吉尾雅春先生インタビュー④:今までの体制を見直し新たな教育の礎を築く
変わりつつある臨床教育
吉尾:今年、神経理学療法学会の代表を辞めることになりましたが、病院では、まだ現役です。病院の副院長で法人の理事ですから定年がないんですよ。私は現場が大好きだから現場を見に行って、いろいろやったことをまとめて、皆さんにも提供しています。これから、そういうことやってくれる人たちがどんどん増えていくと、しっかりした突き上げになっていきますよね。彼等の中から、また良い研究者、教育者が出てくると、社会は変わって行くのかなと思っています。そうなるまで10年待たないと思いますよ。
藤本:できるだけ早く実現できるように私も頑張りたいと思います。
吉尾:そうですね。この前ここでNHKのガッテンの取材をしていただいたんですが、あの場面、ちゃんとテレビに出ますよ。インタビューをしているところが出る予定ですが、メインテーマはドクターが二人と私が一人と、三人の共通したテーマというのがあるんです。皮膚科のドクターと、血圧のドクターと、私はリハという立場で紹介されます。その3人のメインのテーマは何かと言うと、「医療を変えたすごい人」です。らしいですよ。NHKは何でそんなことを調べてくるんだろうと思いますけども。
藤本:AERAじゃないですか?
吉尾:AERAもそうですね、AERAも嘘は書いてなかったですからね。私が書いているものなどいろいろなものを読んで、彼たちなりに調べてから来て、私に取材に来たんです。今までそういうことはなかったのに、取り扱ってくれるというのは、ある意味、「今まであなたたち何やっていたの?」と警鐘を鳴らしてくれているわけでもありますよね。AERAやNHKで取り上げられるようになって、私には医師もたくさん飛んで来ると思います。槍も飛んで来ると思いますけれど。でも、そうすることで社会が変わるひとつの力にもなっていくかなと思っていますね。
藤本:おっしゃる通りですね。今まで「メディアに出るのは悪だ」といったスタンスをとっている人がいまだに多いと思うんですけれども、社会に届いてナンボなんですよね。私たちは学問としては自分たちの職種、もしくは関連職種の中で行い、よいことはより簡単に適切な形で世に伝えていかなければいけません。その世に伝えるという部分が今までなかったところだと思うんですよね。
吉尾:そうですね。
今後のリハビリてショーション業界へ期待することとは
藤本:先生をはじめとして、最近ようやく少しずつメディアに出始めている一方で、先生のようにアカデミックな部分も考えている人と、「こうしたら簡単によくなりますよ」と手技だけを出してメディアを使っている人がいますよね。それは認知度向上にはいいのかもしれないですけが、本質的な意味では全く逆行していると思います。そういう意味では先生のようにアカデミックも考えてメディアに出る人がもっと出てこないとよくないと思います。では最後に、総括的に診療ガイドライン、もしくはエビデンスや今の時代を通して、臨床にいる理学療法士、作業療法士、研究をしている人たちに向けて、期待していることをまとめていただけますでしょうか?
吉尾:このネクタイ、どういう模様に見えますか?
藤本:四角が散りばめられている。
吉尾:どういうふうに?縦、横、斜め?
藤本:縦にも斜めにも横にもですね。一番印象に残るのは斜めですね。
吉尾:そうですよね。でも今、縦、横、斜めどれもおっしゃいましたよね。それが大事なんですよね。臨床って、ぱっと目がいったところに注目するとことはすごく大事なことなんですけれども、そこに取り憑かれてしまうんですよ。
藤本:なるほど。見えるところにしか目を向けない。
吉尾:そうです。しかもそこに自分を支配している知識が影響し、自分の中から囁くわけです。すると、斜めにしか見ることができなくなってしまうんです。本当、は問題は横なのに、斜めしか見えてないということを臨床家達とはよくやるんです。ゲシュタルトですよね。ゲシュタルトの法則そのままだと思います。そこをできるだけオープンにするためにも、いろいろなことを基礎から学ばないといけないですよね。上っ面だけではなくて基礎からしっかり学ぶような自己投資をちゃんとしないといけませんね。とくに臨床家はすぐ技術に突っ込んでいってしまい技術の背景になっているものの考え方しか頭にない状態になりやすいです。そうすると、斜めにしか見えないままずっといってしまい、横に問題を抱えてる方達が救われないままになってしまいます。オープンな気持ちで客観的に物事を見据えていくことが大事だと思いますね。
藤本:上澄みではなく本質を見る力ということですね。あとはそれに合わせて意思決定をする力ですね。それではこれでインタビューを終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
吉尾:ありがとうございました。