ARAT3

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2025.10.20
リハデミー編集部
2025.10.20

 今回はARATの解釈法の中でも、妥当性について解説していただこうと思います。

Action Research Arm Test(ARAT)に関する解説(第3回目)-ARATの妥当性とは?-

1. ARATの妥当性について
 評価に関する代表的な妥当性には、「内容的妥当性」「構成概念妥当性」「基準関連妥当性」というものがあります。これらの妥当性は、この評価が本当に障がいを伴った手のパフォーマンスを評価することができているのか?ということを示しています。結論から言うと、ARATはこれらそれぞれの妥当性の観点からも脳卒中後の障がい側の上肢機能の評価指標としては、優れた特性を示していると言われています。以下のそれぞれについて解説をしていきます。
 内容妥当性については、ARATが上肢で扱う物体の大きさ・重さ・形状の多様性を評価し、巧緻動作から粗大な腕の動きまでカバーしていることから、日常生活動作に関連する上肢活動能力の主要側面を網羅していると評価されています[1]。実際、ARATの各下位尺度はICFにおける「活動制限」を測定するものと位置づけられており、リハビリテーション分野の専門家からも上肢機能評価のゴールドスタンダードの一つと見なされています。
 構成概念妥当性(他の関連指標との相関[関係性])に関して、ARATは上肢運動機能の障害度合いや日常生活活動(ADL)における自立度と強く相関することが多くの研究で示されています。上肢麻痺の重症度評価として広く用いられるFugl-Meyer Assessment (FMA) 上肢項目や、Motor Assessment Scale (MAS) 上肢項目と、同時に実施した際の関係性は高く、ARAT得点との相関係数が0.93~0.94程度に達するとの報告があります[2]。これらの結果から、ARATは障がい後の上肢運動機能を評価できていると解釈されています。
 また、上肢機能の他の評価法との関係では、ARATの総得点は、同じように障がい側上肢のパフォーマンスを評価するWolf Motor Function Test (WMFT)の遂行時間および機能スコア、日常生活における障がい側上肢使用量を自己記録するMotor Activity Log (MAL)、生活機能を患者が評価するQuality of lifeを評価するStroke Impact Scale (SIS)の各スコアと中程度から良好な相関を示すことが報告されています[2]。
 特にARAT得点が高いほどADL自立度や生活の質(QOL)が高い傾向が示されておりARATが実際の機能的アウトカムを反映している裏付けとなっています(例えばNamら (2019) はARAT課題中の上肢動作を慣性センサで解析し、それが日常ADL動作の成績と密接に関連することを示しました[3]。
 さらに、さらに、ARATは測定された機能状態から今後の回復レベルを予測する目的にも有用であるとされています。Van der Leeら (2001) の研究に基づき、初回評価時のARAT総点が57点であれば最終的な回復は良好、10~56点なら中等度、10点未満なら著しく不良である可能性が高いといった知見が報告されています[4]。
 最後に、基準関連妥当性として、ARATは上肢機能評価の「活動」領域の代表指標として広く認知されており、上述のように他評価法との比較で妥当であるだけでなく、専門家の合意する基準にも適合しています。国際的な提言では、ARATは脳卒中リハビリテーション研究のコアアウトカムの一つとして推奨されており、主要な臨床試験で頻用されるなど実績も十分です。例えば脳卒中回復とリハビリテーションに関する国際ラウンドテーブル (2017)でも、ARATは上肢機能の標準評価ツールとして位置づけられています。

まとめ

 今回は、ARATの妥当性について、解説をしました。評価を選ぶ際には、その評価が本当に、自分が知りたいものを測定できているのかを理解し、使う必要があります。学校で習ったから、この評価でいいか、といった使い方だけだとその評価を解釈する際に、不十分なことが多いです。こういった知識を持って、評価の取捨選択ができると良いかと思います。


参照文献

1. Platz, Thomas, et al. "Reliability and validity of arm function assessment with standardized guidelines for the Fugl-Meyer test, action research arm test and box and block test: a multicentre study." Clinical rehabilitation 19.4 (2005): 404-411.

2. Yozbatiran, Nuray, Lucy Der-Yeghiaian, and Steven C. Cramer. "A standardized approach to performing the action research arm test." Neurorehabilitation and neural repair 22.1 (2008): 78-90.

3. Fernández-Solana, Jessica, et al. "Psychometric Properties of the Action Research Arm Test (ARAT) Scale in Post-Stroke Patients—Spanish Population." International journal of environmental research and public health 19.22 (2022): 14918.

4. Van der Lee, Johanna H., et al. "The intra-and interrater reliability of the action research arm test: a practical test of upper extremity function in patients with stroke." Archives of physical medicine and rehabilitation 82.1 (2001): 14-19.

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