初心者向けConstraint-induced movement therapyとは?(4)

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2023.03.24
リハデミー編集部
2023.03.24

<抄録>

 Constraint-induced movement therapy(CI療法)とは,脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチの一つであり,多くのランダム化比較試験を通して,効果のエビデンスが確立されている手法である.この手法は開発されてから約40年が経過し,世界においては標準リハビリテーションプログラムにおける選択肢の一つと考えられており,多くのガイドラインの中でも推奨されている.しかしながら,本邦においては,学生教育や新人教育の中でも標準的には取り上げられておらず,国家試験における出題も1題のみに止まっている.本コラムにおいては,6回に渡りCI療法の概要,歴史,エビデンス等について,簡単に紹介することを目的としている.第4回はCI療法の実践について,特にCI療法のコンセプトの一つである課題指向型アプローチにおけるShapingの実践について,解説を行う.

1.課題指向き型アプローチにおけるShaping

 Shapingとは,行動心理学を基盤とした手法であり,練習課題に細やかで連続的な難易度調整を施すことで,運動もしくは活動における目標を達成するためのアプローチと考えられている.ただし,CI療法におけるShapingは,比較的機能的な練習課題が多く,「麻痺手の分離・効率的な機能改善」を導くために,作業を手段的に利用している印象が強い. MorrisやTaubらが例示しているShapingの例を鑑みると,動作はICFでいう活動レベルの日常生活や応用的日常生活動作的なものではなく,ブロックを移動する,練習場面における特異的な物品を操作するといったものが多い印象である.その根拠として,彼らは練習課題を提示する際に,練習課題の目的となるTarget movement(練習の中で導き出したい関節運動)を設定している.それぞれのTarget movementは,関節運動を明示しているものがほとんどであり,これからもShapingは課題指向型アプローチの中でも特に「機能的」な側面が強いものと解釈できる.具体益なShapingにおける課題を表1に記載する.

2.課題指向型アプローチにおけるTask practice

 法は,Shapingほど関節運動に焦点化するようなことはなく,活動レベルのパフォーマンスの改善や,課題を実施した際の自己効力感の育成などに焦点を当てた課題指向型アプローチである.機能を改善するという目的以上に,環境調整や自助具の使用なども含め,麻痺手で目標とした作業課題の遂行が可能になることを目的としている.ここで,再びMorrisやTaubらが示すTask-practiceの例を第4章に提示する.

 これらを鑑みると,作業活動におけるTask practiceの分類は,作業の目的的利用の側面を有する.ShapingはTask practiceに比べ,Wolf Motor Function TestのPerformance timeと行った機能,つまり「動く」要素を効率よく向上させると考えられている.逆に,Task practiceは「動く」要素は明らかに低いはずの群が,生活における麻痺手の使用頻度を示すMotor Activity Logと言った能力(使う要素)に効率的に向上させることがわかっている.このように,ShapingとTask practiceは同じ課題指向型アプローチでも,大きな特徴の違いを有している.実際のTask practiceの例を表2に示す.

まとめ

 本コラムにおいては,CI療法における課題指向型練習のShapingとTask practiceに触れた.それぞれ特徴の異なる課題指向型アプローチを併用することで,対象者の能力を十分に引き出すことが求められる.これらの特徴をしっかり理解した上で,ShapingとTask practiceを適切に使い分けることが重要である.


表1. Shapingの例
・対象とする機能障害
①ピンチ力の低下、把持力の低下 
②ピンチ力の低下、把持力の低下
③上肢の近位・遠位の運動制御の問題
・使用する道具
①0.5cm-10cm程度の多種多様なブロック(図1)
・課題の設定
①座位において机上に設置した,もしくは手渡しで渡したブロックを移動
・難易度調整
※遠位に関する難易度調整については第3章を参照されたい.また,物品においては,お手玉やビニールボールなどを用いても同様に難易度を増減する.


表2. Task practiceの例
・対象とする機能障害
①上肢近位・遠位部の機能障害
②把持力の障害
③上肢遠位部の正確な運動制御の問題
・使用する道具
①釘付のまな板
②安全包丁(手指が切れない幼児用のもの)
③セラピーパテ,食材(敷地内にある雑草などでも良い)
・課題の設定
①棚から全ての道具を両手で持ち運びする
②セラピーパテや食材を切る
③両手で後片付けをし,全ての道具を両手で棚に戻す


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