Constraint-induced movement therapy(CI療法)におけるTransfer packageの実際の手続き(2)−麻痺手における生活上の問題を解決するための手続き−

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2025.07.07
リハデミー編集部
2025.07.07

<本コラムの目標>

1. Transfer packageにおけて、実生活の問題を解決するための手続きを知る

2. 問題解決を促す際の5stepについて知る

1. Transfer packageにおける問題解決技法とは?

 Morrisらは、論文の中で、Transfer packageにおける問題解決技法について述べています[1]。Transfer packageにおける問題解決技法(Problem-Solving Techniques)は、対象者が脳卒中後に生じた麻痺手に対するリハビリの過程や日常生活で直面するさまざまな障害や困難に対処するための戦略です。この技法は、単に身体的な訓練だけでなく、患者が自分自身で困難な状況に適応し、問題を解決するための認知的スキルを育てることを目的としています。


 脳卒中後の対象者は、麻痺手に対するリハビリの過程や日常生活の中で多くの問題に直面します。たとえば、以下のような課題が考えられます。

・麻痺側の手足を使うことに対する不安や恐れ

・課題がうまく進まない場合の挫折感

・日常生活で麻痺側の手足を使おうとしても、うまくできないという困難

これらの課題に対処するために、療法士は対象者に対して心理的かつ身体的な難易度を整え、問題解決を図っていかなければなりません。したがって、Transfer Packageにおける問題解決技法には、以下のようなステップが含まれています。


1. 問題の特定:まず、患者が直面している具体的な問題を明確にする。たとえば、「麻痺側の手を使ってコップを持つのが難しい」という問題です。

2. 目標の設定:次に、その問題を解決するための具体的な目標を設定します。この場合、「コップを安全に持てるようになる」という目標を設定します。

3. 解決策の考案:次に、その目標を達成するために考えられるいくつかの解決策を考えます。たとえば、最初は軽いプラスチックのコップから始める、手のサポートを使うなどの方法が考えられます。

4. 実行:患者は選択した解決策を実行します。ここでは、プラスチックのコップを使うことで、まずは安全にコップを持てるようにすることを目指します。

5. 評価:最後に、その解決策が効果的であったかどうかを評価し、必要に応じて別の方法を試すか、調整を行います。


 このようにして、療法士は、対象者自身が、自分自身で問題を解決する能力を徐々に育て、リハビリ中に経験した成功体験を通じて自己効力感を高めていくことができます。自己効力感[2]が高まれば、対象者は自身で行動を起こすようになり、実生活における麻痺手の使用行動は促進されます。このプロセスにより、患者は単に物理的な回復だけでなく、心理的な回復も促進され、リハビリテーションの成果が日常生活にも持続的に反映されやすくなり、長期的な麻痺手の機能改善または意地にも繋がることが考えられています。

2. 問題解決技法の重要性

 CI療法は、身体的な訓練と同様に、対象者の心理的・認知的側面にも大きく依存しており、包括的なアプローチが必要になります。脳卒中後の対象者は、多くの場合、麻痺手を使うことへの恐れや、回復への自信の欠如など、精神的な壁に直面します。問題解決技法は、難易度調整を施した環境の中で培った成功体験を利用して、こうした心理的な壁を克服し、積極的にリハビリや実生活における麻痺手の使用に取り組むための道具として機能すると考えられています[3, 4]

 特に、療法士と一緒に行うリハビリとは異なり、日常生活で麻痺手を使い続けるためには、日常の小さな問題や困難に柔軟に対処する能力が求められます。問題解決技法は、療法士が主導するリハビリ中だけでなく、対象者自身主導する実生活の中でも継続的に運動機能の改善を図るための重要なスキルの獲得に寄与します。

 さらに、対象者が自ら問題を解決することで、自己効力感が高まり、リハビリに対するモチベーションも維持されやすくなります。このように、問題解決技法はCI療法における治療効果を高め、日常生活における持続的な機能回復をサポートするための重要な役割を果たします。


参照文献

1. Morris, D. M., Taub, E., & Mark, V. W. (2006). Constraint-Induced Movement Therapy: Characterizing the Intervention Protocol. Europa Medicophysica, 42(3), 257-268.

2. Bandura, A. (1997). Self-Efficacy: The Exercise of Control. New York: W.H. Freeman.

3. Takebayashi, T., Koyama, T., Amano, S., Hanada, K., Tabusadani, M., Hosomi, M., ... & Domen, K. (2013). A 6-month follow-up after constraint-induced movement therapy with and without transfer package for patients with hemiparesis after stroke: a pilot quasi-randomized controlled trial. Clinical rehabilitation, 27(5), 418-426.

4. Taub, E., Uswatte, G., Mark, V. W., Morris, D. M., Barman, J., Bowman, M. H., ... & Bishop-McKay, S. (2013). Method for enhancing real-world use of a more affected arm in chronic stroke: transfer package of constraint-induced movement therapy. Stroke, 44(5), 1383-1388.

次の記事

リハキャリ2024 講義...

Top