Motor Activity Logの妥当性・信頼性について

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2025.09.15
リハデミー編集部
2025.09.15

Motor Activity Log(MAL)のまとめについても意外に好評いただいています。

 やっぱり、回復期リハビリ病棟をはじめ、手の麻痺のリハビリで悩んでいる人は多いですね。かくいう私ももう、経験は20年を超えていますが、やっぱりわからないことだらけです…

 さて、今回も大阪公立大学医学部リハビリテーション学科の竹林先生にお願いしています。第一回は『MALの妥当性と信頼性』についてです。それでは竹林先生、よろしくお願い申し上げます

 なお、リハテックリンクスでは、脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチに関しても、サブスクサービス『リハデミー』内で学んでいただくことができます。これを機に、是非学んでみてはいかがでしょうか?

MALの妥当性と信頼性

MALの妥当性について

 MALは日常場面での上肢使用という固有の側面を評価するため、従来の機能検査との相関は中程度ながら、関連する概念妥当性が裏付けられています。例えば、MALスコアは上肢機能の代表的検査であるFugl-Meyer AssessmentやAction Research Arm Test (ARAT)、ボックス&ブロックテストなどと中等度の正の相関を示すことが報告されています

 van der Leeら[1]は慢性期患者でARATとMALの相関係数を約0.6と報告しており、Uswatteら[2]もMAL-QOMとQuality of life(QOL)のアウトカム内で上肢の活動能力に関する項目であるStroke Impact Scale手部機能項目との相関r=0.72を示しています​。いずれの研究も中等度の関係性を示しており、FMAで示される上肢機能とも異なり、SISで示されるQOLとも異なる独自の『実生活における麻痺手の使用行動』と言った概念を評価できているのではないかとされています。

 一方で、加速度計による客観的な腕の動きの測定との相関はr=0.52程度で主観報告であるMALと客観的活動量との間には中程度の関連性が確認されています。これらの結果から、MALは麻痺腕の「実際の使用状況」をそれなりに反映してはいますが、FMAやARAT、活動量計のような能力検査(机上課題のパフォーマンス)とは必ずしも強く一致しないことが分かります。これは、患者ができること(capacity)と実際にすること(performance)の乖離、いわゆる能動的不使用の存在を示唆するものであり​ MALはまさにその「日常でどれだけ使うか」という側面を測定する意義があります。


MALの信頼性

 信頼性(内的一貫性・再現性): MALは多数の項目で構成されていますが、その内的整合性(内部一貫性)は非常に高いことが各国の研究で報告されています。例えば、van der Leeら[1]の慢性期脳卒中患者56名を対象とした検証では、MAL-14のCronbachのα係数がAOU尺度で0.87、QOM尺度で0.90と報告されました​。以降の研究でも同様の傾向が示されており、英語版・各国語版を問わずα係数は概ね0.8~0.9以上、場合によっては0.95を超える値も報告されています(例:ドイツ語版MAL-30[3]でα=0.98~0.995​、、トルコ語版MAL-28[4]でα=0.96)。日本語版MAL-14についても内的一貫性が高く各項目がスコアに一貫して貢献していることが報告されており、総じてMALは信頼性の高い評価尺度と言えます[5]。

 一方、再テスト信頼性(テスト-再テスト法による安定性)も概ね良好です。評価間隔や対象者の状態によってばらつきはありますが、慢性期で状態が安定していればICC(級内相関係数)や相関係数が0.7~0.9前後と高い値を示します。van der Leeら(2004)は2週間間隔でMAL-14を繰り返し実施し、AOUの再現性がr=0.70~0.85、QOMがr=0.61~0.71と良好であることを示しました(ブレンド・アルトマン法による限界範囲はAOUで-0.70~0.85、QOMで-0.61~0.71と報告​)。他の研究ではより高い再現性も報告されており、例えばある検証では約3週間の間隔で実施した際、AOUの相関が0.96、QOMが0.99と極めて高い安定性を示したケースもあります​[6]。総じて、MALのスコアは短期間で大きな変化がない限り良好な再現性を示します。ただし、リハ介入中の患者では実際に運動機能が向上してスコアが変化する可能性がある点に留意が必要です。


まとめ

 今回のコラムではMALの妥当性・信頼性についてまとめました。こういった質問形式の評価については『本当にちゃんと取れているの?』と疑われることがあります。ですから、こう言った妥当性・信頼性に関するデータを知った上で、利用することが重要です。もし、今回、初めて見たとおっしゃる方がおられましたら、是非、使ってみてください。次回は、MALの妥当性・信頼性についてまとめていきます。


参照文献

1. van der Lee, J.H., Beckerman, H., Knol, D.L., de Vet, H.C.W., & Bouter, L.M. (2004). Clinimetric properties of the Motor Activity Log for the assessment of arm use in hemiparetic patients. Stroke, 35, 1410-14.

2. Uswatte, G., Taub, E., Morris, D. P. P. T., Light, K. P. P. T., & Thompson, P. A. (2006). The Motor Activity Log-28: assessing daily use of the hemiparetic arm after stroke. Neurology, 67(7), 1189-1194.

3. Khan, C.M. & Oesch, P. (2013). Validity and responsiveness of the German version of the Motor Activity Log for the assessment of self-perceived arm use in hemiplegia after stroke. NeuroRehabilitation, 33, 413-21.

4. Cakar, E., Dincer, U., Zeki, M., Kilac, H., Tongur, N., & Taub, E. (2010). Turkish adaptation of Motor Activity Log-28. Turkish Journal of Physical Medicine and Rehabilitation, 56, 1-5.

5. 高橋香代子, 道免和久, 佐野恭子, 竹林崇, 蜂須賀研二, & 木村哲彦. (2009). ◆ 研究論文 新しい上肢運動機能評価法・ 日本語版 Motor Activity Log の信頼性と妥当性の検討. 作業療法, 28(6), 628-636.

6. Johnson, A., Judkins, L., Morris, D.M., Uswatte, G., & Taub, E. (2003). The validity and reliability of the 45-item Upper Extremity Motor Activity Log. Journal of Neurologic Physical Therapy, 27(4), 172.

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