Brain Machine Interfaceは果たして臨床で利用することができるのか?最近の知見からみるその特徴と役割について(2)

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2023.09.25
リハデミー編集部
2023.09.25

<抄録>

 脳卒中後の上肢麻痺に対するアプローチの手段として、様々なアプローチが検討されている。最近では、筋電トリガー型のロボット支援アプローチを可能とする機器など、生体信号を利用したリハビリテーション技術も進んでいる。さて、そういったトレンドの中で、脳が発する信号をダイレクトに受信し、それをトリガーにしてアプローチを実現する、Brain Machine Interface(BMI)を用いた試みも、脳卒中後上肢麻痺の機能回復を目的として実施されている。本コラムでは、最近のBMIを用いた研究を読み解き、脳卒中後に生じる上肢の運動障害に対するリハビリテーションにおける機器の特徴と役割について、2回にわたり解説を行う。

1. Brain Machine Interfaceを用いた脳卒中後上肢運動障害に対するリハビリテーションの軌跡

 脳卒中後の患者においては、神経可塑性と運動再生を促進するためにBMIを使用することが望ましいと最近のシステマティックレビュー、メタアナリシス、そしてガイドライン等に身を通すと主張され始めている。実際、ヒトを対象としたBMI研究の数が増えており、運動の回復におけるこの技術の可能性が実証されている[1-3]。脳卒中後の上肢リハビリテーションプログラムでは、非侵襲的BMIシステムを使用したFESやロボットなどのフィードバック装置が組み合わせられている。これらを使用した先行研究の中では、単純にバイオフィードバック的に視覚刺激を用いて、SMRの出現を提示するよりも、それに合わせて、感覚刺激(振動、電気刺激)、関節感覚(ロボット等による他動運動)を提供するといった多重モジュールによる戦略の方が、SMRの出現等に良い影響を与えるとも言われており、こういった手法を用いることで、より明確なイメージを再現性高く、臨床における対象者に提供することができると考えられている。

 しかし、BMIに基づくトレーニングの有効性に関しては論争があり、研究の質やサンプルサイズのばらつきなどの限界もある[4-8]。特に、健常人等における研究においては、SMRを取得しやすいという背景からも良好な再現性を確保している。しかしながら、脳卒中患者を対象とした研究においては、SMR自体が除波している対象者も少なくなく、すべての対象者にBMIが利用できるわけでもない。さらに、SMRの除波に加え、SMRは出現しているものの、運動時または運動想起時に出現する事象関連脱同期(EDR)がうまく出現しない対象者も中には存在する。したがって、こういった生体信号を取り出せない対象者に対するBMIを利用したトレーニング方法等については、まだまだ未知な部分が多く、課題とされている。

以上のように、BMIは脳卒中後の上肢リハビリテーションにおいて有望なアプローチとされており、その効果や応用範囲についてさらなる研究が求められている。さて、では、最新のシステマティックレビューおよびメタアナリシスの結果を確認してみる。Xieら[9]は、脳卒中後に上肢運動障害を呈した患者を対象とした、17件のランダム化比較試験(410名を対象)としたシステマティックレビュおよびメタアナリシシスを実施した。その結果、対照群に比べ、BMIを用いた上肢機能練習は有意な改善を示すことが示された。さらに、サブグループのメタアナリシスでは、生活期および亜急性期の両方で、BMIを利用したリハビリテーションにおいて、上肢機能の有意な改善が認められることが示された。さらに、この効果は、上肢機能だけでなく、日常生活活動の改善にも波及するとの結果も示されていた。この結果からも亜急性期・慢性期における脳卒中後の上肢アプローチの一つとして、BMIを用いたトレーニングは可能性を秘めていることが示された。


参照文献

1. Lyukmanov, R. K., Aziatskaya, G. A., Mokienko, O. A., Varako, N. A., Kovyazina, M. S., Suponeva, N. A., et al. (2018). Post-stroke rehabilitation training with a brain-computer interface: a clinical and neuropsychological study. Zh. Nevrol. Psikhiatr. Im. S S Korsakova. 118, 43–51. 

2. Chung, E., Lee, B. H., and Hwang, S. (2020). Therapeutic effects of brain-computer interface-controlled functional electrical stimulation training on balance and gait performance for stroke: a pilot randomized controlled trial. Medicine 99, e22612.

3. Li, C., Wei, J., Huang, X., Duan, Q., and Zhang, T. (2021). Effects of a brain-computer interface-operated lower limb rehabilitation robot on motor function recovery in patients with stroke. J. Healthc. Eng. 2021, 4710044. 

4. Cervera, M. A., Soekadar, S. R., Ushiba, J., Millan, J. D. R., Liu, M., Birbaumer, N., et al. (2018). Brain-computer interfaces for post-stroke motor rehabilitation: a meta-analysis. Ann. Clin. Transl. Neurol. 5, 651–663. 

5. Bai, Z., Fong, K. N. K., Zhang, J. J., Chan, J., and Ting, K. H. (2020). Immediate and long-term effects of BCI-based rehabilitation of the upper extremity after stroke: a systematic review and meta-analysis. J. Neuroeng. Rehabil. 17, 57

6. Mansour, S., Ang, K. K., Nair, K. P. S., Phua, K. S., and Arvaneh, M. (2022). Efficacy of brain-computer interface and the impact of its design characteristics on poststroke upper-limb rehabilitation: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Clin. EEG Neurosci. 53, 79–90.

7. Nojima, I., Sugata, H., Takeuchi, H., and Mima, T. (2022). Brain-computer interface training based on brain activity can induce motor recovery in patients with stroke: a meta-analysis. Neurorehabil. Neural Repair 36, 83–96.

8. Yang, H., Chen, Y., Wang, J., Wei, H., Chen, Y., Jin, J., et al. (2021). Activities of daily living measurement after ischemic stroke: Rasch analysis of the modified Barthel Index. Medicine 100, e24926.

9. Xie YL, Yang, YX., Jiang, H., Duan, XY., Gu, LJ., Qing, W., Zhang, B., and Wang, YX. (2022). Brain-machine interface-based training for improving upper extremity function after stroke/ A meta-analysis of randomized controlled trials. Front Neurosci 2022, 949575

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