批判的吟味を行ってみよう!!

竹林崇先生のコラム
患者教育
リハデミー編集部
2024.05.13
リハデミー編集部
2024.05.13

<本コラムの目的>

・批判的吟味を行ってみよう

・臨床疑問と論文の関連性を理解しよう

・示されたエビデンスの限界を理解しよう


1. 臨床疑問と論文が提供するエビデンスの関連性を判断しよう

 関連性とは、論文が提供するエビデンスが臨床上の疑問とどれだけ密接に関連しているかを指します。そして、論文が提供するエビデンスには、研究の目的、参加者、方法、結果、等、の要素が含まれ、これらから関連性の合致について考えて行きます。この関連性が目の前の対象者と合致していれば、しているほど、そのエビデンスは臨床疑問を解決してくれるものとなるでしょう。

 そこで、常に自問してみましょう。読んでいる論文の対象者の特徴(年齢、疾患の種類、病期[急性期、回復期、生活期等]、人種、重症度等)が自身の臨床で対峙している対象者と類似しているでしょうか?その研究は臨床で対峙している対象者の目標を達成するために参考になる介入をしているでしょうか?(目標達成に必要なアウトカムを取得し、その改善に対してアプローチしているのか?)こういった自問自答を通して、STEP1(https://twitter.com/rehatech_links/status/1772861017690964141)で作成した臨床疑問を定式化したPICOに合致しているかについて、検討をしてみましょう。

 例えば、『あなたは交通事故によって生じた外傷性脳損傷を有する10代の若者の注意障害、遂行機能障害に対するアプローチを提供したいと思っています。しかしながら、あなたが見つけた論文は、爆風によって生じた外傷性損傷を持つ30-40歳代の退役軍人の注意機能、交通事故によって生じた外傷性脳損傷を有する50-60歳代の中年代の注意機能、遂行機能に対するものでした』。この場合、この知識を100%適応することはできません。障害が生じた起点となるイベントや個人の人生の特性の違い、特性(爆風による身体障害や軍人になるまでの一般的な知的機能、年齢や発達が与える影響、等)を鑑みた上で、その論文から臨床で対峙する対象者にとって使えるものを『関連性』として抽出し、利用しなければなりません。

 批判的吟味のまず最初のステップはこの関連性を吟味することから始まります。ここを留意した上で、実施していくことが重要です。

2. エビデンスの妥当性と信頼性を評価する

 これに関しては、第6回のコラムでも紹介した批判的吟味に使えるツール等を使いながら、評価していくと良いと思います。前回も記載しましたが、『Pubmedに載っているから』『医中誌Webに載っているから』『査読を通った論文だから』という理由でその内容を全て丸々信じてしまうのではとてもリスクです。ですから、そういった周辺情報で判断をするのではなく、その論文自身の価値を、自分自身で検討することが重要になります。それが批判的吟味を行う本当の意味だと思います。

 ここでも自問自答を忘れずに実施して行きましょう。『この研究デザインは臨床疑問の解決に役に立つかどうか?(例えば、従来の治療法に比べ、優秀な治療を探している場合には、従来の治療法を対照群におき、比較検討を実施しているエビデンスでなければ、ダイレクトな答えにはなりません。逆に、一群単独で、介入前後のアウトカムの変化を紹介している研究では、それが自然回復によるものか、従来の治療法に比べて優秀なのか否か等は全く判断できません)』、『そのエビデンスはどこで紹介されているものか?(査読つき論文なのか、それともブログやSNSで示されているだけなのか等)』、『研究デザインとその質は十分なのか?(論文には無作為化比較試験と記載はされているが、無作為化の割り付けや、評価者の盲検化*等は適切かどうか等)』といった自問自答を通して、そのエビデンスが眼前の対象者に利用できるものかどうかを判断する必要があります


*盲検化とは?

 盲検化とは、さまざまな検査値の測定や、診察・評価から、主観に基づく偏り(バイアス)を取り除くために行われる試験実施方法です。具体的には、実験群と対照群のどちらに被験者が割り付けられているか、わからないようにする等があります。これは、研究を思う通りに進めたい人がこの割り付けや評価に関わった場合、介入群に回復しやすい患者を割り付けることや介入群の患者に有利な評価を行うことも可能です。そうなると結果が真実とは歪んでしまう可能性があります。たとえば、第三者が割り付けを行い、実験が完了するまで測定者と被験者に教えないことなどで、測定者の盲検化が可能となる。

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