MAL臨床現場での使用方法

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2025.09.22
リハデミー編集部
2025.09.22

臨床現場での使用方法 (MALの使用法と適用範囲)について

 さて、Motor Activity Log(MAL)についても、第3回目に入ってきました。

 前回は妥当性・信頼性の話で少し単語等が難しいものもありましたが、皆さん着いて来れていますか?

 今回は、『臨床現場での使用法』についてです。それでは竹林先生、よろしくお願い申し上げます

なお、リハテックリンクスでは、脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチに関しても、サブスクサービス『リハデミー』内で学んでいただくことができます。これを機に、是非学んでみてはいかがでしょうか?

臨床現場での使用方法 (MALの使用法と適用範囲)

1. 具体的な使用方法
 MALは主にリハビリテーションの評価場面で用いられ、セラピストが患者に対してインタビュー形式で質問しスコアを付けます。評価者は患者に最近の生活で各活動を試みたかどうかを確認し、試みていればその頻度や質を0~5で評価するよう促します。必要に応じて「それはつまり週に○回くらいですか?」等、患者の回答を言い換えて明確化しながら進めますMAL-30を両尺度で評価する場合、インタビュー時間は患者の会話量にもよりますが20~30分程度かかるとされ、項目数の少ない短縮版であれば約10~15分で実施可能です(臨床では負担軽減のためMAL-14などが用いられることもあります)。

2. 評価結果として、患側上肢の使用頻度(AOU)と使用の質(QOM)について0~5の平均スコアが得られるため、これをリハ介入前後の比較や経時的な経過観察に用います。例えば、ある動作について「全く使わなかった」が「時々使う」や「ほぼ元通り使う」に向上していれば、患者の日常生活における手の使用が改善したことを意味します。MALは患者本人の主観評価ですが、日常生活での上肢使用という他者には測りにくい側面を患者の視点から捉えることができるため、ADL指導や在宅復帰支援の場面でも有用な情報を提供します。

3. 脳卒中リハビリテーションにおける適応範囲
 MALは本来、自宅や社会生活における腕の使用状況を評価するために開発されており、評価項目も家庭内動作が中心です。そのため自宅復帰後の外来リハビリテーションや、回復期リハ病棟から在宅への移行時期などで特によく活用されています。
 もっとも、発症早期の入院患者では「冷蔵庫を開ける」「車から降りる」といった項目は該当しない場合もあるため、そうした環境では評価者が該当しない項目をスキップするか、あるいは前述のMAL-hospitalのような環境に即した項目セットを用いることも検討されています。評価対象としてはある程度自主的な上肢の動きが出現している人が想定されています。
 完全に麻痺が残存して全く動かせない場合は全項目で0点となりますが、逆にかなり回復して自由に使えている場合は5点に近づき天井効果が生じます。このため、MALは中等度の上肢麻痺(ある程度動かせるが普段はあまり使えていない人)において、その「使えていない状況=学習性不使用」の度合いを評価し、リハ目標設定につなげる用途に適しています[1]。
 実際、強制的使用療法(CI療法)などではMAL評価により潜在的な非使用の程度を把握し、介入対象の選別に用いることがあります。例えば、TaubらはMAL-AOUの平均スコア2.5を超える患者では既に患肢を相応に使用しており顕著な学習性不使用は示さないことを報告しており[2]、このカットオフを一つの基準としてCI療法の対象を判断するといった運用も行われています。

4. 結果の解釈
 MALのスコアは患者の日常生活での主観的な手の使用状況を反映します。そのため、評価者はMALの結果を他の客観的機能評価と突き合わせて解釈することが重要です。例えば、麻痺手の筋力や巧緻性は十分回復していても、MALスコアが低い場合は「能力はあるのに使っていない」ことを意味し、生活上の癖や心理的要因(不使用の学習)へのアプローチが必要かもしれません。
 逆にMALスコアが高いのに機能検査の点数が低い場合、患者が代償動作で日常生活を工夫している可能性があります。またMAL実施時には、患者の認知機能や理解力にも配慮します。質問の意味が理解できない高次脳機能障害がある場合や、使用状況を思い出せない場合には介護者への補足質問を行う、また過大評価・過小評価のリスクも踏まえて他者から見た実際の使用状況とのすり合わせをするといった工夫が求められます。
 適切に実施すれば、MALは臨床場面で患者の主観と客観のギャップを埋める貴重な指標となり、リハビリプランの調整に役立てることができます。

まとめ

 今回のコラムではMALの臨床における使用範囲について解説しました。具体的な運用方法や、解釈の仕方を理解した上で、適切にMALを使用したいですね。もし、今回の内容をご覧になって、ご興味が沸かれた方は、是非、使ってみてください。次回は、MALの臨床における活用法についてまとめていきます。


参照文献

1. Lundquist, C. B., Nguyen, B. T., Hvidt, T. B., Stabel, H. H., Christensen, J. R., and Brunner, I. (2022). Changes in upper limb capacity and performance in the early and late subacute phase after stroke. J. Stroke Cerebrovasc. Dis. 31, 106590.

2. Taub, E. & Uswatte, G. (2000). Constraint-induced movement therapy and massed practice. Stroke, 31(4), 986-8.

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