短縮版Fugl-Meyer Assessment(FMA)の上肢項目について
<本コラムで学べること>
・短縮版Fugl-Meyer Assessment(FMA)の上肢項目の項目を知る
・短縮版FMAの上肢項目の妥当性、信頼性について知る
1. 短縮版FMAの上肢項目について
Fugl-Meyer Assessment(FMA)はその包括的な評価内容により、時間を要することから、患者の負担軽減や評価効率の向上が求められています。この課題に対応するために、FMA短縮版がHsuehら[1]によって開発されました。FMA 短縮版は、FMAの主要な評価項目のうち特にリハビリテーションにおいて重要なものを抽出し、評価内容を簡略化することで、実施時間の短縮を図っています。この短縮版は特に上肢機能の評価において効果的であり、臨床現場でより迅速に患者の状態を把握するために利用されています。
FMA 短縮版では、上肢や下肢の運動項目の中から、患者の機能回復や日常生活動作(ADL)に大きな影響を与える要素を選び抜いており、評価時間を10〜20分程度に短縮することが可能です。この簡便さにより、FMA短縮版Aはリハビリテーションの経過観察や、頻繁な評価が必要な状況において特に有用であり、定期的なフォローアップや患者の小さな回復を確認するために役立ちます。また、評価時間が短縮されることで、患者の体力や集中力に影響を与えず、短期間での変化を効率的に把握できるため、特に多忙な臨床現場での使用に適しています。
FMA短縮版は、脳卒中後の患者の上肢運動機能を迅速に評価するために開発されたもので、オリジナルのFMAよりも短縮され、6つの項目のみで構成されています(表)。これにより、評価時間が短縮され、特に耐久力の低い患者にも使用しやすくなっています。以下に、ショートバージョンのFMAが採用している6つの項目を説明し、各項目の評価内容を簡潔に示します。
これらの項目は、患者の上肢の基本的な動作能力を評価するために選ばれており、主に肩や肘、手首、親指の基本的な動作をカバーしています。この6項目を使用することで、従来の33項目に比べて評価時間を大幅に短縮し、評価の簡便性が向上しています。
2. FMA短縮版の信頼性[2]
総合点の評価者間の一致度を示す指標として、級内相関係数(ICC)が用いられています。ショートバージョンFMAの総合スコアのICCは0.994(95%信頼区間:0.988〜0.997)であり、非常に高い信頼性が確認されています。この値は、異なる評価者が同じ患者を評価してもほぼ同一のスコアが得られることを示し、臨床現場での使用において有用です。
各項目ごとに評価者間の一致率を確認するために、重み付きカッパ係数が計算されています。各項目のカッパ係数はすべて0.80以上であり、特に「肘の伸展」や「肩の90°から180°の挙上」などで1.00という完全な一致が得られています。これにより、個別の動作評価においても評価者間で一貫した結果が得られることが示されています。
3. FMA短縮版の妥当性[2]
FMA短縮版は、他の運動関連の評価指標と強い相関を示しています。たとえば、従来の33項目版FMAとは相関係数0.97、Action Research Arm Test (ARAT) とは0.94、Box-and-Block Test (BBT) とは0.92、Motor Activity Log (MAL)(使用量・動作の質)とは0.91と、それぞれ非常に高い相関が確認されています。これにより、FMA短縮版が運動機能の評価において他の指標と同等の精度を持っていることが示されています。
FMA短縮版は、感覚や関節可動域、痛みの評価項目との相関は低く(相関係数は0.25〜0.50)、運動機能とは異なる領域の指標とは明確に区別されています。これにより、ショートバージョンFMAが特定の運動機能に対して焦点を当てた評価を行うことができると確認されています。
4. FMA短縮版の臨床的意義
FMA短縮版は、従来のFMAと比較して短時間で評価が可能なため、特に日常的な臨床場面での使用が推奨されます。6つの評価項目は上肢の基本的な運動機能を網羅しており、評価者が患者の状態を素早く把握するために有用です。また、1点のスコアの変化は誤差範囲を超えるため、個々の患者におけるわずかな改善や悪化も検出可能です。このように、FMA短縮版は、評価の信頼性と妥当性が高く、上肢機能の迅速な評価を必要とする場面での使用に最適なツールといえます。
参照文献
1. Hsueh, I-Ping, et al. "Psychometric comparisons of 2 versions of the Fugl-Meyer Motor Scale and 2 versions of the Stroke Rehabilitation Assessment of Movement." Neurorehabilitation and neural repair 22.6 (2008): 737-744.
2. Amano, Satoru, et al. "Clinimetric properties of the shortened Fugl-Meyer Assessment for the assessment of arm motor function in hemiparetic patients after stroke." Topics in Stroke Rehabilitation 27.4 (2020): 290-295.
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