カナダにおける脳卒中関連のリハビリテーションに関する最新のエビデンスをチェックする -リハビリテーションアセスメントについて-(8)ガイドラインにおける推奨されているアウトカムについて

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2023.05.26
リハデミー編集部
2023.05.26

<抄録>

 カナダの医療制度は,世界的にも珍しい皆保険に近い制度をとっており,本邦における公的保険下でのリハビリテーションを取り巻く環境に似ている.従って,背景環境の似ているカナダにおけるエビデンスは,本邦においても利用可能性が高いと考えている.さて,リハビリテーションを進める上で,効果検証や対象者の現状の状況を他職種や家族等に伝えるために,定期的に対象者に対してリハビリテーションに関するアセスメントを実施する必要がある.特に,入院中におけるリハビリテーションにおいては,その後,在宅や施設に対象者が帰ることで,環境が激変することもあり,アセスメントの重要性はさらに高まると考えられている.本コラムにおいては,脳卒中を発症後に入院環境で実施する最初のアセスメントについて,Canadian Stroke Best practice 2019より抜粋して,解説を行なっていく.第 八回はガイドラインにおいて,脳血管障害後の運動機能評価について,Chedock-McMaster Stroke Assessment Scale(CMSA),Fugl-Meyer Assessment(FMA),Rivermead Motor Assessment(RMA),Stroke Rehabilitation Assessment of Movement(STREAM).について解説を行っていく.

1.推奨されているアウトカム(運動機能に関するアセスメントツール)

1)Chedock-McMaster Stroke Assessment Scale(CMSA)1

 Chedock-McMaster Stroke Assessment Scale(CMSA)は身体機能と能力障害に対するスクリーニングかつアセスメントツールである.CMSAは2つの大項目から構成されている.1つは身体機能に関する6項目(肩の痛み,姿勢制御,上肢の制御,手指の制御,下肢の制御,脚関節以遠の制御)である.もう一方の項目群は,能力障害に関するものであり,粗大な運動機能と歩行機能を評価する項目から構成されている.身体機能の項目群は42点,能力障害の項目群は100点で評価され,点数が低いほど,機能障害および能力障害における障害が重症であることを示している.ただし,評価には時間を要するアセスメントツールであり,60分程度の時間を要するとされている.CMSAは,比較的包括的に運動機能および能力障害を評価できるアセスメントツールである.ただし,Pooleら2は,CMSAは,良好なアセスメントツールであるものの,所要時間が60分程度かかることが評価そのものの価値を下げている可能性にも言及している.


2)Fugl-Meyer Assessment(FMA)

 FMAは脳血管障害後に生じる運動障害に対するアセスメントツールである.全身を評価するために,155項目からなる上肢運動機能,下肢運動機能,バランス機能,感覚障害,関節可動域,痛み,に関する評価から構成されている.113項目を3件法(0点:不可能,1点:不十分,2点:十分)で評価し,226点満点のアセスメントツールとされている(上肢運動障害:66点,下肢運動障害:34点,バランス機能:14点,感覚障害:24点,関節可動域および痛み:44点).点数が高いほど,正常に近いパフォーマンスであるとされている.評価に要する時間は30分程度であるが,世界においてもゴールドスタンダードの評価として,最も使用されているアセスメントツールの一つである.


3)Rivermead Motor Assessment(RMA)

 Rivermead Motor Assessment(RMA)は,運動パフォーマンスに対するアセスメントツールである.38項目の項目から構成されており,後の評価項目になるにつれ,難易度が高い項目が用意されている.点数は高得点であるほど,良好な運動パフォーマンスを有するとされている.評価に要する時間は45分程度とされている.なお,RMAは運動機能評価に通じている療法士によって実施されることが望ましいと考えられている.


4)Stroke Rehabilitation Assessment of Movement(STREAM)

 Stroke Rehabilitation Assessment of Movement(STREAM)は運動機能に対するアセスメントツールである.30項目の上下肢の運動および基本動作に関する随意運動をそれぞれ3または4件法で評価する.最高点は70点(上肢機能:20点,下肢機能20点,基本動作30点)であり,点数が高いほど,良好な運動機能を有するとされている.所要時間は15分程度とされており,運動機能を測定する評価の中では,比較的短期間で実施可能な評価とされている.しかしながら,開発者によると,この評価の対象の上限もしくは下限に属する対象者には,天上及び床効果が存在する可能性があると言われており,解釈する際には注意が必要ともされている.なお,本ツールを利用する際の特別な訓練は必要ないとされている.

まとめ

 今回は, Canadian Stroke Best practice 2019より抜粋して,運動機能に関するアセスメントツールを紹介した.特に,CMSAやRMA,STREAMについては,本邦においてはあまり使用されていないツールである.特にSTREAMは近年予後予測においても使用されているため,是非引用元に遡り,学習することが望ましいと思われた. Gowland, fugl, Lincoin, Daley


参照文献

1. Gowland C, Stratford PW, Ward M, et al. Measuring physical impairment and disability with the Chedoke-McMaster Stroke Assessment. Stroke 1993;24:58-63. 

2. Fugl-Meyer AR, Jaasko L, Leyman I, Olsson S, Steglind S. The post-stroke hemiplegic patient. 1. a method for evaluation of physical performance. Scand.J.Rehabil.Med. 1975;7:13-31. 

3. Lincoln NB, Leadbitter DA. Assessment of motor function in stroke patients. Physiotherapy 1979;65(2):48-51.

4. Daley K, Mayo N, Wood-Dauphinee S. Reliability of scores on the Stroke Rehabilitation Assessment of Movement (STREAM) measure. Phys.Ther. 1990;79:8-19. 

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