Brain Machine (Computer) Interfaceに関するエビデンスについて

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2025.07.21
リハデミー編集部
2025.07.21

<このコラムで学べること>

・Brain Machine Interfaceのシステマティックレビュー、メタアナリシスの結果について知っておく

・Brain Machine Interfaceのガイドラインにおける位置付けを知っておく

1. Brain Machine Interface(BMI)のシステマティックレビュー、メタアナリシスの結果について

 システマティックレビューとメタアナリシスでは、Brain-Machine Interface (BMI)を用いたリハビリテーションが、脳卒中後の上肢機能回復において有意な効果を示していることが報告されています。特に、複数のランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスでは、BMIトレーニングがFugl-Meyerアセスメントスコア(FMA-UE)での改善において、従来のリハビリ手法と比較して優れた結果を示していることが確認されています。

 Cerveraら(2020年)のメタアナリシスによると、BMIによる介入はFMA-UEの標準化平均差(SMD)で0.79という高い効果量を示しており、この結果は他の一般的なリハビリ手法と同等の効果を持つことを示しています。また、同研究では、BMIを用いた研究が対照群に比べ、臨床上意味のある最小変化量を超える変化を示す確率が高いことも示しています。また、BMIが神経可塑性を促進するメカニズムの一部として、神経回路の再編成を通じて脳機能の改善をもたらす可能性が高いと結論付けられました

 さらに、Baiら(2020年)は、BMIを用いたリハビリテーションの即時的および長期的な効果を評価し、介入後6か月にわたって持続的な運動機能の改善が見られると報告しています。この研究では、BMIトレーニングの種類(運動イメージまたは実際の運動試行を用いたトレーニング)や、外部デバイス(ロボット、機能的電気刺激など)の組み合わせが、結果に影響を与える要因として考慮されています。特に、機能的電気刺激を用いることは、他の装置を併用するよりもより高い効果を示す可能性が示唆されています。また、それらの外部デバイスによるフィードバックがBMIトレーニングの効果を高める可能性が示唆されています

 BMIトレーニングのメカニズムについては、Hebbの法則における可塑性が重要な役割を果たしているとされており、これはシナプス前後の活動が同期して発生することでシナプス強度が増強されるというものです。脳卒中後の患者においては、運動意図を電気刺激やロボットを通じて外部デバイスで再現することにより、新たな感覚運動ループを形成することが可能となります。

 今後の課題として、メタアナリシスに含まれる研究間で介入内容や評価方法にばらつきがある点が挙げられます。このばらつきを減らすためには、統一された研究プロトコルの開発が必要です。患者個別の状態に応じたパーソナライズドリハビリテーションの実施も効果を最大化するために重要です。加えて、何よりもまだまだ論文数が少なく、効果は示してはいるものの、その信頼性は確固たるものではありません。今後、より多くのランダム化比較試験等の追加研究が望まれています。

2. ガイドラインにおけるBMIの位置付け

 VA/DoD Clinical Practice guideline for management of stroke rehabilitation(2024年)のガイドラインでは、非侵襲的BMIは、頭皮に装着したEEGを用いて脳信号を記録するため、脳への外科的介入を必要とせず、比較的安全であると述べています。しかし、このガイドラインでは、上肢運動機能と日常生活動作の改善における非侵襲的BCIの有効性について、推奨または非推奨を決定するのに十分なエビデンスがないと結論付けています。これは、BCIが比較的新しい技術であり、大規模なランダム化比較試験が限られているためと考えられます。

 また、現在、示されているカナダの脳卒中治療ガイドラインにおいては、Brain Machine Interfaceに関する記載はないものの、その介入と同じ振る舞いとメカニズムに相当するミラーセラピーについは、急性期および慢性期においてもエビデンスのレベルはAとされており、推奨されている。

 最後に、本法における脳卒中治療ガイドライン(2021年)においては、推奨等はなされていないものの解説において「脳は所見などに基づいてフィードバックを行うBrain-machine interface(BMI)を用いた訓練の有用性も報告されている」と一文の記載があり、今後の発展の可能性がある手法の一つとして、期待が寄せられている。


参照文献

1. Cervera, M. A., et al. "Brain-computer interfaces for post-stroke motor rehabilitation: A meta-analysis." Annals of Physical and Rehabilitation Medicine, 58, 3-8, 2015. doi: 10.1016/j.rehab.2014.09.016.

2. Bai, Z., et al. "Immediate and long-term effects of BCI-based rehabilitation of the upper extremity after stroke: a systematic review and meta-analysis." Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation, 2020, 17, 57. doi: 10.1186/s12984-020-00706-7.

3. Management of Stroke Rehabilitation Working Group. "VA/DOD Clinical practice guideline for the management of stroke rehabilitation." https://www.healthquality.va.gov/guidelines/Rehab/stroke/VADOD-2024-Stroke-Rehab-CPG-Full-CPG_final_508.pdf (2024年10月10日現在)

4. Canadian Stroke Best Practices. "Stroke Rehabilitation Recommendations." Heart and Stroke Foundation of Canada, 2020. Available at: https://www.strokebestpractices.ca/recommendations/stroke-rehabilitation. (2024年10月10日現在)

5. 一般社団法人日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会編集.脳卒中治療ガイドライン2021.協和企画,2021

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