脳卒中患者のADLに影響を与えうる予後予測因子について(2)〜国際生活分類における活動・参加・環境因子について〜
<抄録>
脳卒中患者のADLに関する予後予測は,急性期および回復期においては非常に重要な知識となる.本コラムにおいては,国際生活分類における活動・参加,環境因子において,脳卒中発症から3ヶ月後のADLの予後を予測するための因子に関して,解説を行う.
1.脳卒中患者のADLの予後に影響を与えうる因子について
2011年にVeerbeekらは,脳卒中患者のADLに関する予後を予測したコホート研究を取り上げ,システマティックレビューを行った.これらの研究結果から,脳卒中発症後3ヶ月後のADLに関する予後について,影響を与えうる発症直後の因子を明らかにしている.
彼らは,8425の論文から最終的に48遍の研究に絞り込んだ上で,システマティックレビューを実施した.この作業の中で,48編のエビデンスの内容から,3ヶ月後の脳卒中患者のADLの予後に影響を与える因子について,それぞれ4段階(Ⅰ. 強い証拠:バイアスのリスクが低い複数(≥2)の研究において,一貫した所見が得られている.II. 中程度の証拠:バイアスのリスクが低い1件の研究およびバイアスのリスクが高い1件以上の研究において,一貫した所見が得られている.III. 限定的な証拠:バイアスリスクの低い研究1件のみで示された所見。IV. 証拠が不十分または存在しない:バイアスのリスクが高い複数の研究で一貫した所見が得られている,複数の研究で所見が一貫しなかった,1つの研究内で所見が一貫しなかった,または有意な結果が何も存在しない場合)にわけ,それらについて検討を行なった.これらの因子は,国際生活機能分類(ICF: International Classification of functioning, disability and health)に沿って分けられ,それぞれについてエビデンスレベル(上記)が振り分けられている.ICFにおける活動・参加に関しては,表1に,環境因子については表2にまとめる.
活動・参加,環境因子に関しては,特に歩行機能の中でも,独歩が可能かどうかは,ADLの自立度について,大きな予測因子となることがわかる.逆に,環境因子については,専門医による治療の有無や,脳卒中発症からの期間や,リハビリテーションまでの期間といった積極的治療機関における環境がもたらす影響についても,ADLを予測しうる因子ではなかったと報告されている.
さらに,退院後の家族環境や近隣環境の良好さについても,ADLの予測因子としては機能していない.これらの結果と前回の『脳卒中患者のADLに影響を与えうる予後予測因子について(1)』を合わせて鑑みても,活動・参加,環境因子よりも,身体機能・構造といった要因がADLの予測因子として機能していることがわかる.