3Dプリンタで作る作業療法の新しい可能性(3) -片手で使えるプロダクト(自助具)について-

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2022.11.25
リハデミー編集部
2022.11.25

<抄録>

 作業療法において,歴史的に対象者の意味のある作業を達成するために,環境調整によるアプローチは主柱の一つと考えられている.自助具とは,一時的あるいは永久的に、身体に障がいをおった方が,その失われた機能を補って,様々な活動を可能にするよう考え,工夫がなされた道具のことを指す.また,昨今では3Dプリンタを用いた自助具の作成に注目が集まっている.本コラムにおいては,Social Network Service(SNS)上で話題になっている自助具について,3回に渡り紹介を行っている.第2, 3回は,作業療法士が片手で使えるようにデザインした3Dプリンタを用いた自助具の紹介を個別に実施する.

1. 片手で使用できる3Dプリンタを用いた自助具の紹介

①片手で袖ボタン着脱キット

 作業療法ではリウマチ等により手指の巧緻性に問題を抱える対象者の方を対象にボタンエイドと言った自助具を伝統的に使用している.この自助具は,ボタンの開閉をはじめとした微細な物品の扱いがなんらかの理由により困難な対象者を想定して作成された道具である.しかしながら,巧緻性に対する工夫は凝らされていたものの,その使用はボタンエイドを操作する上肢,衣服を固定する上肢,と言ったように両上肢を使用しなければならなかった.したがって,脳卒中後上肢運動障害を有する対象者の非運動障害側の手首付近のボタンの操作には利用できなかった.そこで,3Dプリンタを利用し,このボタンエイドを固定できるよう工夫した道具が『片手で袖ボタン着脱キット』である.この道具を利用することにより,片側の上肢が運動障害等で利用できない対象者も,袖口のボタンの着脱が可能となる.


②片手で納豆かき混ぜキット

 多くの対象者が,食べたいものを食べたい時に自分でセッティングして食したいものである.なんらかの理由で,上肢に運動障害を有した対象者の中には,この自由が阻害されることにより,『こんなこともできなくなってしまった』と無力感に苛まれる対象者が少なからず存在する.したがって,作業療法においては,対象者の嗜好品を独力で食せるような援助を求められることは多い.この『片手で納豆かき混ぜキット』はそう言った食の不自由を解決するための道具の一つである.この道具は,文字通り納豆を食べるための補助具である.

納豆は,個別性が高い食べ物であり,好みの味に仕立てるために,個々によってこだわりが全く異なる.特に,かき混ぜる回数や強度については,こだわりを持つ対象者も多く,この動作が独力でできないことに,大きな失望を抱える対象者も多い.この自助具は,納豆パックの形状に合わせ,強力に固定することにより,片手で納豆のかき混ぜを可能にした道具である.対象とする動作は非常にニッチであるが,対象者の趣味嗜好を叶えるという点では,作業療法において非常に優れた道具の一つと考えることができる.

まとめ

 まず第三回は,片手でかき混ぜることができる納豆ホルダーと,袖口のボタンを片手で開閉することができるボタンエイドについて紹介した.片手で扱える自助具の特徴としては,適切な固定を実現できる道具であることが条件の一つである.こう言ったコンセプトで対象者にとって大切な作業を実現するための道具が多く開発されることが望まれる.また,こちらの商品は以下のShopにて購入することができるので,興味のある方は利用されたい.


参照文献

Nico

URL: https://isotope.thebase.in

前の記事

脳卒中後に生じる上肢...

次の記事

ランダム化比較試験に...

Top