Mixed reality(MR)を利用した上肢機能練習の現状について(2)

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2023.01.13
リハデミー編集部
2023.01.13

<抄録>

 Mixed reality(MR)とは,仮想現実と有形物を組み合わせた複合現実感を有する空間であり,脳卒中後に上肢麻痺を有した対象者が一人で,モチベーションを維持しつつ反復的な自主練習を実施できるデバイスとして注目を集めている。MR空間を作る道具としては,ゴーグルタイプのものを始めとした様々な形態のものが試行されており,今後も広がりを見せていく予感がある.さて本コラムにおいては,これらMRデバイスを用いた脳卒中後に生じる上肢麻痺に対するリハビリテーションプログラムの現在と,今後どう言った開発の方向性が見られるかについて,2回のコラムを通じて論じてく.第2回は,MRデバイスにくわえ,Argument Reality(AR)を用いた探索的研究について,その結果について解説を行う.

1.Argument reality(AR)やMixed reality(MR)技術を用いた課題指向型アプローチの試行について

 先行研究において,Virtual reality(VR)やAR,MRを用いたリハビリテーションプログラムについて,多くのランダム化比較試験が実施されている.しかしながら,その大半はVRデバイスを用いたものであり,ARやMRと言ったデバイスを用いたリハビリテーションプログラムの開発は遅れているのが現状である.さて,それらの研究について,VR,AR,MRに関する研究をまとめてシステマティックレビューおよびメタアナリシスを実施している研究を紐解いていく.

 Leongらのシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは, 5011本の論文からシステマティックレビューの手続きの中で,45本の論文まで絞り込みがなされている.これらの論文に含まれるほとんどの論文がVRを用いた研究であり,ARおよびMRを用いた研究はほんの一部であった.さて,メタアナリシスの結果であるが,VR,AR,MRを用いたリハビリテーションは,従来のリハビリテーションに比べて,Fugl-Meyer Assessment(FMA)の上肢項目によって示される麻痺の程度の回復において,有意な改善を示すことが明らかにされている.一方,Box and Block Test(BBT)やWolf Motor Function Test(WMFT)で示されるパフォーマンスレベルの回復においては,VR,AR,MRを用いたリハビリテーションは,従来のリハビリテーションに比べて,両評価ともに有意な改善を認めないことが示されている.さらに,この研究においては,サブアナリシスも実施されている.例えば,

FMAの上肢項目に関しては,慢性期に関しては,VR,AR,MRを用いたリハビリテーションは対照群に比べ有意な改善を示しているものの,急性期および亜急性期に関しては,VR,AR,MRを用いたリハビリテーションは双方ともに対照群に比べて,有意な改善を示していないといった結果を示している.BBTおよびWMFTを用いば分析については,慢性期においては,VR,AR,MRを用いたリハビリテーションは対照群に比べ有意な改善を示しているが,亜急性期においては,VR,AR,MRを用いたリハビリテーションは対照群に比べ有意な改善を示すことができなかった.一方,急性期においては,逆に従来のリハビリテーションを用いた対照群の方が,VR,AR,MRを用いたリハビリテーションよりも有意な改善を示していた.

 上記のシステマティックレビューに組み入れられていた研究はほとんどがVRデバイスを用いたリハビリテーションプログラムであった.一方,MRデバイスを用いた研究についても,探索的な研究が実施されている.例えば,Hamらの研究では,MRを用いた上肢,手指を対象としたリハビリテーション用のボード(MR-board)を用いて,脳卒中後に上肢麻痺を有した対象者に対して,ケースシリーズデザインによる単一群前後比較研究を実施している.この研究では,MR-boardを用いた30分程度のトレーニングを5回実施している.MR-boardは手の動きをセンサー等で感知し,モニター上にオブジェクトを投影し,それらを麻痺手で触るような動作を反復して実施することを目的としたデバイスである.これらを10名の脳卒中後上肢麻痺を有した対象者に実施し,BBT(22.9±12.9から25.8±13.0)とWMFTのショルダーストレングス(12.7±6.1から14.0±5.6)の有意な改善を認めたと報告している.しかしながら,双方のアウトカムの臨床上意味のある最小変化量を超える変化は認めておらず,この変化が効果といって良いかは,判断が難しいところであると思われた.

まとめ

 今回,2回のコラムに渡り, MRを利用した上肢機能練習の現状について考えた.多くの研究にて,VRをはじめとした脳卒中後の上肢麻痺に対するリハビリテーションプログラムは発展しているものの,ARそしてMRについてはまだまだ開発の余地があることが理解できた.今後も最新の情報をピックアップしていきたいと思う.


参照文献

1. Leong SC, et al. Examining the effectiveness of virtual, augmented, and mixed reality (VAMR) therapy for upper limb recovery and activities of daily living in stroke patients: a systematic review and meta-analysis. J Neuroeng Rehabil 19: 93, 2022

2. Ham Y, et al. The feasibility of mixed reality-based upper extremity self-training for patients with stroke-A pilot stidy. Front Neurol 13: 994586, 2022

前の記事

脳卒中後に生じる上肢...

次の記事

Mixed reality(MR)...

Top