カナダにおける脳卒中関連のリハビリテーションに関する最新のエビデンスをチェックする -リハビリテーションアセスメントについて-(2)ガイドラインにおける推奨度について

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2023.05.12
リハデミー編集部
2023.05.12

<抄録>

 カナダの医療制度は,世界的にも珍しい皆保険に近い制度をとっており,本邦における公的保険下でのリハビリテーションを取り巻く環境に似ている.従って,背景環境の似ているカナダにおけるエビデンスは,本邦においても利用可能性が高いと考えている.さて,リハビリテーションを進める上で,効果検証や対象者の現状の状況を他職種や家族等に伝えるために,定期的に対象者に対してリハビリテーションに関するアセスメントを実施する必要がある.特に,入院中におけるリハビリテーションにおいては,その後,在宅や施設に対象者が帰ることで,環境が激変することもあり,アセスメントの重要性はさらに高まると考えられている.本コラムにおいては,脳卒中を発症後に入院環境で実施する最初のアセスメントについて,Canadian Stroke Best practice 2019より抜粋して,解説を行なっていく.第二回はガイドラインにおける推奨度(アセスメントの対象,定期アセスメントの重要性,TIAに関する扱い等)について解説を行なっていく.

1.Canadian Stroke Best Practiceの初期アセスメントに関するガイドラインにおける推奨度について

1)初期アセスメントで実施するアセスメントの対象(種類)について

 脳卒中発症後の初期アセスメントにおいては,様々なアウトカムを用いることが予測される.基本的には世界障害分類などのカテゴリに対応しつつ,様々なアウトカムを用いながらアセスメントを進める必要がある.Canada Stroke Best Practice 2019においても,その点は同様の推奨がなされている.例えば,疾患・障害,機能的活動制限,役割および社会参加の制限,環境要因に対して,標準化された有効なアセスメントツール(具体的なアセスメントツールに関しては,カナダにおける脳卒中関連のリハビリテーションに関する最新のエビデンスをチェックする -リハビリテーションアセスメントについて-(3)ガイドラインにおける推奨度について,にて記載する予定)を満遍なく使用することが望ましいと述べられている(エビデンスレベルB).さらに,それらのアセスメントツールは,すべての対象者に同様のアセスメントツールを使うわけではなく,個別性や病態に応じてそれらの組み合わせを変化させることも重要とされている(エビデンスレベルB).


2)定期的なアセスメントの重要性について

 定期的なアセスメントは非常に重要であると述べられている.初期アセスメントにて,リハビリテーションの適応を満たさなかった場合も,時が進むにつれ,対象となりうる可能性がある.また,リハビリテーションの適応が確認された対象者であったとしても,彼らの経過を追うことは非常に重要な情報となり得るからだとされている.さて,例えば,一度目の初期アセスメントにおいて,リハビリテーションの適応を満たさなかった場合,Canadian Stroke Best Practice 2019では,最初の1ヶ月は毎週,その後は健康状態によって可能な間隔で,リハビリテーションの必要性および適応について,再度アセスメントを行うことを推奨している(エビデンスレベルC).


3)一過性脳虚血発作(TIA)の取り扱いについて

 急性脳卒中で身体症状が持続的に残存する対象者については,入院加療し,確実に治療を受けることができる.しかしながら,TIAの場合,身体症状が一過性で軽快し,入院に至らないケースがいくつか存在する.そういった場合,入院することができなかった,または入院していない対象者は,脳卒中発症による障害の範囲と潜在的なリハビリテーションの必要性を判断するために,地域のクリニックやしかるべき施設において,包括的なリハビリテーションアセスメントおよびスクリーニングを受ける必要性があると考えられている(エビデンスレベルC).

 リハビリテーションアセスメントの中では,安全性(認知,運転適正),嚥下,コミュニケーション,移動の評価を含む評価は,対象者が自宅に帰宅する前にリハビリテーション専門知識を持つ臨床医(および療法士)によって実施されるべきとされている(エビデンスレベルC).さらに,TIA後の二次的なうつ病の発生,認知機能や身体機能的な活動制限,役割や社会参加の制限,環境要因,修正可能な脳卒中に起因する危険因子(生活習慣等)の存在については,自宅帰宅後2週間以内に再検査されるべきであるともしている(エビデンスレベルC).


4)リハビリテーションの必要性があった場合の転機について

 初期アセスメントにおいて,リハビリテーションの必要性が示された場合,標準化されたリハビリテーション施設におけるリハビリテーションが望ましいとされている(エビデンスレベルC).従って,速やかに紹介等すべきとなっている.

まとめ

 今回は急性期リハビリテーションにおける初期アセスメントのエビデンスについて,推奨度に関する解説を行なった.また,次回は文中にも記載したように,脳卒中後にアセスメントを実施する際に,推奨されているアセスメントツールについて,解説を行なっていく.


参照文献

1. Canadian stroke best practice. 1. Initial Stroke Rehabilitation assessment. https://www.strokebestpractices.ca/recommendations/stroke-rehabilitation/initial-stroke-rehabilitation-assessment

前の記事

カナダにおける脳卒中...

次の記事

カナダにおける脳卒中...

Top