さて、前回はDay3 講座5 四條畷大学の花田先生による『道具使用障害の理解と対応』、さらに株式会社デジリハの大松先生による『半側空間無視の実践的な知識の整理』について感想を述べさせていただきました。
今回は、Day3 講義7 井野辺病院の加藤先生による『回復期における脳卒中の自動車運転』と 講義8 NPO法人日本学び協会ワンモアの金川先生『回復期リハ病棟などにおける就労支援の基礎知識』について感想を述べさせていただきます。それでは、よろしくお願い申し上げます。
『回復期における脳卒中の自動車運転』
井野辺病院 加藤貴志先生
回復期リハビリテーション病棟において、運転支援の重要性は年々向上しているように肌感覚でも感じています。実際、加藤先生もこの点については言及されていて、運転が再開できた人と、再開できなかった人の間で社会との繋がりに差があることや、医療機関から助言を受けた人の方が、受けなかった方に比べ、運転再開率が上がること(約6倍の差)、さらには脳卒中後の患者さんが健常人と比べ運転再開後の事故が多いことを示した研究結果(3.6倍)をあげ、その必要性に言及されていました。
回復期における運転支援の役割について、安全運転が可能な状態かどうかを評価すること、安全性の向上に向けた支援を行うこと、回復期退院後に次の支援先に繋げること、の3つの観点を挙げられていました。また、高齢者に対する一般的な運転支援と脳卒中後の患者さんに対する支援が異なることについても言及され、特徴に応じた体制の構築が必要と仰っていました。
また、発症から運転再開までの流れ、法律上の運転に必要な能力、具体的な運転に関する診断書を提示された上で、運転に必要な要因の解説、そして、患者さんの病態に応じた介入方法の具体例について触れていただきました。
この具体例に関して、運転に特化した評価と一般的な神経心理学検査を併せ、運転に関する認知機能と対応する検査を網羅する必要性を述べておられました。また、その結果から、視覚性短期記憶、遂行機能、半側空間無視の低下が認められた患者さんの具体的な臨床像や各種検査とそれらの現象の結びつきについて、丁寧に解説いただきました。その上で、病態に応じた一般的な介入に関して、ご提示いただきました。
運転支援の概要から、評価と解釈、さらにはそれらを活かした病態に応じた介入手段の紹介まで、膨大な情報をわかりやすくお伝えいただいた圧巻の講義でした。回復期リハビリテーション病棟におられる方は皆さん時っておいて良い知識だと感じました。
『回復期リハ病棟などにおける就労支援の基礎知識』
NPO法人日本学び協会ワンモアの金川先生
こちらの講義では、回復期リハ(医療機能)において就労支援を実施する中でできることは何か、服飾や再就職を想定したリハビリテーションの組み立て方、について、お話をいただきました。
まず前提として、作業療法とは、生活行為、さらには職業といった仕事をも支援する職種ということを強く述べられていました。これは、中の人の経験ですが、台湾に見学にいった際、作業療法の漢字表記が「職業療法」だったことを思い出します。働くことは生きること、なんてドラマのセリフもありましたが、我々作業療法士は、社会復帰における職業について、もっと接する点を増やさねばならないのだなと率直に感じました。また、作業療法協会が出している地域共生社会5ヵ年戦略関連でも医療機関から企業や就労支援施設等への情報提供及び連隊を行うよう呼びかけているそうです。
ここからは、精神科領域における就労支援に関するプロセスを金川先生の豊富な経験の中からお話ししていただき、その中で回復期リハビリテーション病棟においてできること、つまり役割を提示してくださいました。特に、心身機能の回復、職業的能力・対処技能の獲得、企業との連携の部分において、回復期リハビリテーション病棟を含む医療機関の役割は大きいのではないか、といったお話をいただきました。こちらはかなり簡略化して感想を述べています。講義の中では院外での就労支援に関する振る舞い等について具体的な例を挙げ、詳細に説明いただいていますので、是非、上下のリンクより登録の上、実際に講義を受けていただければと思います。
次に就労に向けたリハビリテーションを行なっていくために、就労に関わる上で必要な評価、就労に関するニーズの探索、トップダウン、ボトムアップ型のプログラム作成の実際について、かなり具体的に階層化したお話をいただいています。このマップとピラミッドが頭の中にあるだけで、病院の中でどのような就労支援の関わりが必要なのかが整理できた印象があります。とにかく、回復リハビリテーション病棟の中で一般的に実施する心身機能の評価、作業分析等に加え、求められる職業に必要な基準、一般的な職業に必要な基準等を理解した上で、評価介入を構成することが重要だということを感じました。
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今回は、Day3 講義7 井野辺病院の加藤先生による『回復期における脳卒中の自動車運転』と 講義8 NPO法人日本学び協会ワンモアの金川先生『回復期リハ病棟などにおける就労支援の基礎知識』について感想を述べさせていただきました。