カナダにおける脳卒中関連のリハビリテーションに関する最新のエビデンスをチェックする -リハビリテーションアセスメントについて-(10)ガイドラインにおける推奨されているアウトカムについて

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2023.05.31
リハデミー編集部
2023.05.31

<抄録>

 カナダの医療制度は,世界的にも珍しい皆保険に近い制度をとっており,本邦における公的保険下でのリハビリテーションを取り巻く環境に似ている.従って,背景環境の似ているカナダにおけるエビデンスは,本邦においても利用可能性が高いと考えている.さて,リハビリテーションを進める上で,効果検証や対象者の現状の状況を他職種や家族等に伝えるために,定期的に対象者に対してリハビリテーションに関するアセスメントを実施する必要がある.特に,入院中におけるリハビリテーションにおいては,その後,在宅や施設に対象者が帰ることで,環境が激変することもあり,アセスメントの重要性はさらに高まると考えられている.本コラムにおいては,脳卒中を発症後に入院環境で実施する最初のアセスメントについて,Canadian Stroke Best practice 2019より抜粋して,解説を行なっていく.第 九回,十回はガイドラインにおいて,脳血管障害後のモビリティの評価について,Berg Balance Scale, Clinical Outcome Variables(COVS),Functional Ambulation Categories(FAC),Mini BESTest.について触れた.次回は,Rivermead Mobility Index(RMI),Timed up and go test(TUG),Functional Reach Test(FRT)について解説を行っていく.

1.推奨されているアウトカム(モビリティに関するアセスメントツール)

(1)Rivermead Mobility Index(RMI)1

 Rivermead Mobility Index(RMI)は,日常生活における移動能力に関するアセスメントツールである.評価は15項目から構成されている.15項目のうち,14項目は日常生活における機能的な活動の遂行に関するYes/noの質問様式の項目となっている.残りの1項目が10秒間介助なしで立位が可能かどうか,といった項目となっている.総得点は15点満点で,得点が高いほど,日常生活における機能的な移動能力が高いことを示している.この評価は質問様式と簡単な観察によって簡便に評価できるため,短時間で実施可能なアセスメントツールである.しかしながら,できる,できないの間に修正項目(不十分)といった項目が存在しないため,その解釈には十分注意が必要だとされている2.


(2)Timed up and go test(TUG)3

 Timed up and go test(TUG)は基本的な移動能力とバランスのスクリーニング評価として,広く利用されているアセスメントツールである.このアセスメントツールは非常にシンプルな設計がなされている.評価内容としては,座った状態から立ち上がり,3メートル歩行する(必要であれば,杖頭の補助具を使用してもよい).その後,ターンして,元の椅子に再着席する.評価としては,テストに要した時間を記録する.これらの時間が短ければ短いほど,機能的なバランス能力とバランスが優れていると解釈することができる.この評価は,立ち上がり,歩行,方向転換といった限定的な場面における機能的移動能力およびバランス能力を評価しているに過ぎず,BBSのような包括的なバランス尺度に比べると明らかに狭義のバランス能力の評価であると考えられている4.


(3)Functional Reach Test(FRT)

 Functional Reach Test(FRT)は,対象者が立位のまま,どの程度まで前方にリーチができるかどうかを評価するアセスメントツールである.対象者は壁に平行に立ち,腕を肩関節90度に屈曲し,拳を握った姿勢をとる.その姿肢からできるだけ前方にリーチを実施し,第三中手骨頭がどの程度前方に移動したかを測定する.また,この手続きを3回実施し,そのうちの後半2回の平均値を評価結果として記録する.この評価の修正版も開発されており,同様の所作を座位にて実施するものとなっている.特に評価のために訓練も必要ない評価であるが,この評価もBBSのような包括的なバランス尺度に比べると明らかに狭義のバランス能力の評価であると考えられている.

まとめ

 第九回から十回にかけて,モビリティに関するアセスメントツールを紹介した.日常生活活動においては,その活動内で必要とするバランス能力や移動能力を正確に知る必要がある.また,日常生活活動の自立のために,それらに対する練習も考案する必要もあるかもしれない.それらを検討する上で,重要なアセスメントツールであると思われる.


参照文献

1. Collin C, Wade D, Davies S and Horne V. The Barthel ADL Index: a reliability study. International Disability 1988; 10: 61-63. 

2. Collen FM, Wade DT, Robb GF, Bradshaw CM. The Rivermead Mobility Index: A further development of the Rivermead Motor Assessment. Int Disabil Stud 1991;13:50-54. 

3. Podsiadol D, Richardson S. The Timed “Up and Go”: a test of basic functional mobility for frail elderly persons. J Am Geriatr Soc 1991;39:142-148. 

4. Whitney SL, Poole JL, Cass SP. A review of balance instruments for older adults. Am J Occup Ther 1998;52:666-671. 

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