リハキャリ2024 講義の感想と解説(7)

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2025.07.11
リハデミー編集部
2025.07.11

 さて、前回は講義3 西大和リハビリテーション病院の原先生の「回復期リハ病棟における上肢機能アプローチ」と、講義4 伊丹恒生脳神経外科病院の梶本先生の「前頭葉機能のみかた」について感想を述べさせていただきました。

 今回は、Day3 講座5 四條畷大学の花田先生による『道具使用障害の理解と対応』、さらに株式会社デジリハの大松先生による『半側空間無視の実践的な知識の整理』について感想を述べていきますッ!

お二人とも日本を代表する高次脳機能障害に関する専門家ですので、是非是非多くの方に聴いてほしいですッ!!

『道具使用障害の理解と対応』

四條畷大学の花田恵介先生


 この講義では、花田先生が一般的に言われている「失行」という言葉をタイトルに入れない理由からお話が始まります。その後、患者さんが道具を使えない理由について、お話が深まっていきます。

 さて、この失行という言葉を使わない理由について、失語を例に説明をされています。例えば、失語と一言に言ってもその現象は、発語失行/失構音、文生産障害、音韻性錯語、単語理解障害、語音弁別障害、換語障害、言語性把持力低下等、様々な現象が、「失語」という言葉には含まれています。

 つまり、病態が異なれば、関わり方も介入の仕方もそれぞれ異なるということです。失行も同様で、いろいろな症候があると花田先生はおっしゃいます。だからこそ、失行と一括りにせず、その現象について、学び、対応してもらいたいというメッセージを込めて、その言葉をタイトルには使用しないようにしているそうです。さて、ここから失行症全般のお話に入っていきます。失行のリハビリテーションのエビデンスについて、米国心臓/脳卒中学会のガイドライン、脳卒中ガイドラインの内容に触れておられます。具体的には、米国心臓/脳卒中学会の治療ガイドラインでは、失行に対して、手続き練習およびジェスチャーの練習について、効果の確かさはレベルB、課題そのものを用いた課題指向型練習の実施については、レベルCとされています。脳卒中学会の治療ガイドラインでは失行に対し、現実に即した、目標とする動作そのものの訓練や障害の代償方法を習得する訓練が勧められる(グレードB)とされているそうです。これらを鑑み、失行リハビリテーションの有用性を示した報告は非常に少なく、長期効果についてはさらに少ないとされています。

 ここから、失行のリハビリテーションについて、介入のためのモデルの提示、さらには、道具を使用する際の脳のネットワークにおけるメカニズムについて金づちを例に挙げ、説明くださっています。この辺りの知識は、環境と道具をリハビリテーションの場面に頻繁に利用する作業療法士は必ず知っておいて良い内容だと感じました。また、ここからは、失行症そのものを「どのように分けて考えるか」について、かなり具体的に内容を提示していただいています。ここは本当に必見だと思いますので、上下のリンクから、すぐにでも登録して、講義をご覧いただきたいと思ってます。いやぁ、本当に知らないことばかりで、勉強になりました。

『半側空間無視の実践的な知識の整理』

株式会社デジリハの大松聡子先生



 こちらの講義の概要では、半側空間無視の病態、生活上の評価とリハビリテーションに繋げるための評価、半側空間無視の構成要素、介入手段、さらには、介入の際にキーとなる病識・セルフアウェアネスについてご講義をいただきました。

まず、半側空間無視の病態として、背側注意ネットワークによる能動、内発的注意と腹側注意ネットワークによる受動・外発的注意の観点から、解説をくださいました。次に、これらの病態を明らかにするためにCatherine Bergego ScaleやKF-NAPといった日常生活上の評価や身体空間に対するBisashテストについてご紹介頂いたのち、そこから見える半側空間無視の種別について、丁寧に解説いただきました。この辺りに関しては、単に評価を行うだけでなく、それぞれの評価が病態を分類するためにどのような特徴をもち、どのような意識を持って実施すべきかを丁寧に教えていただきました。

 その後、病態解釈から半側空間無視の構成要素をいただき、それぞれの構成要素に対するアプローチについて、一般的な介入を提示いただきました。ただし、その中でも、半側空間無視に対する病識低下の特徴、そして、それらに伴う半側空間無視の回復過程における代償手段に関して、ご自身達のグループの研究成果を使って、論理的かつ科学的に解説をいただきました。さらに、病識と近い概念であるセルフアウェアネスに関しても言及されています。

講義全体に基礎的な研究から臨床における実現症に繋げるまでの思考や考察について、かなり詳細に解説をいただいています。とても興味深いお話でしたので、オンデマンドで何回も見直して、勉強しました。本当、知らないことがたくさんあって、多くの若手の方に聴いてもらいたい講義でした。

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 今回は、Day3 講座5 四條畷大学の花田先生による『道具使用障害の理解と対応』、さらに株式会社デジリハの大松先生による『半側空間無視の実践的な知識の整理』について感想を述べさせていただきました。高次脳機能は学生さんや新人さんにとっては難しく感じてしまう領域だと思います。

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