいことです。僕がよく知っているCIの否定的な部分はいくらでも言えますが、他の主義はしていないので否定も肯定もできないというのがスタンスです。ですからそういうスタンスでいてもらえるといいのかなと思います。

藤本:研究をしている人はあまり否定しないんですよ。否定をするってすごく難しくて、効果がないということがすごく難しいんですよね。でも、効果があるといった因果関係もすごく難しいので、この両極端にはふれないです。これくらいの確率でどうだとか、症例報告レベルでしか証拠がないのであれば確率的にはこうだよね、という言い方になる訳です。研究は人格形成ができるんですよね。 

竹林:自分の立てたデータを否定されるので、自分が自分を否定しているようなものですよね。

ですからグーの音も出ないです。変えなければいけないなというのは思います。

藤本:研究が大事と言っているとなおさらですよね。その研究で出てきたデータを自分で否定している自分の考えを否定していたらそうじゃないって言えないですよね。

竹林:でもその分、それを受け入れていくので、ニュートラルなスタンスなんですよ。武闘派の人は勢いで来ますけれども、僕違うのでというのもよくありますけどね。

藤本:どこの業界でも内部の人を否定することはあります。肝臓関連の外科はガイドラインがいくつかあって同じオペと推奨度で違うんです。流派が違うとかもあるので。

竹林:日本はその気が強いですよね。

藤本:日本は特にガイドラインの数が非常に多いんですよ。実は海外に比べると質は置いておくとして、ガイドラインの作成数はすごく進んでいるんですね。流派の戦いですよね。 

竹林:主観が入りますよね。

藤本:入りますね。そういったところも含めて受け手もしっかりと自分たちで情報を見られないといけないですよね。情報をしっかり見られれば、おそらく否定や肯定スキルはそんなに出てこないかなと思います。

受講生:ボバース、PNFは、熟練者と初心者でスキルがすごく違いすぎて、例えば、大規模研究でも、ボバースで10ヶ月たったらこういう結果になったというのは熟練者か初心者かによっても変わるのかなと思うのですが。

藤本:それはそうだと思いますよ。熟練者の定義ができたほうがいいですけどね。 熟練者と思っている人が実は熟練していない可能性もありますよね。自分は、主義はまだ学んでないのですけれども、課題思考型訓練が一時期流行ったときに、熟練者に課題思考の定義とそれに必要なエッセンスはなんですかと聞いたら答えられないんですよね。

受講生:それだとちょっと熟練者ではないですよね。

藤本:でも、みんなは熟練者というわけですよ。やっていることが熟練っぽいから。思考がなくてもやっていることが熟練されていたら熟練者なのかというところなのですが、そういう意味でCI療法はわかりやすいですよね。

竹林:そうですね。

藤本:そもそもそういったコンポーネントってないですものね。

竹林:CIは介入試験をするときに絶対条件なのが一般病院を取るんです。要は今までCI療法のバックグラウンドがない病院に一から同じ教育をするんですね。ここで統制をつくるんです。それでRCTで無作為型資格試験とか介入試験を行っていくので、要は上手にする人に比べるとよくない結果しか出ないですよ。療法士に対して統制のかけかたをしたらこの結果が出ますよ、という所までスタディの業務内容になってくるんですね。ですから、シニアセラピストがどうこうとかいう話ではなくて、こういう手続きで実験の統制をくんでこれをやったら従来法よりもこのぐらい良かったですよという結果までが1セットなんです。そもそもCI療法の実証の仕方というのが公衆衛生や疫学の考え方にのっとっているので、そういう観点から行くと、そのメソドロギーそのものもどのようにしたらこういう結果が出るというところまで紐づけなんです。だからそもそもそういった議論がでてこない。もっと上手い人がやったら、もっといい結果なんだろうなというのは思いますけれども。一般化された情報をだしていくのが疫学の世界の常識なので。

だからRCTやりました!といって、手技の先生がされて驚きだったのが、介入者は神と呼ばれるような人で、評価者がその部下。ブラインドをかけていますと言って、かかるわけないじゃないかと。その先生が触っていたら良いって言うでしょう。介入試験で手を出さずに、そこはちゃんと書いてこの結果を市場が判断してください、というのが疫学です。そういう話にもあまりならないところが、CI療法の良いところだと思います。

藤本:認定インストラクターってあるじゃないですか。認定インストラクターの方が色々な治療を行うところを見ればいいのではないでしょうか? インストラクターと呼ばれている人と、呼ばれていない人の効果の違いなどでもよいので、一つでもアウトカムをとってみるといいのではと思います。

質問者:インストラクターだとこれぐらいの効果がでて、インストラクターではない人だとこれくらいの効果なのかということですよね。

藤本:多分個人的には反対になると思っているのですけれども。

質問者:インストラクターではない方が。

藤本:ほんとに面白いですけど、癌のリハビリテーション業界があるんですが、癌リハ料は、厚労省が研修を指定して、がんの研修をチームで受けたところが、リハビリテーション資格を取ることができるんですね。私はそういうレセプトデータを分析しているんです。癌リハ料を取っているところは研修をうけているチームなので、ある程度優秀であるはずだと思いますよね。ですが、癌リハチームの方が術後の合併症を増やしていたんです。癌の重症度や年齢などを全部調整しても。ということは、癌リハの研修を受けている人達は、受けているだけで技術がないということですよね。

質問者:癌リハを受けても受けても、受けた方が効果が悪いということですか?

藤本:そうです。癌リハ料を算定している病院の方が、効果が悪かったんです。術後合併症を起こしている。

質問者:ということは健康保険を無駄に取っているということですか?

藤本:そういうことです。でもそれは、仕方がないんですよ。システムの都合上、法律があって検証になるので。そのように考えると、何かの資格があっても、それが絶対良いとは限らないなと思います。トップはみなさん凄いんです。先頭を切ってきた方ですので本当に凄いんですよ。前回、インタビューをした時にもおっしゃっていましたが、伊藤先生がボバース協会の会長を退任されましたが、亜型のボバースの方がいらっしゃって、そういったところまで検証するのは難しい。

竹林:そうですよね。亜ボバってよく言いますけどね。

質問者:亜型のボバースですか?

竹林:自分たちの修飾が入ってしまう第二世代、第三世代の人が、強く言い張られています

質問者:本場のボバースと、亜細亜のボバースということですか。

竹林:亜細亜の亜ではなくて。自分なりに修飾を加えていて、オリジナルとはちょっと違うのを亜型っていうんです。ですから、アジアということではなくて、亜型のボバースって呼ばれています。

藤本:亜型のなかでも、伊藤先生のようなスペシャリストの人と、自分のことをボバースセラピストと呼んでいる人のことですね。検証してみると面白いと思いますけどね。

竹林:でも嫌われますよ。

藤本:嫌われますけど。あとは大丈夫ですかね。では、時間になりましたので、本日はありがとうございした。

竹林:ありがとうございました。

前の記事

選択バイアス

次の記事

意思決定の中に行動療...

Top