カナダにおける脳卒中関連のリハビリテーションに関する最新のエビデンスをチェックする -リハビリテーションアセスメントについて-(1)ガイドラインにおける推奨度について

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2023.05.10
リハデミー編集部
2023.05.10

<抄録>

 カナダの医療制度は,世界的にも珍しい皆保険に近い制度をとっており,本邦における公的保険下でのリハビリテーションを取り巻く環境に似ている.従って,背景環境の似ているカナダにおけるエビデンスは,本邦においても利用可能性が高いと考えている.さて,リハビリテーションを進める上で,効果検証や対象者の現状の状況を他職種や家族等に伝えるために,定期的に対象者に対してリハビリテーションに関するアセスメントを実施する必要がある.特に,入院中におけるリハビリテーションにおいては,その後,在宅や施設に対象者が帰ることで,環境が激変することもあり,アセスメントの重要性はさらに高まると考えられている.本コラムにおいては,脳卒中を発症後に入院環境で実施する最初のアセスメントについて,Canadian Stroke Best practice 2019より抜粋して,解説を行なっていく.第一回はガイドラインにおける推奨度(早期アセスメントの重要性,初期アセスメントまでの期間)について解説を行なっていく.

1.Canadian Stroke Best Practiceの初期アセスメントに関するガイドラインにおける推奨度について

1)早期アセスメントの重要性に関するエビデンス

 脳卒中発症後,急性期の対象者の多くは急性期病院へと搬送される.そこでは,CTやMRI,血液検査,医師による診断といった医学的な手続きの他に,対象者の脳卒中による後遺症の重症度と早期リハビリテーションの実施可能性を判断するための評価がなされる.急性期で入院してきた全ての対象者は,当日,少なくとも翌日にはこれらの初期アセスメントを受けることが推奨されている(エビデンスレベルA).これは,本邦においても,これに関しては非常に重要視されており,これには他職種が関わることも推奨されている.

 さて,初期アセスメントはどういった職種によって実施されることが望ましのであろうか.このガイドラインでは,脳卒中発症後の初期アセスメントに関わるリハビリテーションの専門家チームには,リハビリテーション医師,脳卒中リハビリテーションの専門家もしくはコアトレーニングを受けた他科の医師,作業療法士,理学療法士,言語聴覚士,看護師,ソーシャルワーカー,栄養士を含めるべきであると推奨している(エビデンスレベルA).さらに,医療従事者以外のメンバーとしては対象者自身,そして彼らの家族もこれらのコアチームの一員として含むことが望ましいとも述べられている(エビデンスレベルC).その他のリハビリテーションチームに所属しても良いと考えられている職種としては,レクレーションセラピスト,心理学者,職業教育関連専門家,教育関連専門家,運動指導士,リハビリテーション療法助手,薬剤師等も挙げられている(エビデンスレベルC).

 しかしながら,上記の専門の資格を持っているだけでは十分ではなく,それぞれが脳卒中リハビリテーションに関する専門のトレーニングを受けるべきであると述べられている(エビデンスレベルA).この専門的なトレーニングで特に言及されているのが,脳卒中リハビリテーションに関わる専門家のメンバーは,失語症(その他のコミュニケーションに関わる高次脳機能障害も含む)を代表としたコミュニケーションに制限のある対象者とできるだけストレスなく対話できるように,疾患特異的なサポート付きの会話も可能とするよう訓練を受けるべきとも述べられている(エビデンスレベルB).


2)初期アセスメントを実施する期間について

 脳卒中発症後,可及的早急に初期アセスメントを実施すべきと多くの研究の中で述べられている.Canadian Stroke Best Practiceにおいてもここについては同様の意見を支持している.例えば,初期スクリーニングおよびアセスメントは,理想的には対象者と直接接触する作業療法士,理学療法士,言語聴覚士等のリハビリテーション専門家によって実施されるべきであり,可能であるならば入院後48時間以内に開始されるべきであるとされている(エビデンスレベルC).また・初期評価には,対象者の疾患,身体状況,医学的リスク,身体的機能,活動,参加といったリハビリテーションに関わるアセスメントを含むべきであると述べられている(エビデンスレベルC).リハビリテーションの初期評価において,予後予測や今後の転期(退院後の動向)に関する問題を考慮することは重要であり,妥当であるとも述べられている(エビデンスレベルC)

まとめ

 今回は急性期リハビリテーションにおける初期アセスメントのエビデンスについて,推奨度に関する解説を行なった.日本のガイドラインよりも,かなり詳細に記載されており,非常に参考になるものも多い.また,次回も同様に推奨度に関する解説を続けていく.


参照文献

1. Canadian stroke best practice. 1. Initial Stroke Rehabilitation assessment. https://www.strokebestpractices.ca/recommendations/stroke-rehabilitation/initial-stroke-rehabilitation-assessment

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