ARAT_1

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2026.01.12
リハデミー編集部
2026.01.12

Action Research Arm Test(ARAT)の概要

1. 歴史的背景と開発の経緯

 Action Research Arm Test(ARAT)は、1981年にRonald C. Lyleによって開発された上肢機能評価法です。この評価法は、Carroll(1965年)によるUpper Extremity Function Test(UEFT)を簡略化・改良したもので、脳卒中などによる皮質損傷後の上肢麻痺に対する機能回復を評価する目的で作成されました[1][2]。

従来のUEFTは評価に約1時間を要していましたが、ARATでは手順や採点法が簡素化され、短時間での評価が可能となりました。たとえば、課題がGuttman尺度に従って難易度順に並んでおり、被検者が最も難しい課題を達成すれば、そのサブテストの残りの課題は省略して満点と見なすルールが導入されています。

このような設計により、ARATは把持・握り・つまみ・粗大運動という4つの側面から、全19項目で上肢機能を効率的に評価できるツールとなりました。開発当時の1970~1980年代は、リハビリテーション医学が機能障害の記述から「活動」レベルの評価へとパラダイム転換を迎えていた時期であり、ARATの登場はそうした流れに即したものでした。

 当時は筋力や関節可動域といった身体機能に対する定性的な記述が主流で、信頼性の高い標準的な評価ツールは限られていました。こうした背景の中で、Lyleは上肢の「機能的使用能力」に注目し、量的に測定できるパフォーマンステストとしてARATを提案しました。これは「どれだけ腕を動かせるか」ではなく、「どのように使えるか」に重点を置いた評価法であり、非常に先進的なアプローチでした。

 1981年にARATの初報が発表された後、徐々にイギリス国内外の臨床現場で使用されるようになりましたが、初期には評価手順や採点基準に一貫性がなく、運用にばらつきが見られました。こうした課題に対し、2008年にはアメリカのCramerらによって標準化手順書が整備され、評価の信頼性と再現性が高められました[3]。

 日本においては1990年代から紹介されていたものの、正式な日本語版の標準化が行われたのは比較的遅く、2020年に天野らが初めてその妥当性と信頼性について報告しました[4]。これにより、ARATは急性期から生活期まで、さまざまなリハビリ場面で活用されるようになり、現在では全国の病院や施設で広く使用されています。

2. ARATの構造と概要

 ARATは全部で19項目から構成されており、4つのサブスケール――Grasp(把持)、Grip(握り)、Pinch(つまみ)、Gross Movement(粗大運動)――に分類されます。各サブスケールの課題は、難易度の低いものから高いものへと順に配置されています。

Graspでは大小の木製ブロックを持ち上げる課題、Gripでは筒やボールを握って水を注ぐ課題、Pinchでは小さな球やワッシャーをつまむ課題、Gross Movementでは肩や肘の動きや口元への手の移動などが含まれます。

各課題は4点法で評価され、0点(まったくできない)から3点(正常に遂行できる)までのスコアをつけ、合計点は0~57点となります。Lyleの省略ルールに従い、各サブスケールで最難課題に3点がつけば、それ以外の課題も3点とされ、最易課題が0点の場合は他の課題も省略されて0点となります。

 このルールによって、被検者の能力に応じて評価時間を柔軟に調整することができますが、研究目的では全19項目を通して評価する方法が一般的です。

 評価に必要な器具は専用キットとして市販されており、木製ブロック、ボール、ワッシャーとボルト、コップ、水差し、台などが含まれます。実施時間はおよそ5~15分程度で、特別な資格や訓練を必要とせず実施可能です。ただし、ひじ掛けのない椅子や適切な高さのテーブルなど、標準化された環境を整えることが重要です。


参照文献

1. Carroll, D. (1965). A quantitative test of upper extremity function. Journal of Chronic Diseases, 18(5), 479–491.

2. Lyle, R. C. (1981). A performance test for assessment of upper limb function in physical rehabilitation treatment and research. Int J Rehabil Res, 4(4), 483–492.

3. Yozbatiran, N., et al. (2008). A standardized approach to performing the Action Research Arm Test. Neurorehabil Neural Repair, 22(1), 78–90.

4. Amano, S., et al. (2020). Clinimetric properties of the Action Research Arm Test for the assessment of arm activity in hemiparetic patients after stroke. Topics in Stroke Rehabilitation, 27(2), 127–136.

Top