本邦におけるBrain Machine Interfaceについて
<このコラムで学べること>
・本邦におけるBrain Machine Interfaceの現状
1. 本邦における Brain Machine Interface(BMI)の現状
世界的にも開発が進んでいるBMIですが、本邦においても株式会社LIFESCAPESがBMIについて取り扱いを進めている。LIFESCAPES社のBMIは今春に医療用BMIということで日本における医療機器認証を取得し、厚生労働省に『運動量増加機器加算』に関する保険適応についても申請がなされています(図1)。
LIFESCAPES社のBMIは、脳波(EEG)といった生体信号を取得し、それをコンピュータや外部装置に伝達することで、脳の活動を解析・利用し、脳卒中後の上肢麻痺に対するリハビリテーションを進めることを目的にしています。特に、非侵襲的な方法で脳の情報を取得することに重点を置いており、手術や体に負担をかけずに信号を取得できる点が大きな特徴です。
同社のBMIシステムは、高精度なセンサーと信号処理技術を組み合わせて、脳の活動をリアルタイムでモニタリングし、解析することができます。これにより、ユーザーが頭で思い描くだけで機器を操作したり、リハビリテーションの進捗を評価することが可能となります。
2. 脳卒中後の上肢麻痺に対するリハビリテーションへの応用
LIFESCAPES社のBMIは、リハビリテーションの分野で特に大きな効果を発揮します。例えば、脳卒中や脊髄損傷などで運動機能が低下した患者に対して、BMIを用いたリハビリテーションを行うことで、回復を促進することができます。このアプローチでは、患者が動作を想像することで脳の特定領域が活性化し、その信号を解析して外部デバイスに伝達します。これにより、実際に身体を動かさなくても、脳が動作に関連する神経回路を活性化させることができ、リハビリの効果を高めることができます。
また、BMI技術はリハビリテーションの進捗評価にも活用されており、脳の活動パターンを解析することで、回復の度合いや今後のリハビリプランの策定に役立てることができます。これにより、個別化されたリハビリテーションプランを提供することが可能となり、患者の回復をより効果的にサポートします。
実際にこれらの機器を用いた臨床研究では、Kawakamiらの研究が示されています。29名の対象者に1日40分のBMIを用いた練習を10日間実施しています。その結果、介入当初は、随意運動を実施した際に手指伸筋群の筋電応答がなかった対象者29名のうち、介入後には21名において、手指伸筋群の筋電応答が認められたと報告されています。その後生じた筋電を利用して、筋電トリガー型の電気刺激装置を用いたリハビリテーションに移行し、良好な上肢機能の改善を認めたと報告しています。
3. BMI技術の仕組みと課題
LIFESCAPES社のBMIは、まず脳波を高感度センサーで取得し、その信号をノイズ除去や特徴抽出などの処理を施して解析します。この解析により、特定の脳波パターンがデコードされ、それが意図された動作や指令として認識されます。たとえば、「手を握る」動作を思い浮かべた際の脳波パターンを検出し、それに応じて外部のロボットアームが動作する、といった応用が考えられます。実際に、Onoら[2]の研究では、BMIを用いてこれらの手続きを実施した際に、補足運動野と運動野の活動性が認められたと報告されています。
しかし、BMI技術にはいくつかの課題もあります。まず、脳波信号は個人差が大きく、同じ動作を思い描いても異なるパターンが出ることがあります。このため、個々のユーザーに対してカスタマイズされた信号解析モデルが必要となる場合が多いです。また、ノイズの影響を受けやすく、正確な信号取得には高度な技術が求められます。この点に関しては、今後も技術的な発展が期待されています。
参照文献
1. Kawakami, Michiyuki, et al. "A new therapeutic application of brain-machine interface (BMI) training followed by hybrid assistive neuromuscular dynamic stimulation (HANDS) therapy for patients with severe hemiparetic stroke: a proof of concept study." Restorative neurology and neuroscience 34.5 (2016): 789-797.
2. ONO, Takashi, et al. Multimodal sensory feedback associated with motor attempts alters BOLD responses to paralyzed hand movement in chronic stroke patients. Brain Topography, 2015, 28: 340-351.
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