カナダにおける脳卒中関連のリハビリテーションに関する最新のエビデンスをチェックする -リハビリテーションアセスメントについて-(5)ガイドラインにおける推奨されているアウトカムについて

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2023.05.19
リハデミー編集部
2023.05.19

<抄録>

 カナダの医療制度は,世界的にも珍しい皆保険に近い制度をとっており,本邦における公的保険下でのリハビリテーションを取り巻く環境に似ている.従って,背景環境の似ているカナダにおけるエビデンスは,本邦においても利用可能性が高いと考えている.さて,リハビリテーションを進める上で,効果検証や対象者の現状の状況を他職種や家族等に伝えるために,定期的に対象者に対してリハビリテーションに関するアセスメントを実施する必要がある.特に,入院中におけるリハビリテーションにおいては,その後,在宅や施設に対象者が帰ることで,環境が激変することもあり,アセスメントの重要性はさらに高まると考えられている.本コラムにおいては,脳卒中を発症後に入院環境で実施する最初のアセスメントについて,Canadian Stroke Best practice 2019より抜粋して,解説を行なっていく.第 三回はガイドラインにおける使用を推奨されているアウトカム(Frenchay activities index, 6分間歩行,10m歩行テスト)について解説を行っていく。

1.推奨されているアウトカム(Functional Capacity and activities of daily living)

 脳卒中後のリハビリテーションの代表的な評価指標の一つとして,応用的日常生活活動および歩行の 評価がある.先のコラムにおいて解説した日常生活活動のさらに上にある概念のため,より社会参加的な要素が含まれる評価となる.また,6分間歩行や10m歩行テスト等は,特に理学療法士が使用することが多く,作業療法士にとっては馴染みの薄い評価であるかもしれない.本コラムにおいては,Frenchay activities index, 6分間歩行,10m歩行テストについて解説を行なっていく.


1)Frenchay activities index(FIA)1

 Frenchay activities index(FIA)は,活動の差の先にある応用的日常生活活動,いわゆる社会参加の部分を評価することができる比較的珍しいアセスメントツールである.家事,余暇・仕事,野外活動の3つの領域における下位尺度15項目からなるアセスメントツールである.スコアは15点〜60点で構成されており,得点が低いほど活動頻度が低いことを示す.下位項目の内容としては,食事の用意,食事の片付け,洗濯,掃除や整頓,力仕事,買い物,外出,屋外歩行,趣味,交通手段の利用,旅行,庭仕事,家や車の手入れ,読書,勤労と家庭外の活動がほとんどを占めている.FIAは上記で示したように,Functional Independence Measure(FIM®︎)やBarthel Indexよりもより高次な社会活動をターゲットにしており,お互いを補い合う関係にあると考えられている2.しかしながら,評価する項目に偏りがあることも事実であり1,3,年齢や性別により影響を受けることも示唆されている.アセスメントを行う際には,特に特別なトレーニングは必要ないとされている.


2)6分間歩行テスト

 理学療法士以外の職種には馴染みの少ない歩行評価であるが,Canadian Stroke Best Practiceにおいて推奨されている6分間歩行テストと10m歩行テストの2つについては知っていても問題ないと思われる.6分間歩行テストは,歩行機能と耐久性について評価できるアセスメントツールである.このアセスメントツールは非常にシンプルに設計されている.6分間に対象者がどれだけの距離を歩いたかを測定し,記載するのみで評価が完遂できる.実施に要する時間は,評価名の通り,6分間で終了できる.なお,年齢,身長(脚長),体重,性別が結果に影響を与える可能性がある因子として挙げられており,結果の解釈にはそれらを考慮する必要がある.また,アセスメント実施中の励ましも結果に強い影響を与えると考えられている.このアセスメントツールを使用する際には,公表されている標準化がなされたプロトコル4を参考に実施すべきと言われている.また,このアセスメントツールが最も適している対象者としては,中等度から重度の機能障害を有する対象者と考えられている.


3)10m歩行検査

 6分間歩行と並び,理学療法士以外の職種の職種には馴染みのない評価だが,この評価も全職種が知っておくべき評価と思われる.この評価の設計もシンプルで,10mを歩いた際の時間を測定し,記録するアセスメントツールである.加速と減速のために2mずつ必要になるので14mの歩行路が必要である.実際の実施方法はマニュアルが存在するため,それらを参考に実施することが望ましい.

まとめ

 今回はCanadian Stroke Best Practiceが推奨している社会参加,歩行に関するアセスメントツールに関する紹介を行った.次回は,Life Habits,Canadian Occupational Performance Measure,ABILHAND,Functional autonomy measurement systemについて解説を行う.


参照文献

1. Holbrook M, Skilbeck CE. An activities index for use with stroke patients. Age and Ageing 1983;12(2):166-170. 

2. Pedersen PM, Jorgensen HA, Nakayama H, Raaschou HO, Olsen TS. Comprehensive assessment of activities of daily living in stroke. The Copenhagen Stroke Study. Arch Phys Med Rehabil 1997;78:161-165. 

3. Appelros P. Characteristics of the Frenchay Activities Index one year after a stroke: a population-based study. DisabilRehabil 2007;29:785-790. 

4. Holland AE, Spruit MA, Troosters T, Puhan MA, Pepin V, Saey D, McCormack MC, Carlin BW, Sciurba FC, Pitta F, Wanger J, MacIntyre N, Kaminsky DA, Culver BH, Revill SM, Hernandes NA, Andrianopoulos V, Camillo CA, Mitchell KE, Lee AL, Hill CJ, Singh SJ. An offician European Respiratory Soceity/American Thoracic Society technical standard: field walking tests in chronic respiratory disease. Eur Respir 2014; 44: 1428-46. 

5. Sullivan JE, Crowner BE, Kluding PM, Nichols D, Rose DK, Yoshida R, Pinto ZG. Outcome measures for individuals with stroke: process and recommendations from the American Physical Therapy Association neurology section task force. Phys Ther 2013; 93(10): 1383-96.

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