リハキャリ2024 講義の感想と解説(5)
さて、前回までDay2の内容についてご紹介をしてきました。
Day2までは回復期リハ病棟で働く上で一般的に知っておきたい知識・技術に関してでしたが…
Day3からは疾患特異的な内容になっていきます。
本日はDay3 講義1 岸和田リハビリテーション病院の平山先生による「知っておきたい回復期における脳卒中リハのエビデンス」、講義2 福岡みらい病院の木村先生による「回復期リハ病棟におけるADL・IADL獲得に向けた実践アプローチ」について感想を述べさせていただきますッ!
『知っておきたい回復期における脳卒中リハのエビデンス』
岸和田リハビリテーション病院 平山幸一郎先生
こちらの講義では、まず『エビデンスとは?』について触れられた後、回復期リハビリテーション病棟で働く上で、知っておきたい脳卒中リハのエビデンスについて、わかりやすく講義をいただいています。
まず、エビデンスに関して、ベンジャミン・スポック博士の「赤ん坊はうつ伏せで寝かせた方が良い」という専門家の意見について、取り上げられていました。これは、専門家の経験と印象で述べられた発言が、実は臨床研究等で調査した証拠(エビデンス)なくまことしやかに言われていたものであり、その発言通りに寝かされた多くの乳児が幼児突然死症候群で亡くなった可能性についてお話がありました。
また、続いて、心筋梗塞に心室外収縮や非持続性心室頻拍が多い場合、生命予後が悪く、それらに対して、抗不整脈薬を用いることで、生命予後が改善できるといった専門医の経験の是非を確かめたCAST studyの内容にも触れられています。これは、CAST studyの結果、経験上良かれと思って処方されていた抗不整脈薬が生命予後を逆に縮める可能性が明らかになり、即座に研究の中止および抗不整脈薬の使用に関する警告がなされた事例です。このようにエビデンスとは臨床研究の結果示された証拠であり、療法士が臨床において、患者さんに何かを提供する際の重要な指標となるものとなるとのことでした。
次に、それらエビデンスをどのように臨床において、使用するのかについて、エビデンスを基盤とした実践(Evidence based practice[EBP])について、EBPにおける4つの構成要素(エビデンス、患者を取り巻く環境、患者の希望と行動、医療者の臨床経験)と患者さんとのコミュニケーションモデルであるShared Decision Makingについてお話がありました。EBPについては、一般的にエビデンスが確保されているものしか使わない「エビデンス至上主義」と勘違いされている場面が多々ある印象です。講義の中ではその誤解を解くべく、臨床において、どのようにEBPを進めるかについて丁寧な説明がありました。
最後に具体的な脳卒中後のエビデンスについての解説がありました。内容としては、研究デザインによるエビデンスの正確性の問題に触れた後、代表的なシステマティックレビューやガイドラインに関する言及がありました(こちらについては、具体的な内容を上肢麻痺、ADL、移動・下肢機能、座位・体幹コントロール、に関して、たくさん示されていましたので、是非、上下のリンクより #リハキャリ2024 に登録し、ご視聴くださいませ)
スライドも見やすく非常にわかりやすい講義だと感じました。是非、若手、中堅の方々に見ていただきたい講義でしたし、こういった情報は、一般の脳卒中患者さんやその家族の方にも知っていただきたいなと感じました。
「回復期リハ病棟におけるADL・IADL獲得に向けた実践アプローチ」
福岡みらい病院の木村愛先生
こちらの講義では、脳卒中患者のADL・IADLにおける問題点、それらを向上させるために必要な知識・技術、患者中心のリハビリとチームアプローチ、社会復帰に向けたリハビリプランの選定について、お話しいただきました。
まず、ADL・IADLについて、それらを構成する、食事動作やトイレ動作といった活動の難易度を知り、どの点が問題点になりうるのかについて、解説がありました。結論として、移動・移乗を伴う、ダイナミックな活動の難易度が高いことに留意し、ADL・IADLに対し、どういった順番で介入を行なっていくか、目の前の患者さんがどの程度良くなるのかを理解するための予後予測の具体的な方法を複数示してくださいました(こちらについては、臨床でよく使う、予後予測法について、講義内でご紹介くださっていますので、是非、上下のリンクより #リハキャリ2024 に登録し、ご視聴くださいませ)
回復期に関する具体的な知識・技術においては、具体的な事例を示しつつ、病態解釈から、問題点の抽出、それを踏まえた作業分析と、機能練習および代償動作練習を組み合わせた介入方法について、ご紹介をいただきました。こちらについては、特に着衣動作に対する作業分析について、詳しく解説をいただいています。作業療法士としての「作業分析」のスキルは私たちのアイデンティティや専門性を示すために必要なスキルであり、重要さを非常に感じました(具体的な作業分析に関して多くの方に聞いてもらいたいです。是非、上下のリンクより #リハキャリ2024 に登録し、ご視聴くださいませ)
最後に、個別で向上したADL・IADLを最大限活かした社会復帰に繋げるために、患者中心のリハビリを実現するための、カンファレンス、他職種連携について、触れていただいています。感想として、現場で患者さんを大切にされ、そこに研究的知識、作業分析という専門スキルを絡めた、参考になる臨床のお話しだと感じました。
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さて、今回は講義1 岸和田リハビリテーション病院の平山先生による「知っておきたい回復期における脳卒中リハのエビデンス」、講義2 福岡みらい病院の木村先生による「回復期リハ病棟におけるADL・IADL獲得に向けた実践アプローチ」について感想を述べました。いかがだったでしょうか。次回は、西大和リハビリテーション病院の原先生の「回復期リハ病棟における上肢機能アプローチ」と、伊丹恒生脳神経外科病院の梶本先生の「前頭葉機能のみかた」のご紹介になります。楽しみにしていてくださいね。