初心者向けConstraint-induced movement therapyとは?(3)
<抄録>
Constraint-induced movement therapy(CI療法)とは,脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチの一つであり,多くのランダム化比較試験を通して,効果のエビデンスが確立されている手法である.この手法は開発されてから約40年が経過し,世界においては標準リハビリテーションプログラムにおける選択肢の一つと考えられており,多くのガイドラインの中でも推奨されている.しかしながら,本邦においては,学生教育や新人教育の中でも標準的には取り上げられておらず,国家試験における出題も1題飲みに止まっている.本コラムにおいては,6回に渡りCI療法の概要,歴史,エビデンス等について,簡単に紹介することを目的としている.第三回はCI療法のエビデンスについて解説を行う.
1.Constraint-induced movement therapyのエビデンス
CI療法のエビデンス
CI療法は,脳卒中後に生じる上肢麻痺に対するアプローチとしては最も堅牢な効果なエビデンスを有するものの一つである.エビデンスとは,公衆衛生学や疫学の理念のもと,正確な結果を導き出すことができる研究デザインを採用した研究の数とそれらの研究結果の方向性の一律さによって決まる.例えば,正確性の高い結果を導き出すことができる研究デザインといえば,ランダム化比較試験やシステマティックレビューやメタアナリシスが有名である.エビデンスは,これらの正確性の高い研究デザインによって導かれた結果が,総じて効果的であるのか,それとも研究間によって大きな差異や齟齬があるのか,それらを包括的に鑑みることで、それぞれのアプローチの効果や再現性を吟味する必要がある.多くのガイドラインはそれらの吟味を通して,その手法が推奨されるものかどうかをグレードやエビデンスのレベル等によって記載しているのである.
脳卒中後の上肢麻痺に関するガイドラインについてここでは述べる.例えば,本邦の脳卒中治療ガイドライン7やAmerican Heart/Stroke Associationの発行するガイドライン1においても,強く勧められるアプローチの一つとして挙げられている(表1).しかしながら,Herat & Stroke Foundation Canadian Partnership for stroke rehabilitationの示すEvidence Based review of Stroke Rehabilitation2においては,急性期・亜急性期については従来法との比較において大きなアドバンテージはないともされており(表2),まだまだ検討が必要である.一方,Liuら3は,急性期・亜急性期においても,1日の練習時間を2時間未満に設定した低負荷のCI療法は従来法よりも効果的であるといったシステマティックレビューとメタアナリシスの結果を示していることから,少なくとも急性期・亜急性期において,CI療法を用いる際には1日の練習時間に対しては配慮が必要な可能性がある.
まとめ
本コラムでは,CI療法の主要ガイドラインにおけるエビデンスについて述べた.CI療法は,リハビリテーションプログラム全般の中でも特に研究数が多いアプローチである.しかしながら,まだ明らかになっていないことは多く,検討の余地も残っている.このように多くの研究結果が多くの識者によって吟味され,アプローチの特徴等が吟味されて行くことを理解し,臨床にて用いることが重要である.
参照文献
1.Winstein CJ, Stein J, Arena R, et al. Guidelines for adult stroke rehabilitation and recovery: a guideline for healthcare professionals from the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke, 47(6), e98-e169, 2016
2.Teasell R, Hussein, N. Stroke rehabilitation clinician handbook: Motor rehabilitation. Motor Rehabilitaiton (Upper Extremity), 2020. Im Internet. ( http://www.ebrsr.com/clinician-handbook [2022年12月26日現在])
3.Liu XH, et al. Constraint-induced movement therapy in treatment of acute and sub-acute stroke: a meta-analysis of 16 randomized controlled trials. Neural Regen Res. 12: 1443-1450, 2017