カナダにおける脳卒中関連のリハビリテーションに関する最新のエビデンスをチェックする -リハビリテーションアセスメントについて-(3)ガイドラインにおける推奨されているアウトカムについて

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2023.05.15
リハデミー編集部
2023.05.15

<抄録>

 カナダの医療制度は,世界的にも珍しい皆保険に近い制度をとっており,本邦における公的保険下でのリハビリテーションを取り巻く環境に似ている.従って,背景環境の似ているカナダにおけるエビデンスは,本邦においても利用可能性が高いと考えている.さて,リハビリテーションを進める上で,効果検証や対象者の現状の状況を他職種や家族等に伝えるために,定期的に対象者に対してリハビリテーションに関するアセスメントを実施する必要がある.特に,入院中におけるリハビリテーションにおいては,その後,在宅や施設に対象者が帰ることで,環境が激変することもあり,アセスメントの重要性はさらに高まると考えられている.本コラムにおいては,脳卒中を発症後に入院環境で実施する最初のアセスメントについて,Canadian Stroke Best practice 2019より抜粋して,解説を行なっていく.第 三回はガイドラインにおける使用を推奨されているアウトカム(Functional Capacity and activities of daily livingのFunctional Independence Measure(FIM®︎)とAlpha FIM®︎ Instrument)について解説を行っていく。

1.推奨されているアウトカム(Functional Capacity and activities of daily living)

 脳卒中後のリハビリテーションの代表的な評価指標の一つとして,日常生活活動における介助量があげられる。本邦における回復期リハビリテーション病棟における指標の一つとしても利用されており,世界中でも広く使用されているアセスメントの一つである.ただし,同じ日常生活活動における介助量を測定するにしても,世界中には多種多様な評価が存在する.今回は世界的にも有名な活動レベルの尺度であるFunctional Independence Measure(FIM®︎)とAlpha FIM®︎ Instrumentについて紹介していく.


1)Functional Independence Measure(FIM®︎)1

 FIM®︎は身体障害と認知障害の双方を評価するための代表的なアセスメントツールであり,対象者における介護負担量を測定することを目的に設計されたものである.FIM®︎は18項目のアセスメントからなるアウトカムである.セルフケア全般,括約筋コントロール(排泄コントロール),機動性,移動能力の障害,コミュニケーション,社会認知機能の6つの領域,18項目,8件法,126点で構成されている.スコアが高いほど,機能的自立度が高いことを示している.また,運動項目91点,認知項目35点満点で解釈度も測定することができる.所要時間は,15分から30分程度である.FIM®︎は先の臨床研究において,妥当性,信頼性が担保されている2.ただし,アセスメントには自由に使えるものの,使用するには専門的なトレーニングが必要とされている(日本でもFIM®︎に関する講習会は頻繁に行われている).


2)Alpha FIM®︎ Instrument3

 Alpha FMA®︎ Instrumentは急性期医療に対応したアセスメントツールである.このアセスメントツールは,運動機能(食事,身だしなみ,排便管理,トイレ移動)と認知機能(表情,記憶)を評価することができる6項目から成り立っている.したがって,従来のFIM®︎に比べると急性期といった制限のあるシチュエーションにおいて,利用可能なツールであると言える.また,身体的な変化が著しい急性期といった側面にも配慮されており,評価過程の中でも150フィート以上自立歩行が可能となった対象者においては,食事と身だしなみの項目は,歩行とベッド移動を評価する項目に置き換えられるといった工夫がなされている.スコアの解釈については,オンラインにおいてLoら4が開発したアルゴリズムを使用することができ,予測FIM®︎のスコアや対象者ごとに推定される介護時間の値が算出されるとされている.また,実施所要時間は約5分となっている.本邦ではあまり導入されていないアセスメントツールであり,今後の導入,発展が楽しみな評価である.

まとめ

 今回はCanadian Stroke Best Practiceが推奨しているアセスメントツールに関する紹介を行った.特に,日本でも著名なFIM®︎,と急性期に特化したFIM®︎であるAlpha FIM®︎ Instrumentについて紹介した.特に後者の評価は日本では普及しておらず,今後期待ができるものと思われた.次回,カナダにおける脳卒中関連のリハビリテーションに関する最新のエビデンスをチェックする -リハビリテーションアセスメントについて-(4)ガイドラインにおける推奨度について,では,Modified Rankin Scale,Barthel Index,Modified Barthel Index等について触れていく.


参照文献

1. Keith RA, Granger CV, Hamilton BB. The functional independence measure: A new tool for rehabilitation. Advances in clinical rehabilitation. 1987:6-18. 

2. Salter K, Jutai J, Zettler L, Moses M, McClure JA, Mays R, Foley N, Teasell R. Chapter 21. Outcome measures in stroke rehabilitation. In The Evidence Based Review of Stroke Rehabilitation (15th edition). www.ebrsr.com/uploads/chapter-21- outcome-assessment-SREBR-15_.pdf. Updated August 2012. 

3. Stillman G, Granger C, Niewczyk P. Projecting function of stroke patients in rehabilitation using the AlphaFIM instrument in acute care. PM&R. 2009 Mar;1(3):234-9. 

4. Lo A, Tahair N, Sharp S, Bayley MT. Clinical utility of the AlphaFIM®︎ instrument in stroke rehabilitation. Int J Stroke 2012 Feb;7:118-24

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