Canadian best practiceが示すガイドラインにおける『回復期リハビリテーション病棟』に関するエビデンスについて(2)〜回復期リハビリテーションにおける作業療法士の役割〜

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2023.06.05
リハデミー編集部
2023.06.05

<抄録>

 脳卒中を罹患し、急性期病院に搬送された対象者は、救命処置が一段落するとリハビリテーション病棟に転院する。リハビリテーション病棟は、日本独自の皆保険下のシステムであり、世界でも希少なリハビリテーションを専門に実施する病院である。このシステムに関するエビデンスがCanadian best practiceが示すガイドラインにおいて示されている。本コラムにおいては、数回において、回復期リハビリテーション病棟のあり方や、その影響力について解説を行う。第2回は回復期リハビリテーション病棟における作業療法士の役割について解説を行う。

1.回復期リハビリテーション病棟における作業療法士の働き方の役割

 本邦における回復期リハビリテーション病棟の役割とは、疾患を発症した対象者が、自宅や地域に帰り、自身の大切な時間や人生を再開させるスタート地点となる場所である。回復期リハビリテーション病棟では、医師による医療行為やリスク管理等の医学的な手続きというよりは、純粋に対象者の方が自宅・地域に復帰できるような多角的かつリハビリテーション的な支援が必要とされる場である。したがって、疾患の管理目的の病院ではないため、疾患の再発や他の疾患の発症等があった場合は、救急車が呼ばれ、然るべき科を有する急性期病院に転院となることが多い。

 さて、そういった特徴を持つ病棟の中で、作業療法士はどのような役割を担うべきなのだろうか。そもそも作業療法士とは、対象者の作業(時間的空間的にその方の人生を占める活動)の実現のために支援を行う職種である。上記のような特性を持つ、回復期リハビリテーション病棟においては、まさに『対象者の(多様性)の数だけ作業療法士の役割が変わる』といっても過言ではない。ある対象者の方は、自宅におけるトイレに関わる活動をご自身で行いたいとおっしゃるかもしれない、一方別の方は、ご自身で車を運転し、日本一周を再開したいとおっしゃるかもしれない。対象者を取り巻く環境が人の数だけあることから、本当に対象者の潜在的なニーズは多岐にわたる。したがって、回復期リハビリテーション病棟における作業療法士には、1)対象者のリハビリテーションの目標となる潜在的ニーズを顕在化するためのスキル、2)顕在化されたニーズを実現するための直接的(機能的)・間接的(代償的)な手法に関する知識、技術の習得、3)環境やシステム調整を実現するための病院内外の他(多)職種や家族、対象者が関連する第三者とのコミュニケーション能力、が必要となる。

 回復期リハビリテーション病院における作業療法士の役割は多岐にわたるものであるが、その中でも必要な能力は、1)対象者の身体・精神面の状態評価、2)作業療法におけるプログラムの立案、3)対象者の大切な作業に関する目標設定、4)日常生活活動に関する身体・能力に対する練習、5)上肢・手指に対する練習、6)装具や福祉用具(コミュニケーション支援も含む)に関する対応、7)高次脳機能および認知症に対する練習および支援、7)入院中・退院後の生活環境支援、8)家族をはじめとした対象者の周辺におられる方々への指導・支援、9)地域復帰支援(就労支援、自動車運転支援を含む)、等が挙げられる。 近年、作業療法士に求められる支援の対象は増え続けており、多くの新しい知識や技術が必要となっている。例えば、一昔前であれば、作業療法士の仕事は、機能回復アプローチと日常生活活動の獲得といった限られた範疇であった。上記にも挙げているが、近年では9)の地域復帰支援に関わることを強く求められることから、地域に顕在的・潜在的に存在するリソースを回復期リハビリテーション病棟の作業療法士がどれだけ把握しているのか、を求められることが非常に多い。したがって、病棟の中でも中心的な仕事を今後になっていく可能性が高く、期待されている部分も多い。

これらの背景から、回復期リハビリテーション病棟において、作業療法士は、これらの多岐にわたる分野の中で、対象者や他の医療職種とのコミュニケーションを円滑に図りつつ、地域生活における対象者の自立生活と意味のある作業の実現を支援することが重要となる。

まとめ

 第2回は、回復期リハビリテーション病棟における作業療法士の役割について解説を行った。第3回は、回復期リハビリテーション病棟が対象者やその家族に与える影響について、Canadian best practiceが示しているガイドラインの中からエビデンスについて、解説を行っていく。

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