エビデンスベースドプラクティスを進めるために必要な意思決定モデル

竹林崇先生のコラム
患者教育, その他
リハデミー編集部
2024.04.22
リハデミー編集部
2024.04.22

<本コラムの目的>

1. エビデンスベースドプラクティスを進める上での意思決定のモデルを学ぶ

2. 3つの意思決定のモデルを知る

3. エビデンスの圧政について意識できるようになる

1. エビデンスベースドプラクティスにおけるコミュニケーションのモデル

 エビデンスベースドプラクティス(Evidence-Based Practice: EBP)は、エビデンスを、実現可能性や対象者の嗜好性に合わせ、対象者の利益を最大化する、オーダーメイドのアプローチのことを指します。第一回『エビデンスベースドプラクティスの思考でリハビリテーションの臨床に関わろう』でも示したように、エビデンスが確保されたアプローチ以外の実施を許さないといったエビデンス至上主義とは全く違う物であることを理解する必要があります。

 では、EBPとエビデンス至上主義はどのように違うのでしょうか?結論から言うと、大きな違いは対象者中心のコミュニケーションをシェアドデジションメイキングモデル(Shared-Decision Making Model: SDM)(共有意思決定モデル)を用いているかどうかと言う点です。SDMとは医療における治療法選択に関わる3つのコミュニケーションモデルの一つです。3つのコミュニケーションモデルについては図1に記載します。

 SDMは、医療者は対象者にとって有益となる情報を提供し、対象者は自身で探索した情報や医療者から与えられた情報に対して、質問・不安・嗜好政党を伝えます。これらのやり取りの中で、お互いが必要なものを主張し、議論する中で、最善の落とし所を探っていきます。これらの対話を行うことで、治療を実施している際、対象者の治療に対する満足度、治療に関する知識、アドヒアランス、うつ傾向が有意に改善すると過去の研究では言われています[1]。

 逆に、SDMを行わず、図1のパターナリズムモデルを用いて、医療者がエビデンスの確保されている治療法のみを対象者の意思を無視して、導入する過ちを『エビデンスによる圧政(図2)』と報告しています。一部の医療者はEBPと聞くと、エビデンスの圧政によるエビデンス至上主義の構図を思い浮かべる方がいらっしゃいます。ただし、誤解してはいけないのは、EBPは対象者の利益を最大化するためのオーダーメードの取り組みだと言うことです。

 ただし、それらを実現するためには、対象者中心のコミュニケーションを取るためのSDMが必要となります。医療者は、SDMを臨床においても正確に取れるよう、コミュニケーションスキルを高める必要があります。医療におけるコミュニケーションを学ぶための参考書を以下の参考文献に記載します。コミュニケーションは医療の要だと思います。是非、丁寧に学んでみてください。



参照文献

引用文献

1. Joosten EAG, et al: Systematic review of the effects of Shared decision-making on patient satisfaction, treatment adherenece and health status. Psych other Psychosom77: 219-226, 2008

2. Hoffmann TC, et al: The connection between evidence -based medicine and shared decision making. JAMA 312: 1295-1296, 312

参考文献

患者さんの質問にどう答えますか?言葉の意味を読み解きハートに響く返答集.内科臨床誌メディシーナ 60(11). 医学書院,2023


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