ARAT2

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2025.10.13
リハデミー編集部
2025.10.13

 最近では、ARATを使用されるご施設も増えているかと思います。さて、今回はARATの解釈の部分に触れていただきたいと思います。それではよろしくお願いします。

Action Research Arm Test(ARAT)に関する解説(第2回目)-ARATの信頼性とは?-

1. ARATの信頼性について
 まず、最初に、信頼性とは、同じ評価者が異なるタイミング(対象者さんの手の状況は同一の場合)で評価をした際に、どの程度点数が一致するか、または異なる研究者が同じ対象者さんを評価した際に、どの程度点数が一致するか、を示す指標です。
 同じ対象者さんが一緒なのに、点数が異なっていたら、その数値の正確性が疑われますよね?信頼性はその疑いに対して、その評価がどの程度正確なのかを示す指標です。信頼性の低い評価を使っても、評価を行うたびに数値がばらついてしまい、その記録の信頼性は損なわれてしまいます。ですので、まず評価を使用する際には、その評価の信頼性はどのように考えられているかについて、研究の検索等を行い、調べるようにしましょう。当然、ARATに関しても信頼性に関わる研究はたくさんなされています。
 基本的にARATの得点は、これまでの研究で一貫して高い信頼性を示すことが確認されています。評価者内信頼性(同一評価者による反復評価)、評価者間信頼性(異なる評価者間の一致度)、および検者間・検査間の再テスト信頼性のいずれも優れています。例えば、Hsiehらの研究 (1998) では脳卒中患者に対するARATの評価者間の相関係数が0.99に達し、有意な一致が得られました(相関係数は1に近づくほど関係性が高いという解釈になります)[1]
 多施設共同研究であるPlatzら (2005) の報告でも、ARATを含む上肢機能テスト3種のICCが0.95を上回る極めて高い信頼性が示されています(ICCも1に近づくほど、関連性が高いことを示します)。また、再検査時の安定性も高く、同一検査者のARATのテスト−再テストの信頼性はICCで0.965~0.968、評価者間信頼性は0.996~0.998と報告されています[2]。
 内部一貫性(各項目が同一の構成概念を測定している度合い)についても、Cronbachのα係数が0.95以上という結果がいくつかの研究で得られており[3]、ARATの各項目は概ね同質の能力を反映していると考えられます。ただしα係数が過度に高いことは指標の冗長性も示し得るため、2022年のスペインにおける研究では「α=0.96と非常に高く、一部項目の重複を示唆する可能性がある」と指摘されています[4]
 信頼性の更なる向上を目的として、ARATの採点基準の標準化も近年進められています。Lyleの原著論文では各課題に対する順序尺度の2点にある「課題は完遂できるが異常に時間がかかるか大きな努力を要する」の明確な基準など細部が示されていなかったため、近年いくつかのグループが詳細な手順書を作成しています。
 代表的なものとして、Yozbatiranら (2008) がARATのマニュアルを提案し、曖昧だった採点基準を具体的に定義しました[5]。この標準化手順に基づく評価では、従来と同様に高い信頼性が確認されており[5]、他施設間における評価者ごとの評価数値のばらつきを抑える効果が期待されています。

まとめ

 今回は、ARATの信頼性について、解説をしました。信頼性は評価を選ぶ際に、必ず知っておきたい指標の一つです。毎度メモリの幅が変わる物差しで正確な長さが測れないように、不正確な尺度は臨床の中では使うことができないのです。これらを理解した上で、正確な評価の選び方を学びたいところです。


参照文献

1. Hsieh, Ching-Lin, et al. "Inter-rater reliability and validity of the action research arm test in stroke patients." Age and ageing 27.2 (1998): 107-113.

2. Platz, Thomas, et al. "Reliability and validity of arm function assessment with standardized guidelines for the Fugl-Meyer test, action research arm test and box and block test: a multicentre study." Clinical rehabilitation 19.4 (2005): 404-411.

3. Yozbatiran N,et al. “A standardized approach to performing the action research arm test.” Neurorehabilitation and Neural Repair 22. (2008):78-90

4. Fernández-Solana, Jessica, et al. "Psychometric Properties of the Action Research Arm Test (ARAT) Scale in Post-Stroke Patients—Spanish Population." International journal of environmental research and public health 19.22 (2022): 14918.

5. Yozbatiran, Nuray, Lucy Der-Yeghiaian, and Steven C. Cramer. "A standardized approach to performing the action research arm test." Neurorehabilitation and neural repair 22.1 (2008): 78-90.

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