社会参加に関わるアウトカムの悪化に対してどういったリハビリテーションアプローチを実施すべきなのか?(2)

竹林先生のコラム
神経系疾患, 患者教育
リハデミー編集部
2023.10.23
リハデミー編集部
2023.10.23

<抄録>

 社会参加に関わるアウトカムの悪化に対してどういったリハビリテーションアプローチを実施すべきなのか?(1)では、脳卒中を呈した対象者が社会参加において、どういった状況にあるのかを解説した。第二回では、効果的な介入について以下の解説を行う。脳卒中患者の社会参加を改善するためのリハビリテーションプログラムについての研究によれば、運動療法を含むアプローチが効果的である可能性が示唆されている。これに基づき、運動再学習療法が特に有益であることが示されている。運動再学習療法は、欠落しているパフォーマンス要素の特定、補習課題を用いた訓練、機能的課題構成要素を用いた訓練、そして機能的な課題遂行への技能の移行という4つのステップで構成されるプログラムで、静的および動的座位・立位のバランス障害を改善するよう設計されている。ただし、現在の研究数は少なく、適切な運動療法の選択についてはさらなる検討が必要であるとされている。

1. 脳卒中を呈した対象者において、社会参加のアウトカムに影響を与えるリハビリテーションプログラムとは

 社会参加の程度を改善するために効果的なリハビリテーションアプローチの開発と、エビデンスに基づいた地域におけるケアの提供戦略の構築が急務であるとされている。しかしながら、いくつかのリハビリテーションアプローチが開発され、実施されているものの、現在は一貫したアプローチの構築には至っていない状況である。

 いくつかの先行研究[1-3]では、リハビリテーションプログラムの中の一部に、運動療法が含まれている場合、運動を全く含まない介入(徒手療法等)よりも、脳卒中を呈した対象者の社会参加に関わるアウトカムの改善に効果的であることが示されている。この結果から、脳卒中を呈した対象者の社会参加において、運動療法は有益な要素である可能性を示唆しているものと思われる。これらの研究に加えて、過去のシステマティックレビューとメタアナリシスにおいては、運動療法を基盤とした介入は、脳卒中を呈した対象者の社会参加のアウトカムの改善に有効である可能性が明らかにされている。

Obembeら[4]はシステマティックレビューの手続きを通して、21本のランダム化比較試験に含まれる脳卒中を呈した対象者を対象としたメタアナリシスを実施した。その結果、運動療法による介入は、対照群に比べ、プログラム終了直後の社会参加に関するアウトカムの有意な改善を認めたと報告している(10本のランダム化比較試験の結果から解析)。さらに、他の介入と運動療法を組み合わせた場合にも対照群に比べて有意な社会参加に関するアウトカムの改善を認めたと報告した(13本のランダム化比較試験の結果から解析)。ただし、同じ研究の中で、介護支援サービスのみを実施した介入については、対照群に比べ、有意な社会参加に関するアウトカムの改善は認められなかったことから(9本のランダム化ひかくしけんの結果から解析)、対象者の社会参加に関わるアウトカムを改善するためには、運動療法といったリハビリテーションプログラムが有効である可能性が示唆されている。

 ただし、このエビデンスについても、重大な問題を抱えている。運動療法は幅広い概念であり、数多くの方法が『運動療法』と一括りにされており、どの運動様式やパターンが最も効果的であるかについては、このシステマティックレビューとメタアナリシスの結果からは、結論を導き出すことは困難である。ただし、臨床的な視点から考えると、最も効果的な具体的な運動の選択肢が何であるかを理解しすることで、より正確なリハビリテーションプログラムを、脳卒中を呈した対象者に提供することができる。

 近年、上記の問題を解決すべくZhangら[5]がネットワークメタアナリシスを用いて、より良影響を与えるプログラムを分析している。その結果、他の療法に比べ、運動再学習療法(Motor relearning program)が有効であることを示唆した。Chenらによると運動再学習プログラムとは、介入技法は以下の4つの連続的なステップを行うものとされている。:欠落しているパフォーマンス構成要素の特定(ステップ1)、補習課題を用いた訓練(ステップ2)、機能的課題構成要素を用いた訓練(ステップ3)、機能的課題遂行への技能の移行(ステップ4)。合計24の改善課題(ステップ2で使用)と10の機能的課題(ステップ4で使用)は、静的および動的座位バランス、静的および動的立位バランスの障害をカバーするように設計された運動療法のことを指す。

現在の研究ではこれらが示唆されているものの、論文数も少なく、一定の方向性があるとは言えない。脳卒中を呈した対象者の社会参加のアウトカムを改善するために、効果的な運動療法を同定するためには、さらに検討が必要であると思われる。


参照文献

1. Huijbregts, M.P.J., Myers, A.M., Streiner, D., Teasell, R., 2008. Implementation, process, and preliminary outcome evaluation of two community programs for persons with stroke and their care partners. Top. Stroke Rehabil. 15 (5), 503–520

2. Kim, M., Cho, K., Lee, W., 2014. Community walking training program improves walking function and social participation in chronic stroke patients. Tohoku J. Exp. Med. 234 (4), 281–286.

3. Mayo, N.E., Anderson, S., Barclay, R., Cameron, J.I., Desrosiers, J., Eng, J.J., … Bayley, M., 2015. Getting on with the rest of your life following stroke: A randomized trial of a complex intervention aimed at enhancing life participation post stroke. Clin. Rehabil. 29 (12), 1198–1211.

4. Obembe, A.O., Eng, J.J., 2016. Rehabilitation interventions for improving social participation after stroke: a systematic review and meta-analysis. Neurorehabil. Neural Repair 30 (4), 384–392

5. Zhang Q,I., Schwade, M., Smith, Y., Wood, R., Young, L., 2020. Exercise-based interventions for post-stroke social participation: A systematic review and network meta-analysis. Int J Nurse Studies. 111, 103738

6. Chan YL. Efficacy of motor relearning program in improving function after stroke. Master's Dissertation, The Hong Kong Polytechnic University, 2000.

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