エビデンスベースドプラクティスに臨床で取り組むための具体的な方法:STEP1について理解しよう

竹林崇先生のコラム
患者教育
リハデミー編集部
2024.04.08
リハデミー編集部
2024.04.08

<本コラムの目的>

1.エビデンスをどのように使っていくのかを学ぶ

2.エビデンスベースドプラクティスにおける5ステップを知る

3.まずは1STEPができるように具体的な事例を通して考えることができ

1. エビデンスベースドプラクティス(Evidence-based practice: EBP)における5STEPとは?

 エビデンスベースドプラクティス(Evidence-based practice: EBP)を進めるために5STEPという手続きがあります[1]。EBPにおける5STEPについては以下の表1の通りです。まずは、臨床の疑問を立て(定義)、それに対する情報を収集し、集めた情報の質を評価し、エビデンスを眼前の対象者の方に使えるように統合し、実施後結果を評価するといった流れになります。もちろん、結果を評価した後、問題点が多くの場合で見つかると思いますので、その点を鑑みた上で、臨床の疑問をもう一度立て、同じ手続きを繰り返していきます。これにより、刻一刻と状況が変わりゆく、対象者の方に必要な情報収集を常に行い、適切な実践方法を選択できるための手法になります。では、それぞれについて、具体的な説明を加えていきます。

STEP1: 臨床における問題の定義

 まず、最初に臨床における問題の定義ですが、これは明確であればあるほど良いとされています。疑問が曖昧なままでは、解決すべき事象が定まらず、情報収集の精度は必ず落ちると言えます。

 例えば、『脳卒中を発症した急性期の対象者に良好なリハビリテーションはあるか?』と言った問いも、『脳卒中を発症した急性期の対象者に、伝統的かつ一般的なリハビリテーション(伝統的な理学療法、作業療法、神経筋促通術と言った昔から臨床にて経験に準じ一般的に行われてきたリハビリテーションプログラム)に比べ、◯◯を行うことで、上肢機能(ここも、できれば、麻痺という機能か、生活における使用頻度という行動か、アウトカムを明確にできると検索はしやすい)の長期予後はどのようになるのか?』と言った問いに書き換えることができます。

 こう言った置き換えができれば、患者(Patients): 脳卒中を発症した急性期の患者、介入(Intervention):◯◯、比較対象(Comparison):伝統的なリハビリテーション、アウトカム(Outcome):上肢機能の長期的な予後、と言った形でまとめることができます。これを一般的にそれぞれの頭文字をとりPICO*と言います。


*PICOとPECO

本コラムではPICOを取り上げた。PICOのIはIntervention(介入)を示す言葉であるが、介入研究(ランダム化比較試験)によるエビデンスを探索する場合は上記のPICOを用いる。ただし、後述されているが、後ろ向きのコホート研究やケースコントロール研究の場合は介入がなされたわけでなく、既にその事実に対象者が晒されていたと理解するため、I:Intervention(介入)をE: Exposure(曝露)に置き換え、PECOという言葉を使います。さらに言えば、臨床の疑問の種類によっては、PICOにもPECOにも当てはまらないものも存在します。これらについては定形式に当てはめることにこだわりすぎず、臨機応変に対応することが求められます。


 このように目の前の対象者の方に対して、医療者が抱いている問題点を言語化すことで、これらについて調査さがなされた過去の研究によるエビデンスを探索するためのキーワードを明確化することができます。さて、このように言語化されたPICOの答えを知るためには、◯◯という実践方法を行った群、対照群(ここでは伝統的なリハビリテーションを行った群)の結果を比べた研究によるエビデンスが必要になります。

 比較研究には、システマティックレビューとメタアナリシス、ランダム化比較試験、コホート研究、ケースコントロール研究、とさまざまな研究デザインがあります。また、これらの研究デザインについては、それぞれ比較の正確性があり、全ての研究デザインで導かれた結果が正しいとは言えません。この辺も理解しながら、EBPの5STEPにおけるSTEP2、3に進んでいけると良いと思います。


参照文献

藤本修平,他:PT・OT・STのための臨床に活かすエビデンスと意思決定の考え方.医学書院,東京,2020

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