Canadian best practiceが示すガイドラインにおける『回復期リハビリテーション病棟』に関するエビデンスについて(3)〜回復期リハビリテーションの臨床に与える影響に関するエビデンスにつ

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2023.06.09
リハデミー編集部
2023.06.09

<抄録>

 脳卒中を罹患し、急性期病院に搬送された対象者は、救命処置が一段落するとリハビリテーション病棟に転院する。リハビリテーション病棟は、日本独自の皆保険下のシステムであり、世界でも希少なリハビリテーションを専門に実施する病院である。このシステムに関するエビデンスがCanadian best practiceが示すガイドラインにおいて示されている。本コラムにおいては、数回において、回復期リハビリテーション病棟のあり方や、その影響力について解説を行う。第3回は回復期リハビリテーション病棟の臨床に与える影響に関するエビデンスについて記載する.

1.リハビリテーション病棟における脳卒中患者に対するケアについて

 脳卒中を罹患した対象者に対するリハビリテーションについて、脳卒中後に生じた後遺症のため入院におけるリハビリテーションが必要な全ての人は、以下の1)から10)の特徴を持つリハビリテーション専門病棟にて加療を受けるべきである(エビデンスレベルA)

1)リハビリテーションに関するサービスが適切に備えられており、組織化されている施設(エビデンスレベルA)

2)リハビリテーションを専門とする病棟が明確に設置されている(エビデンスレベルA)

3)リハビリテーション病棟に、医師(リハビリテーション医師、神経内科医、脳卒中リハビリテーションに関する専門のトレーニングを受けた他科の医師等)、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカー、臨床栄養士からなる脳卒中リハビリテーションの専門家が配属されている(エビデンスレベルA)

4)リハビリテーションに専門家意外にも追加の職種としては、薬剤師、転院・退院プランナー、神経心理学者、緩和ケアの専門家、レクレーション専門家、職業支援に関わる専門家、運動指導士、療法士助手、スピリチュアルケアを提供できる職種、脳卒中の経験者(ピアサポーター)、脳卒中回復リエゾンチームがあれば、なお良いケアが提供できる可能性がある(エビデンスレベルC)

5)対象者とその家族、もしくは介護のキーパーソンが、リハビリテーションの過程において、できるだけ早期から積極的に関与するすることで、良好な予後もしくは転期を辿る可能性がある(エビデンスレベルB)

6)リハビリテーションチームは、現在、世界中のあらゆるガイドライン等で合意が得られているエビデンスに基づいた実践を提供することで良好な予後もしくは転期を辿る可能性がある(エビデンスレベルB)

7)転院や退院の計画は、回復期リハビリテーション病棟に入棟した際から、転院・退院のプランナーによって、できるだけ早期から立てることでより良い転期に繋がる可能性がある(エビデンスレベルB)

8)対象者とその家族、介護のキーパーソンに対する公式、非公式に、個人もしくはグループにて適切な教育および指導が早期から行われることが良い転期に繋がる可能性がある(エビデンスレベルB)

9)回復期リハビリテーション病棟で、リハビリテーションに当たる専門職は、訓練を受け、失語症等のコミュニケーションに問題がある対象者に対処できるような適切な会話技法を用いたコミュニケーション能力を有することで、良い転期に繋がる可能性がある(エビデンスレベルC)

とされている.上記に示したようにリハビリテーション病棟では、脳卒中に特化した適切なリハビリテーションを受けることが可能であり、それらが対象者の転期を改善する可能性が示されている.もし、自身が所属しているリハビリテーション病棟において、上記に示した要素が欠如している場合は、管理者等と協力して、それらに関わる教育体制やシステムを構築する必要があると考えられる。これらの情報を利用して、回復期リハビリテーション病棟において、エビデンスを基盤としたより良いサービスを提供できれば、幸いである。

まとめ

 第3回は、回復期リハビリテーション病棟における作業療法士の役割について解説を行った。第4回は、回復期リハビリテーション病棟において働く職種やチームの構成が対象者の転期に与える影響について、Canadian best practiceが示しているガイドラインの中からエビデンスについて、解説を行っていく。

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