社会参加に関わるアウトカムの悪化に対してどういったリハビリテーションアプローチを実施すべきなのか?(1)
<抄録>
脳卒中後の対象者の社会参加の重要性とその背景についてまとめると、脳卒中は成人の身体障害の主要な原因であり、身体機能の低下によって社会参加が制限されることが多い。国際生活機能分類によれば、参加とは生活状況への関与を指し、その程度は身体的健康、精神的健康、QOLと関連していることが分かっている。社会参加は障害の有無に関わらず重要であり、脳卒中後の対象者においてもその重要性が認識されている。
社会参加の程度が回復の成功や感情的な幸福感にも影響を与える可能性が示唆されており、社会的孤立感を有する脳卒中患者はうつ病や死亡のリスクが高まることが報告されている。このため、脳卒中後のリハビリテーションにおいても社会参加の重要性が強調されているが、現状では効果的なアプローチの構築が進んでおらず、社会参加の程度を改善するためにはエビデンスに基づいた地域におけるケアの提供戦略の構築が急務とされている。
第一回は社会参加に関わるアウトカムの悪化の背景に関して、解説を行う。
1. 社会参加に関わるアウトカムの悪化の背景
脳卒中は、依然として成人の身体障害の主要な原因の一つであり(世界第3位の原因)、すべての神経疾患の中で最も大きな疾患負担をもたらすと報告されている[1]。脳卒中を発症した後に、身体の機能は大きく低下し、その結果、脳卒中患者の活動や社会参加の制限を経験することが多い[2]。国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health: ICF)によると、参加とは生活状況への関与と定義されている。生活状況絵の関与においては、積極的な関与、意味のある活動(作業)、自己の他者への影響、そして、社会的な繋がりといった項目が含まれている[3]。
さて、ICFにおける参加において、最も重要視されているのが社会参加である。社会参加は障害の有無に関わらず、非常に重要な側面の一つであり、脳卒中後の対象者にとってもそれは同様である。社会さんkなとは、家族、仲間、友人、地域社会における何らかの活動に参加することと定義されている[4]。社会参加の程度は、脳卒中後の人の身体的健康、精神的健康、社会的孤立、長期的なQuality of life(QOL)と有意な相関を持つことが過去の研究でも明らかとなっている[5, 6]。また、別の研究においては、社会参加の程度が、脳卒中を呈した対象者自身の感情的な幸福感に関する認識にも何らかの影響を与える可能性も示唆されている[7]。そして、最も重要な視点としては、脳卒中後の対象者は、しばしば、自身の回復の程度(リハビリテーションの成功)を、社会参加の程度をアウトカムとして、測定することがあると言われている[8]。
これらを支持するように、脳卒中後に社会的孤立感を有し、社会参加がうまく行っていない対象者に関する研究では、回復期に脳卒中の発症がある、うつ病、死亡のリスクが高まるといった報告も複数なされており[9, 10, 11]、社会参加に対するリハビリテーションアプローチの優先性と重要性が明らかとなりつつある。脳卒中後の対象者においては、社会参加を維持する必要性を強調するエビデンスが増えてきている[12, 13]。ただし、現状では、社会参加に対する脳卒中後のリハビリテーションがうまく行っているとは言い難い。例えば、Pangら[14]は、社会参加の再開は、脳卒中後のリハビリテーションにおいて、非常に重要であることは明白だが、地域在住の脳卒中患者のうち、社会参加のレベルに完全に満足しているのは、調査対象となった脳卒中患者全体のわずか11%であったと報告している。
これらの結果からも理解できる通り、社会参加の程度を改善するために効果的なリハビリテーションアプローチの開発と、エビデンスに基づいた地域におけるケアの提供戦略の構築が急務であるとされている。しかしながら、いくつかのリハビリテーションアプローチが開発され、実施されているものの、現在は一貫したアプローチの構築には至っていない状況である。
まとめ
脳卒中後の対象者における社会参加の重要性について述べた。脳卒中後の対象者における社会参加は、合併症の予防やQOLの改善等に非常に有用であるものの、現状ではリハビリテーションアプローチの実施、および、その効果のエビデンスも一定していない状況である。第二回は、現在実施されているリハビリテーションアプローチの実際について、解説を行う。
参照文献
1. Benjamin, E.J., Paul Muntner, C., Chair Alvaro Alonso, V., Marcio Bittencourt, F.S., Clifton Callaway, M.W., April Carson, F.P., … Salim Virani, F.S., 2019. Heart disease and stroke statistics— 2019 update. Am. Heart Ass. Stat. Update 139 (10), e56–e528.
2. Stamm, B.J., Burke, J.F., Lin, C.C., Price, R.J., Skolarus, L.E., 2019. Disability in community-dwelling older adults: exploring the role of stroke and dementia. J. Primary Care and Community Health 10, 1–11.
3. Silva, S.M., Corrêa, J.C.F., Pereira, G.S., Corrêa, F.I., 2019. Social participation following a stroke: an assessment in accordance with the international classification of functioning, disability and health. Disabil. Rehabil. 41 (8), 879–886.
4. Souza, F.H.N.de, Silva, E.M.da, Cezarino, L.G., Melo, E.L.A.de, Cacho, Ê.W.A., 2017. Social Participation as a goal of the post-stroke rehabilitation program: a literature review. Manual Therapy, Posturol. Rehab. J. 15.
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10. Hinojosa, R., Haun, J., Hinojosa, M.S., Rittman, M., 2011. Social isolation poststroke: Relationship between race/ethnicity, depression, and functional independence. Top. Stroke Rehabil. 18 (1), 79–86
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12. Hospital Authority. (2016). [homepage on the Internet]. Retrieved from HA Statistical Report website: www.ha.org.hk
13. Liu, H., Lou, V.W.Q., 2019. Functional recovery of older stroke patients discharged from hospital to home: the effects of cognitive status and different levels of therapy intensity. J. Clin. Nurs. 28 (1–2), 47–55
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