カナダにおける脳卒中関連のリハビリテーションに関する最新のエビデンスをチェックする -リハビリテーションアセスメントについて-(4)ガイドラインにおける推奨されているアウトカムについて

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2023.05.17
リハデミー編集部
2023.05.17

<抄録>

 カナダの医療制度は,世界的にも珍しい皆保険に近い制度をとっており,本邦における公的保険下でのリハビリテーションを取り巻く環境に似ている.従って,背景環境の似ているカナダにおけるエビデンスは,本邦においても利用可能性が高いと考えている.さて,リハビリテーションを進める上で,効果検証や対象者の現状の状況を他職種や家族等に伝えるために,定期的に対象者に対してリハビリテーションに関するアセスメントを実施する必要がある.特に,入院中におけるリハビリテーションにおいては,その後,在宅や施設に対象者が帰ることで,環境が激変することもあり,アセスメントの重要性はさらに高まると考えられている.本コラムにおいては,脳卒中を発症後に入院環境で実施する最初のアセスメントについて,Canadian Stroke Best practice 2019より抜粋して,解説を行なっていく.第 三回はガイドラインにおける使用を推奨されているアウトカム(Functional Capacity and activities of daily livingのModified Rankin scale,Barthel index, modified Barthel index)について解説を行っていく。

1.推奨されているアウトカム(Functional Capacity and activities of daily living)

 Functional Capacity and activity of daily livingに関するアセスメントツールでもmodified Rankin Scale(mRS)やBarthel index(BI)およびmodified BIについては,FIM®︎に次ぐアセスメントツールと言っても過言ではない.特に,mRSに関しては,療法士界隈でも盛んに使われているツールだが,それ以上に医師の臨床や研究で使われているツールである.今回はこれらについて,個別に紹介していく.


1)modified Rankin Scale(mRS)1

 mRSは,世界的な対象者の介助量を計るアウトカムであり,最も簡便に測定することができる手軽なアセスメントツールの一つである.そういった利点もあり,忙しい臨床を過ごす救急医をはじめとした臨床医に多く愛用されている.mRSは,脳卒中発症後の日常生活活動がどの程度実施できるかを測定する評価で,脳卒中発症前と同様の行動が実施できた場合は0点で,重度な日常生活活動の障害を有する場合に5点を示すと言われている.課題遂行能力に対する観察評価ではなく,現状を包括的に評価するアセスメントツールである.実施方法は,聴き取りにて5〜15分で終了すると言われている.ただし,簡便に評価できるといった利点がある反面,6件法で全ての日常生活活動の現状を指し示すため,このアセスメントツールだけでは個別性や背景因子を知ることができず不十分であると言った批判も一部にある2.ただし,非常にシンプルな評価設計であるため,このアセスメントツールを使用するにあたり,特別なトレーニング等は必要ないと言われている.


2)Barthel Index(BI)

 Barthel Indexも世界的に広く使われている日常生活活動に関するアセスメントツールである.本邦においては,回復期リハビリテーション病棟の評価指標としてFIM®︎が導入されたこともあり,最近では,使用頻度自体は下火になりつつあるものの,著名な日常生活活動に対するアセスメントツールの一つである.BIは8つのセルフケアと2つの移動関連動作の自立度を評価するアセスメントツールである.つまり,FIM®︎が介助量(やっている日常生活活動)を評価することに対して,BIはできる日常生活活動を評価するものである.BIのスコアは100点満点で示され,点数が高いほど機能的自立度が高いことを示している.なお,FIM®︎に比べると項目数とそれぞれの項目における順序尺度の件数が少ないことから,臨床において,対象者からの直接申告であれば5分以内,観察評価であれば15〜20分程度評価に時間を要するとされている.ただし,BIの持つ欠点としては,比較的反応性が悪く,天井または床効果といった問題を有する可能性が指摘されてる3.


3)Modified Barthel Index(mBI)

 BIとmBIの内容は基本的には同様とされている.その中でmBIにおける変更点としては,採点基準が挙げられる.1項目は,0-1点,0-2点,0-3点と採点されており,合計点は0-20点と設計されている.BIとmBIは優れた内部一貫性,検査者間・内信頼性,を有することが報告されている.

2.まとめ

 今回はCanadian Stroke Best Practiceが推奨しているアセスメントツールに関する紹介を行った.特に,医師によく使われているmRS,日常生活活動の指標であるBIやmBIについて紹介した.次回,カナダにおける脳卒中関連のリハビリテーションに関する最新のエビデンスをチェックする -リハビリテーションアセスメントについて-(4)ガイドラインにおける推奨度について,では,Frenchay Activities Index, 6分間歩行テスト,10m歩行テスト等について触れていく.


参照文献

1. Rankin J. “Cerebral vascular accidents in patients over the age of 60.” Scott Med J 1957;2:200-15. 

2. Wilson B, Cockburn J, Halligan P. Development of a behavioral test of visuospatial neglect. Arch.Phys.Med.Rehabil. 1987;68:98-102. 

3. Duncan PW, Samsa G, Weinberger M, et al. Health status of individuals with mild stroke. Stroke 1997;28:740-745.

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