カナダにおける脳卒中関連のリハビリテーションに関する最新のエビデンスをチェックする -リハビリテーションアセスメントについて-(6)ガイドラインにおける推奨されているアウトカムについて

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2023.05.22
リハデミー編集部
2023.05.22

<抄録>

 カナダの医療制度は,世界的にも珍しい皆保険に近い制度をとっており,本邦における公的保険下でのリハビリテーションを取り巻く環境に似ている.従って,背景環境の似ているカナダにおけるエビデンスは,本邦においても利用可能性が高いと考えている.さて,リハビリテーションを進める上で,効果検証や対象者の現状の状況を他職種や家族等に伝えるために,定期的に対象者に対してリハビリテーションに関するアセスメントを実施する必要がある.特に,入院中におけるリハビリテーションにおいては,その後,在宅や施設に対象者が帰ることで,環境が激変することもあり,アセスメントの重要性はさらに高まると考えられている.本コラムにおいては,脳卒中を発症後に入院環境で実施する最初のアセスメントについて,Canadian Stroke Best practice 2019より抜粋して,解説を行なっていく.第 六回はガイドラインにおける使用を推奨されているアウトカム(Life Habits,Canadian Occupational Performance Measure,ABILHAND,Functional autonomy measurement system)について解説を行っていく。

1.推奨されているアウトカム(Functional Capacity and activities of daily living)

1)Life Habits(LIFE-H)1

 Life Habits(LIFE-H)は日常生活活動や社会的役割における遂行能力を評価するために開発された主に社会参加の質に対するアセスメントツールである.LIFE-Hは,12項目の生活習慣に関する質問から構成されています.最初の6つの項目は,栄養,フィットネス,パーソナルケア,コミュニケーション,住居,移動など,日常生活活動に関連するものである.残りの6つの領域は,社会的役割に関連するもので,責任,対人関係,地域生活,教育,雇用,余暇活動を評価するアセスメントツールである.LIFE-Hは一つの項目ごとに,10件法で評価していく.0点は最適な参加レベルを指し,9点は全く参加が困難な状況であることを示している.短縮版LIFE-Hでは,これらの点数が真逆の解釈になる.LIFE-Hの総得点は,各項目のスコアを点数化し,項目数で割った平均値で示される.LIFE-Hは自己記入式の評価であるが,認知機能に問題がある対象者は,代理回答者によって記載することも可能とされている2.


2)Occupation Performance Measure(COPM)3

 カナダ式作業遂行測定(COPM)は生活機能または日常生活のスキルの中で,対象者やその家族が主観的に重要と位置付けている生活活動を目標として選択した上で,その特定の生活活動に対する対象者,もしくはその家族の遂行度と満足度を確認する評価である.それぞれ10点満点のスケールで評価される.COPMは半構造化面接により,クライアントまたはその家族を対象に5段階のプロセスを経て実施されます.5段階のプロセスとは,問題の定義,問題の重みづけ(優先順位),スコアリング,再評価,フォローアップから成り立つと考えられている3.


3)ABILHAND

 ABILHAND4は両手を使って実施する日常生活活動に対するアセスメントツールである.このアセスメントツールは,23項目の日常生活活動における一般的な両手動作を有する活動から構成される.各項目を0: 不可能,1: 困難,2: 容易,の順に点数化ができるように設計されている.実施方法は,リハビリテーション医師や療法士が,臨床場面において面接方式で実施する.所要時間は10-30分程度と推定されている.また,先行研究においても良好な評価特性を持っていると示されている5.


4)Functional autonomy measurement system(SMAF)6

 SMNFは日常生活活動における自立度を確認するアセスメントツールである.このアセスメントツールは,日常生活活動(7項目),移動(6項目),コミュニケーション(3項目),認知機能(5項目),家庭生活活動(8項目)の29項目から構成されている.評価特性としては,Functional Independence Measure(FIM®︎)と強い関連性を持っているとされている.実施方法は観察であり,約42分程度の時間を要する7.

まとめ

 今回は,日常生活活動から社会参加をアセスメント可能なツールを複数紹介した.本邦では使用実績が少ないツールもあり,これらの和訳,邦人による妥当性・信頼性の確認等が望まれる.次回の第7回は,脳卒中を発症後に入院環境で実施する最初のアセスメントについて,Canadian Stroke Best practice 2019より抜粋して,解説を行なっていく.


参照文献

1.  Fougeyrollas P, Noreau L and St. Michel G. Life habits measure – shorten version (LIFE-H 3.0). International Network on Disability Creation Process. Lac St lac St-Charles, Quebec, Canada (2001). 

2. Desrosiers J, Rochette A, Noreau L, Bravo G, Hebert R, Boutin C. Comparison of two functional independence scales with a participation measure in post-stroke rehabilitation. Arch. Gerontol. Geriatr 2003;37:157-172. 

3. Law M, Baptiste S, McColl M, Opozoomer A, Polatajko H, Pollock N. The Canadian occupational performance measure: an outcome measure for occupational therapy. Canadian Journal of Occupational Therapy. 1990; 57: 82-87. 

4. Ashford S, Slade M, Malaprade F, Turner-Stokes L. Evaluation of functional outcome measures for the hemiparetic upper limb: a systematic review. Journal of rehabilitation medicine 2008; 40: 787-795. 

5. Murphy MA, Resteghini C, Feys P, Lamers I. An overview of systematic reviews on upper extremity outcome measures after stroke. BMC Neurology 2015;15:29. 

6. Hebert R, Carrier R, Bilodeau A. The functional autonomy measurement system (SMAF): description and validation of an instrument for the measurement of handicaps. Age Ageing 1988;17:293-302. 

7. Desrosiers J, Rochette A, Noreau L, Bravo G, Hebert R, Boutin C. Comparison of two functional independence scales with a participation measure in post-stroke rehabilitation. Arch. Gerontol. Geriatr 2003;37:157-172. 

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