脳卒中後に生じる複合性局所疼痛症候群(Complex regional pain syndrome: CRPS)の特徴とは?

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2024.03.11
リハデミー編集部
2024.03.11

<本コラムの目的>

・脳卒中後のCRPSの特徴を知る

・脳卒中後のCRPSの予後予測について知る


コラム *CRPSとは?

CRPSとは、自律神経系、感覚神経系、運動神経系の異常を伴う症候群であり、それらの神経の損傷の度合いや範囲に関係なく、激しい痛みが生じる症状です(1994年に世界疼痛学会で反射性交感神経性ジストロフィー、カウサルギー、片手症候群等、さまざまな名称で呼ばれていた現象をCRPSとして統一されました)

1. 脳卒中後のCRPSの特徴とは?

 脳卒中後に生じるCRPSは他のタイプCRPSと異なる特徴を有している。脳卒中後に生じるCRPSを引き起こす原因は不明とされています。しかしながら、脳卒中後のCRPSを疑う際、通常、肩と手関節以遠に灼熱痛が生じると言われています[1,2]。これが、元々CRPSが肩手症候群と呼ばれていた所以です。

 これらの臨床的な特徴から、脳卒中後に生じるCRPSは1994年に世界疼痛会議で名称が統一される前は肩手症候群と呼ばれていました[3,4]。脳卒中後のCRPSは、強い疼痛と腫脹を主症状とし、Quality of life(QOL)を低下させ、リハビリテーションの機会を妨げ、適切な集中的かつ複合的なアプローチを提供しない場合、関節拘縮を引き起こします。

 脳卒中後に生じる後遺症の中でも、CRPSは対処しなければならない合併症の一つです。しかしながら、脳卒中後に生じるCRPSに関する疫学的な研究は少なく、あったとしても小規模なものが多い。例えば、Doら[5]は脳卒中発症後3ヶ月間の間、3相骨シンチグラフィーを用いて、313名の脳卒中後の対象者を観察し、そのうちの28名(8.94%)にCRPSを認めたと報告しています。また、Kocabasら[6]の研究では、脳卒中後の対象者82名を28週間観察し、臨床的な視点から診断した結果、48.8%にCRPSが見つかったと報告しています。

 研究によって、CRPSを有する対象者の数は大きく異なりますが、臨床的な経験から何らかの痛みを有する対象者は全体の4割程度、そのうち 本物のCRPSが疑われる対象者は1割から2割りといった印象です。CRPSを有すると医学的、リハビリテーション、心理学・行動学的なアプローチが求められます。早期発見ができるよう、注意深く観察することが大事です。

2. CRPSの予後予測因子

 Doらの研究によるとFMAの上肢項目(この研究ではFMAの上肢に関わる運動、感覚、関節可動域、関節痛の126点満点を使用している)が小さいこと(麻痺が重度であること)がCRPSの危険因子であり、76点未満をカットポイントとしている(**感度92.6%、特異度65.8%)としています。また、Kimらの研究では、入院期間が長いこと、FMAの上肢項目の点数が低いこと(麻痺が重度であること)、NIHSSの点数が低いこと、BBSの点数が低いこと、を要因として挙げている。また、この中でカットオフポイントとして、NIHSS7.5点未満(感度86.4%、特異度59.7%)を挙げています。つまり、重度の麻痺を有する対象者にCRPSが起こりやすいと言うことがこれらの研究からわかります。


コラム **Doらの研究におけるカットオフポイントの感度、特異度の解釈とは?

 Doらの研究では、313名の脳卒中後の対象者のうち、28名がCRPSであることがわかりました。その際の統計的な処理を行った結果、FMAにおけるカットオフポイントが76 点未満となりました。この研究でいう感度とはCRPSを有する対象者28名中、FMAが76点未満のCRPS患者が26名であることを示しています。一方、特異度とは、CPRSを有さない対象者285名中、FMA76点以上の対象者が170名いることを示しています。カットオフ値の決め方はROC曲線を用いて、理想の値から近い感度と特異度が選ばれます。


参照文献

1. Adami, S., et al. (2015). Bisphosphonate therapy of reflex sympathetic dystrophy syndrome. Annals of the Rheumatic Diseases, 56, 201-204.

2. Baltenberger, E. P., et al. (2015). Review of antidepressants in the treatment of neuropathic pain. The Mental Health Clinician, 5 (3), 123-133.

3. Bharwani, K. D., et al. (2019). Highlighting the role of biomarkers of inflammation in the diagnosis and management of complex regional pain syndrome. Molecular Diagnosis & Therapy, 23 (5), 615-626. 

4. Bhatia, K. P., et al. (1993). The causalgia–dystonia syndrome. Brain, 116 (Pt. 4), 843-851.

5. Do, J. G., et al. (2022). Prevalence and related factors for poststroke complex regional pain syndrome: a retrospective cross-sectional cohort study. Arch Phys Rehabil, 103, 274-281

6. Daviet, J. C., et al. (2002). Clinical factors in the prognosis of complex regional pain syndrome type I after stroke: a prospective study. Am J Phys Med Rehabil, 81, 34-39

7. Kim, C, Y., et al. (2024). Prevalence and predisposing factors of post-stroke complex regional pain syndrome: Retrospective case-control study. J stroke Cerebrovas Dis, 33, 107522

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