エビデンスを臨床でどのように使用するのか?(2)〜Evidence based practiceのフレームを利用する〜

竹林崇先生のコラム
神経系疾患, その他
リハデミー編集部
2024.02.19
リハデミー編集部
2024.02.19

<本コラムの目標>

1. Evidence-based practiceのフレームを理解する

2. グレーゾーンが多い領域のEvidence-based practiceを理解する

3. エビデンスの使い方を理解する

1. エビデンスが不明確、不十分な領域におけるEvidence-based practice

 リハビリテーション領域は『侵襲性』や『命の危険』、『後遺症の残存』といった非常にクリティカルなリスクが小さいため、基本的には医療サービスの中では『低いリスク』のカテゴリに分類されると思います。

 さて、ここで重要になるのが、『対話』の必要性です。Evidence-based practiceにおける対話とはShared-Decision Making(SDM)と言われ、対象者と一緒にリハビリテーションにおけるアプローチ方法の選定をしていきます。リスクとエビデンスの確実性によって、対話の必要性が変わることを示したWhitneyら[1]の分類を以下の図に示します。

 ある程度、確実性が高いエビデンス(アプローチ)がその領域に存在する場合は、対話なく、確実性の高いアプローチを提供するために最低限の対話と同意で十分であると言われています。

 しかしながら、エビデンスが不十分な領域となると、選択肢が多くなるため、対象者の様々な要素を鑑みる必要が生じるため、対話の必要性が前者に比べると大きくなります。

図1. リスクと確実性によって変わる意思決定の形態


 例えば、脳卒中後の上肢麻痺に関するリハビリテーションについては、多くのエビデンスが示されています(図2)。しかしながら、それらの大半が中等度から軽度の麻痺に対するリハビリテーションに偏っており、重度例となると、電気刺激療法、メンタルプラクティス、ロボット療法等に限られてきます[2]。

 ただし、電気刺激療法およびメンタルプラクティスは、これら単独では麻痺手の機能および行動の改善に対して、強い力を持ち合わせておらず、他の療法と併用する必要があります。また、ロボット療法は、設備費用も大きいため、全ての施設で実施できるアプローチではありません。そうなると、これらのアプローチ以外の『グレーゾーン[3]』部分は、ガイドラインにおいて推奨度が低く、エビデンスが不十分なアプローチの中から、療法士のこれまでの経験を踏まえて、選択することが求められます。

 これらを通して言えることは、Evidence-based practiceは『対象者の利益を追求するためのオーダーメイドのアプローチ展開をするためのフレーム』ということがわかると思います。対象者の方の目標や人生、嗜好性、そして、リハビリテーションを提供する環境を踏まえた、対象者中心のアプローチを提供するために非常に重要な考え方ですので、知っておいて損はないと思います。


参照文献

1. Whitney SN, et al: A typology of shared decision making, informed consent, and simple consent, Ann Intern Med 140: 54-59, 2004

2. Winstein CJ, et al: Guidelines for Adult Stroke Rehabilitation and Recovery: A Guideline for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke 47: e98-e169, 2016

3. Brownlee S,et al: Evidence for overuse of medical services around the world . Lancet.390(10090):156―168,2017.

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