動作障害の評価-前編-

動作障害の評価-前編-
リハデミー編集部
2019.01.10
リハデミー編集部
2019.01.10

動作のメカニズムの分析

日常生活活動は、寝返り動作、起き上がり動作、立ち座り動作、座位・立位バランス、歩行という5つの動作の組み合わせによって構成される。理学療法の臨床場面では、日常生活活動を制限する要因を調べる目的で基本動作の分析が行われる。動作分析によって得られた所見から、患者の動作能力の問題を抽出し、その原因を推論する。理学療法プログラムは、この推論を基にして立案される。

動作障害は、それぞれの動作を可能にしているメカニズムの障害に起因する.したがって、動作障害の原因を明らかにするためには、動作のメカニズムの作動状況を1つ1つ調べ、どのメカニズムに異常があるのかを明らかにすることが重要である。 動作を可能にするメカニズムの中で、どのメカニズムに異常があるのかを明らかにするためには、目視によって動作を観察するだけでは不十分である。患者の動作フォームを見たまま分析するのではなく、動作の遂行に必要な課題を1つ1つ実行させるようにセラピストが動作を誘導し、患者の反応を観察して、動作のメカニズムのどこに問題があるのかを確認する必要がある。

動作を誘導する際に、どれくらいの介助量が必要なのかを注意深く確認することが重要である。誘導した際に、セラピストが感じる患者の反応を4段階に分類することにより、動作のメカニズムの阻害因子をある程度予測することができる(表1-1)。運動方向を誘導する程度の介助量で動作が可能になる場合には、筋力や可動域制限などの機能障害による影響は比較的少なく、動作の方略(動作のやり方)に問題があると推測できる。一方、外部から運動を補助する力を与えないと運動が誘導できない場合には、筋力低下や運動麻痺の影響によって運動を起こせないと推測できる。また、患者が出力している力に拮抗しなければ誘導できない場合には、過剰な努力、欠落する運動に対する代償、連合反応の出現、疼痛回避、恐怖心などが動作を阻害していると推測できる。介助しても運動そのものに制限があり誘導ができない場合には、運動に必要な関節の可動域が制限されている可能性が高い。

実際に患者の動作を誘導して、その反応を観察することで、動作障害の原因を推測する。推測した仮説を基に、仮説を検証するために必要な検査や介入を行い、最終的に動作を阻害する原因を確定するプロセスが動作分析である。
 

仮説の立案と検証

動作分析から動作障害の原因が直ぐに分かるわけではない。動作分析から分かるのは、「どのメカニズムに問題があるのか」ということであって、その原因を特定することはできない。動作障害の原因を特定するためには、仮説の立案と検証を繰り返さなくてはならない。動作のメカニズムを誘導した際の患者の反応を観察して、そのような反応が起きる原因について仮説を立てる。仮説を立てたら、それを検証するための検査を行い、動作障害の原因を特定する。ただし、立案される仮説は1つではない。多くの可能性の中から、有力な仮説を選定しなくてはならない。動作のメカニズムのどこに問題が存在するのかを特定し、そのメカニズムに問題を生じさせている原因として可能性のある機能障害を推論する。

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