脳血管障害における視野障害について 〜臨床上頻繁に生じる黄斑回避とは?〜

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2023.02.27
リハデミー編集部
2023.02.27

<抄録>

 脳卒中後に生じる一般的な障害の一つに,後頭葉の障害に由来する視野障害がある.視野障害は4つの分類に分けることができる.一般的には,1)同名半盲から両眼の視野半分の欠損:視神経交叉部より広報の後方の損傷で生じる.左同名半盲と右同名半盲がある.2)異名半盲(交叉半盲)から両眼の反対側視野半分の欠損:視索前方の損傷で生じた両耳側半盲と両鼻側半盲がある.3)四分一半盲から両眼の視野の同部位の四分の一が欠損する:側頭・頭頂葉領野の損傷で生じる.4)暗点から視野の一部欠損:①場所に関して:中心暗点,副中心暗点,盲点中心暗点,周辺暗点,輪状暗点.②程度に関して:絶対暗点,相対暗点.③両側対称性に関して:同名半盲暗点,同耳側半盲暗点,上側半盲暗点,下側半盲暗点,が挙げられている.また,これらに加え,黄斑回避と言った現象も存在する.本コラムでは,それらの解説を実施し,視野障害をより詳細に評価できる一助としたいと考えている.

1.脳血管障害における視野障害について

 脳血管障害において,後頭葉の損傷が両側,あるいは片側に生じることで,種々の視野障害が発生する.視路は,網膜に始まり,視神経,視交叉,視索,外側膝状体,視放線,視覚の投影先として重要な網膜と視覚伝道路および一次視覚野の間には対応関係(網膜対応的と呼ばれる)があり,当該領域が損傷されることにより,視野損傷が認められると言われている.すなわちどう言った視野障害が生じるかについては,画像上の診断により,概ね推定することが可能だと考えられている.これら損傷部位と半盲の種別の関連に関する詳細については,所ら1の書籍を参考にされたい.

 視野障害は,1)同名半盲から両眼の視野半分の欠損:視神経交叉部より広報の後方の損傷で生じる.左同名半盲と右同名半盲がある.2)異名半盲(交叉半盲)から両眼の反対側視野半分の欠損:視索前方の損傷で生じた両耳側半盲と両鼻側半盲がある.3)四分一半盲から両眼の視野の同部位の四分の一が欠損する:側頭・頭頂葉領野の損傷で生じる.4)暗点から視野の一部欠損:①場所に関して:中心暗点,副中心暗点,盲点中心暗点,周辺暗点,輪状暗点.②程度に関して:絶対暗点,相対暗点.③両側対称性に関して:同名半盲暗点,同耳側半盲暗点,上側半盲暗点,下側半盲暗点,といったように4つのタイプに分類されている.眼前の対象者が単純な半盲ではなく,どのような盲を呈しているかにを上記のタイプに当てはめ検討を行うことが必要となる.

2.視野障害における黄斑回避とは?

 上記のような半盲を有する対象者の中でも,同名半盲を呈する対象者においては,盲以外にも『黄斑回避』と言った現象を生じることがある.同名半盲では,半側視野が完全に欠損する場合と欠損側で網膜の黄斑部に対応する部分だけ盲を呈した視野の中に小さく残っていることがある.この残存視野は黄斑回避と呼ばれる.黄斑回避の原因としては,①黄斑部分に応対している皮質の面積が大きく,それらの領域が全て損傷されることは稀であること,②黄斑部に両側の後大動脈から二重の血液供給を受けているため,血管損傷による低酸素症に対して強い抵抗性がある,と言った理由が挙げられている.これらの要因から,半盲により,視野が欠損してしまった場合でも,その視野内に機能を残存している部位がある場合も少なくない.これらを前提とし,氏や検査を実施する際には,より詳細にそれらを評価する必要がある.

まとめ

 脳血管障害後に視野障害が生じることは多々ある.それらの視野障害を単純に『半盲』と大雑把な評価をするだけでは,対象者独自の問題点に対応した環境設定やアプローチが実施できない可能性がある.対象者の視野障害の種別について,上記の分類や黄斑回避の部位等を詳細に理解し,対象者に応じた支援を提供する必要がある.


参照文献

1. 所 敬、金井 淳:現代の眼科学 改訂第8版 p.46-48 (2002) 

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