脳卒中後に対象者が有する認知機能のパターンによる上肢麻痺に対するロボット支援リハビリテーションの効果について(2)
<抄録>
脳卒中後に上肢麻痺を有する対象者に対するロボット支援リハビリテーションは国際的にもコンセンサスが得られており、効果のエビデンスも確立されている。しかしながら、脳卒中後に上肢運動障害を呈した対象者に対するリハビリテーション全般的に言えることだが、ランダム化比較試験等の介入試験を実施する際のプロトコルにおいて、認知機能障害がある対象者に対して、除外する基準を儲けている研究が非常に多い。したがって、認知機能障害を有する対象者において、ロボット支援リハビリテーションをはじめ、多くの上肢機能アプローチがどのような効果を示すのかどうか、不明確な部分が非常に多い。本コラムでは、認知機能障害を有する対象者に、ロボット支援リハビリテーションを実施した際に、どのような経過を辿るのかについて、3回に渡り、解説を行なっていこうと考えている。第2回は認知機能を有する対象者におけるロボット支援トレーニングの実際について触れていく。
2. 認知機能を有するロボット支援リハビリテーションの背景について
一方、脳卒中後の後遺症に関しては、上肢麻痺以外にも多岐にわたる。その内の重大な後遺症の一つが認知機能障害である。脳卒中生存者の約30%は運動機能障害に加えて認知機能障害も示し、MMSEスコアが27点以下のことが分かってる。これらの認知機能障害は運動学習戦略[2,3]、機能回復、生活の質[4,5]に重大な影響を及ぼすと考えられている。したがって、これらの有無は対象者の上肢機能に関する予後にも多大な影響を与えると考えられている。
最近の研究では、ロボットやテクノロジー機器が、工学機器特有のセンサー機能や正確な制御様式等を利用し、ヒトでは実施できなかったを通じて神経可塑性を促進する[6]とされ、特にRTが認知機能の回復にも重要な役割を果たすとXingら[7]は強調している。これらの機器は、運動前野、小脳、M1、補足運動野などの領域の結合性の変化を刺激し、神経可塑性の改善を促すとされている上で、機器の中には、実際にその際に生体内で生じている生体信号を拾い上げ、リアルタイムにバイオフィードバックを可能とするものもある。
その中でも、新しいグラフィカル・インターフェースやより生態学的なシナリオ、認知的に負荷の高いタスクの導入により、ロボットは患者の積極的な身体的・認知的関与を可能にすると言われている[8]。これは患者の能動的な参加促進[9]、認知的チャレンジ[10]、自動タスク難易度適応[10]、視覚・聴覚フィードバック[11]などを通じて行われる。
しかし、認知障害の回復におけるロボット工学の有効性についてはまだ十分な研究が行われていません。また、一部の研究者たちは、ロボット支援リハビリテーション(RAT)による回復の程度を決定するための重要な要素として、認知的要素がることをガイドラインにおいても指摘している[11]。この視点が生まれる根源は、臨床において認知機能が低下している対象者のリハビリテーションに難渋することが多いことが言われている。また、一部の研究者も認知能力が低い脳卒中患者がR ATを受けるとき、認知機能が低下していない患者に比べ、治療の効果が低下するかもしれないと考えられている[12]。
認知機能の低下がリハビリテーションの効率や効果に影響を与えうるといった認識、そして知識を持つことは、脳卒中後に上肢麻痺を有した対象者に対して、ロボットの使用に関する訓練の量や質を増加させるという基本的な効果についての議論を促し、リハビリテーションの結果を改善するためにRATがどのように最適化されるべきかについての考察を促すとされている。
まとめ
脳卒中後に上肢麻痺を有する対象者において、少なくない割合で認知機能の低下を有することが示唆された。また、それらがRATに影響を与える可能性についても、一部の研究者が懸念している事実が示された。次回「脳卒中後に対象者が有する認知機能のパターンによる上肢麻痺に対するロボット支援リハビリテーションの効果について(3)」では、現時点で分かりうる、認知機能がRATに与える影響について、述べていく。
参照文献
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