複合性局所疼痛症候群(Complex regional pain syndrome: CRPS)について

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2024.02.26
リハデミー編集部
2024.02.26

<本コラムの目的>

・CRPSとは?を知る

・CRPS発症のタイミングについて知る

1. CRPSとは?

 CRPSとは、自律神経系、感覚神経系、運動神経系の異常を伴う症候群であり、それらの神経の損傷の度合いや範囲に関係なく、激しい痛みが生じる症状です(1994年に世界疼痛学会で反射性交感神経性ジストロフィー、カウサルギー、片手症候群等、さまざまな名称で呼ばれていた現象をCRPSとして統一されました)[1]。したがって、損傷は軽いものであったとしても、激しい痛みが生じ、それが原因となって、ベッドで寝たきりになり、活動ができない対象者もおられます。

 CRPSにも二つのタイプが存在します。1つ目は神経の損傷がないタイプです。2つ目が重度の神経の損傷後に生じるタイプです。これらのタイプについては、前者を1型、後者を2型と定義されています。脳卒中後に生じるCRPSの実に90%異常が1型と言われており、療法士が臨床で悩まされる現象もこちらが多いことでしょう。また、タイプは異なりますが、神経障害が原因であるかどうかはわかっておらず、これらのタイプを分ける臨床的な意義がどこまであるかはわかりません。

 さて、1型と2型ですが、タイプは異なるものの、臨床症状はとても似ています。皮膚の温度が向上し、皮膚色の変化を伴う灼熱痛が現れます。これらに加えて、知覚過敏(感覚を通常よりも過剰に感じてしまう)、毛髪や爪の成長生涯、皮膚の萎縮、関節・筋肉の線維症、痛みが生じる部位の関節の膨張、運動機能の障害等が認められます[2]。

 CRPSの診断基準は、神経損傷や外傷、さらにそれらを原因とする不動(寝たきり、活動の制限、四肢の不使用等)、もしくは他の既往歴や原因からは想像ができない、疼痛・浮腫・血流変化とされています。

 CRPSの発症のタイミングと重なる出来事で、最も多いのが骨折です(45%)。それについで、捻挫、手術後、と続いていきます[3]。さらに、炎症性の疾患、心筋梗塞、喫煙、遺伝的要因、脳卒中が発症のタイミングとして、比較的多くなっており、そういった出来事なく発症する対象者は全体の10%未満と言われています。


コラム CRPSの診断基準

・原因から理解できない持続性疼痛

・以下の4項目のうち3項目以上で1つの症状を有する

知覚障害:知覚過敏・allodynia

血管運動障害:患部の体温の非対称・皮膚変調変化/非対称

浮腫/発汗:浮腫・発汗変化・発汗の非対称

運動障害・萎縮性変化:関節可動域現象・運動障害(筋力低下・振戦・ジストニア)・髪/爪/皮膚の萎縮性変化

・以下の兆候のうち、2項目異常を少なくとも病期中に一度有する

知覚障害:痛覚過敏(ピンプリック)・Allodynia(触覚や圧迫、関節運動で惹起)

血管運動障害:温度の非対称・皮膚色調変化・非対称の証拠

浮腫/発汗:浮腫・発汗変化・発汗の非対称

運動障害・萎縮性変化:関節可動域の減少、運動障害(筋力低下・振戦・ジストニア)・髪/爪/皮膚の萎縮性変化

・これらの症状や症候を説明できる他の疾患のないこと


参照文献

1. A. Goebel. Complex regional pain syndrome in adults. Rheumatology, 50 (2011), pp. 1739-1750

2. J. Chae. Poststroke complex regional pain syndrome. Top Stroke Rehabil, 17 (2010), pp. 151-162

3. J. Field. Complex regional pain syndrome: a review. J Hand Surg, 38 (2013), pp. 616-626

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