テクノロジーの発展によるミラーセラピーの今後

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2024.09.09
リハデミー編集部
2024.09.09

<本コラムの目的>

1. ミラーセラピーを取り巻くテクノロジーの進歩を知る

1. ミラーセラピーを取り巻くテクノロジーの進化

 前回のコラムではミラーセラピーの応用的な利用方法として、電気刺激療法との併用について取り上げました(URL: ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■)。それら以外にも、ミラーセラピーの効果を向上させるためのテクノロジーの利用は進んでいます。

 ミラーセラピーは、鏡に映っている自身の非麻痺手を、鏡の向こう側にある麻痺手があたかも動いているような『錯覚』に没入することで、その真価が発揮されます。したがって、その錯覚に没入できなければ、その効果は限定的であることが考えられます。例えば、ミラーセラピーに関する多くの研究においては、研究の対象者を決定する際に、質問用紙を用いて、錯覚に没入し易い対象者を選定している研究が多いです。

 つまり、これらの手続きは、「麻痺手が動いている」といった錯覚により没入できる環境を設定することが、ミラーセラピーの効果に影響を及ぼす可能性があるということを示しています。では、それらに対して、どのようなテクノロジーが現在用いられているのでしょうか。

 本邦においては、視覚誘導性の自己運動に関する錯覚を利用した脳卒中後の上肢運動障害に対するリハビリテーションプログラムの一つに、KiNesthetic Illusion induced by visual stimulation(Kinbis)が開発され、運用されています[1]。この機器を用いたプログラムは、他者の手の運動、もしくは自身非麻痺手の動きを映像で取得し、それを反転させた映像を、対象者の麻痺手上に設置し、周囲からの刺激を極力軽減させた空間内でその映像を見つつ、麻痺手の運動をイメージすることで、より運動錯覚に没入させることを目指したものです(非麻痺手の動きもモニターで取得し、麻痺手上に設置した映像と同様の情報取得条件で練習を進めていきます)(図1, 2)。

 この機器を用いた臨床研究も実施されており、Kinbisを用いたプログラムの前後で比較し、脳卒中後の上肢麻痺の程度を示すFugl-Meyer Assessment(FMA)の上肢項目の合計得点とFMAの肩・肘・前腕の項目、手関節と手指の痙縮を示すModified Ashworth Scale(MAS)、上肢のパフォーマスを測定するAction Research Arm Test(ARAT)、上肢の実生活における使用行動を測定するMotor Activity Log(MAL)に関して、有意な向上がみられたと報告しています。KiNvisに関する研究は、小規模かつランダム化比較試験等が実施されていませんが、今後の検証によっては、ミラーセラピーの効果を向上させるより良い手法となる可能性が考えられます。


参照文献

1. Kaneko F, et al: A Case Series Clinical Trial of a Novel Approach Using Augmented Reality That Inspires Self-body Cognition in Patients With Stroke: Effects on Motor Function and Resting-State Brain Functional Connectivity. Frontiers in Systems Neuroscience 2019

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