臨床推論の楽しさを感じてもらえたら-前編-

山本 伸一先生 × 藤本 修平先生インタビュー
リハデミー編集部
2019.01.19
リハデミー編集部
2019.01.19

計画とか、型にあてはめるとかもちろん大事なことですけど臨床ってそんなに簡単ではないですよね

藤本:では、インタビューを始めたいと思います。今日は講習会、お疲れ様でした。

山本:こちらこそありがとうございました。

藤本:受講生の反応はいかがでしたでしょうか?受講生の反応をみながら、5時間の講習会はすごく大変だったと思うのですが。

山本:いえ、僕自身はあっという間でした。実技が中心ですから、おそらく受講生さんも5時間はあっという間だったのではと思います。

藤本:確かに実技中心ですとあっという間ですよね。私は、座学で5時間の講習会を行うのですが、足が浮腫むので、座っているみなさんはもっと浮腫んでいるのだろうなといつも考えております。では、ここからはほんとうにざっくばらんに、私がお伺いしたい事を、生い立ちまでとはいきませんが、色々とお聞きしていきたいと思います。

山本:喋れるところは喋ります。

藤本:お願いします。先生が作業療法士になられたきっかけ、もしくは目指されたのはどういった事がきっかけだったのでしょうか?

山本:僕が作業療法士になってから30年以上経ちましたが、高校生の時には養護学校の先生になりたいと思っていました。養護学校の見学に行って肢体不自由児のリハビリテーションを知ったんです。でも当時は、理学療法士、作業療法士が何をしている職業なのか、世間的にあまり知られていない時代でしたので、どうすればよいのか、何をすればよいのかを悩みました。「理学療法士と作業療法士の差は何だろう?」と考えたときに、当時の作業療法士は手芸や絵画などを治療によく用いていて美術的な要素が大きかったので、体育と美術だけが好きだった僕は悩んだ末に作業療法士に決めました。小児分野が元々のスタートだったということになります。

藤本:先生は養成校を卒業されてから、今の職場でずっと働かれているのでしょうか?

山本:そうです。

藤本:山梨リハビリテーション病院は小児の患者さんはいらっしゃるのですか?

山本:当時は山梨温泉病院といって、今で言う高齢者対応の病院でした。入院期間が5年、10年の人もいるような超高齢者ばかりが長くいる病院でしたが、今は時代も変わり、全科回復期になっていて小児もみています。

藤本:小児のリハビリができる病院は本当に少なくなっていますよね。小児の療育センターでは、外来ですと月1回しかみていただけないことも多いので、一般病院で小児をみていただけるというのは貴重ですね。

山本:周りをみても子供のリハには手を出さない傾向があるといいますか、難しさがあるのでしょうか。うちの病院の場合には肢体不自由児もしっかりとみています。小児リハは外来だけですが、小児外来を行うかどうかという話になったときに、リハのスタッフの中ではそんなに躊躇はなかったですね。

藤本:それってすごくすばらしいことじゃないですか。私、実は臨床1年目は小児をみていました。小児をみたくて臨床を行っていたので。

山本:一緒ですね。

藤本:ただ、他のスタッフがみられないから私がみるしかない状況に追い込まれてみていたという背景がありました。先生の職場では小児をみることを自分のマインドとしている方が多いのでしょうか?

山本:うちの病院の場合には背景にボバースがありますので、もともとボバースは小児を非常に得意としているというのがありますからね。今、病院の中で小児分野は非常に狭まれていますが、一方、訪問看護ステーションや訪問リハビリステーションでは小児の需要は高いです。

藤本:すごく多いですよね。

山本:訪問看護や訪問リハビリがメインになっていてきているというちょっとおかしな現象がありますよね。医療と介護と療育をバランスよく行っていかなければならないということが今の小児の課題となっていますね。

藤本:一時、療育がすごく注目を浴びてしまったがゆえに、療育に完全にシフトして、医療と介護のバランスが崩れてしまった感覚を抱いていたのですが、その辺りは関係があるのでしょうか?ボバースもだと思うのですが、どちらかというと昔は機能をみようとしていたのが、機能をみることに過剰にアンチな人が出てきてから療育にシフトし始め、医療と介護が切り離されてしまった。そのために受け入れ施設が少なくなったのかなと思っています。そういったところも関係があるのでしょうか?

山本:そういった要素が一般病院の中にあったのでしょうね。おかしなことに今の医療の中身というのは、ICFがあって、介護保険での活動があってという順のはずなのに、心身機能や身体構造をみないで活動を行っちゃえという風潮がありますよね。

藤本:ありますよね。

山本:そこはセラピストであるからこそ、心身機能・身体構造と活動、参加もみられるバランスのよいセラピストを育てないといけないと強く思いますね。小児、成人、高齢者のそれぞれの分野によっても、患者さんのステージによっても、心身機能・身体構造、活動、参加のどこに重きを置くのかというのは、人によって違うはずですよね。どこか一つに偏るのではなく、私達セラピストはバランスよくみなければならない立場であると思います。  

藤本:就職する病院によっては、心身機能・身体構造、活動、参加をバランスよくみることを学ぶ機会が得られにくい場合もあると思うのですが、卒後教育を行うにあたり、学部教育でどのくらいまで学んでいてほしいというのはありますか?すごく難しい話だとは思うのですが。私自身、小児の授業はほとんどなかった記憶しかありません。

山本:それは難しい質問で、卒後教育に何があるのか、という前提があっての話ですね。ですから、まずは基礎医学をしっかり身につけておくことを大前提で卒業してほしいと思います。

藤本:基礎医学というのは解剖、臨床、生理ですよね。

山本:はい、特にそうです。あと一般医学も含めてですね。急性期でリスクがわからないではやっぱり困るので。基礎医学と、それから私達の得意とする運動解剖生理がきちんと理解できたうえで卒業してもらいたいです。それから、卒後教育に関しては臨床教育を建て直さないといけないですよね。今、理学療法士協会も作業療法士協会も言語聴覚士協会も臨床教育に大きな壁があると思います。理想はやはり、医師のように卒後教育として臨床教育を1年なり、2年なりしっかり行うことだと思います。今、認定療法士や専門療法士の制度がありますけれども、卒後に何を学ぶのかを臨床の中でしっかりと育てていかなければならないと思いますね。

藤本:今まさにそれが課題ですよね。反対に今成熟してきたからこその課題でもある。成熟しなかったら恐らく気づかなかった点でもあるかなとも思います。

山本:そうですね。臨床実習が平成31年度から変わります。昭和40年から動き始めた臨床教育の仕組みが今変わろうとしています。変えていかなくてはならないことのうちの一つですので、とてもよいことだと思います。臨床実習をどうするかも、私達は考えていかないといけないですよね。

藤本:そうですよね。ありがとうございます。

山梨リハビリテーション病院に入ったきっかけ

藤本:次の質問ですが、先生は、山梨温泉病院に入られて今の山梨リハビリテーション病院に至っていると思うのですが、選んだきっかけは何だったのでしょうか?

山本:きっかけは実習です。

藤本:実習!実習で山梨リハビリテーション病院に行かれたのですか?

山本:当時はリハの学校が20校くらいしかありませんでした。私は愛媛十全医療学院作業療法学科だったのですが、沖縄から青森まで全国から生徒が来ていて実習地もないので、生徒は全国に散らばって実習を受けていました。地元で実習なんてありえないわけですね。

藤本:リハビリそのものがないということですね。

山本:ないです。うちの病院には全国から実習生が結構来ていますけれども、今は地元の病院で実習ですよね。当時はおかしなもので、実習先で就職しろと言われたら就職しないといけませんでした。

藤本:それは学校との関係があったからですか?

山本:学校との関係です。まだセラピストが足りない時代でしたので。ただ、僕は山梨温泉病院に自分から就職したいと申し出て就職をしました。

藤本:今、新卒や3年目くらいまでの子はどういう基準で病院を選べばいいのかを悩んでいるのを目にします。私もよく相談を受けるのですが、「とりあえず入ってみたら」としか言えないところがありまして。生活をしていくうえでは給料面ももちろん大事でしょうけれど、みんな「勉強になる病院に入りたい」と言いますね。そこがいちばん難しいところだと感じています。

山本:そうですね。そういいますね。

藤本:私からすると、ちょっと違和感がある質問ながらも、勉強ができる病院ってどこだろうと考えることもあります。その辺りはいかがでしょうか?

山本:勉強の程度というのはあると思うのですが、学校の求人ガイダンスに行かせていただくと、多くの学生さんは「新人教育はどうされていますか?」と質問してきますね。うちの病院の場合だと、どのようにして知識と技術を提供して学んでいただくかという新人教育のシステムの仕組みをお話してから納得していただけるようにしています。それぞれの病院の特徴があるわけで、うちの病院がベストでもベターでもないのですが、先程、臨床教育でも重要ですよという話をしたように、自分の病院の特徴と教育方針をしっかりと持つべきでしょうね。うちの病院の例を出すと、「身体機能をちゃんとみますよ。環境もみて、活動も分析をします。」という特徴ですね。

藤本:それはつまり作業療法士の専門性、もちろん作業療法士だけに限らないとは思いますけれども、それぞれの職種の専門性に対してどういう教育の取り組みをしているのかを、病院も出せればということですね。

山本:はい、企業側も努力するべきだと思いますね。施設ごとの特徴が見えてくるとすごくいいなと思います。各施設にもカラーがあるじゃないですか。カテゴリーでいうと急性期や生活期もあれば、回復期の中でも呼吸、CVA、心臓など、メインとしていることが色々あるわけですよね。手技も違うかもしれません。各施設が努力していることや仕組みをもっと前面に出していってもいいかもしれませんね。

藤本:それ、いいですね。

山本:学生が自分の学びたいカラーの施設を選べるという。臨床教育はもちろん協会も病院もやるべきですよね。  

藤本:それは、もちろんそうですね。仕組みが明確にでていると、入りたくなりますよね。

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