亜急性期と急性期の大脳皮質におけるネットワークの特徴の違いについて(2) 〜大脳皮質におけるネットワークはどのような方法で解析されるのか?〜
<抄録>
大脳皮質の機能的ネットワーク解析において、安静時のネットワークと特異的なタスク時の事象関連結合が重要視されている。これらのネットワークは動的に再構築され、特定のタスクに特化した神経活動の変化に寄与することが示されている。これまでの研究ではfMRIやEEGを使用して特異的なタスクに関連する活動を調査してきたが、その際にはユーザーが指定したROIを使用する必要があり、他の領域の調査が困難であるとされてきた。しかし、近年ではEEGやMEGを用いたコヒーレンス分析が登場し、ROI設定が不要で全脳の安静時ネットワークを調査できるとされている。これらの利点から、今後はEEGやMEGを用いたコヒーレンス分析が大脳皮質ネットワーク解析の中心になる可能性が高まっている。特定の課題に関連するネットワーク調査においては、能動的タスク、受動的タスク、運動イメージタスクを用いる研究が主流であり、パラダイムと分析が明確に分割される必要がある。
1. 大脳皮質におけるネットワークはどのようなどのような方法で解析されるのか?
安静時の大脳皮質における機能的ネットワークは、複雑な脳のインタラクションおよびコミュニケーションを理解する上で、近年非常に重要視されている[1]。また、対照的に、何か特異的なタスクを実施している際の大脳皮質のネットワークにおける事象関連結合は、人間の脳が運動を含む環境にどのように適応的変化を示すのかを評価する上で、不喀血であるとも言われている。近年、特異的なタスクに関連する大脳皮質の機能的ネットワークが、脳のネットワーク構成を動的に再構築し、あるタスクに特化した神経活動のパターンニングを変化させる上で重要な役割を果たすことが示されており[2,3]、これらがリハビリテーションプログラムにも応用できるのではないかとされている。
しかし、これまでの研究では、特異的なタスクに関連する大脳皮質の活動を調べる際には、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)における血中酸素濃度依存性反応(BOLD反応)や、脳波法(EEG)における事象関連脱同期(ERD)の変化を用いて、調査するのが通例であった。そのため、特異的なタスクに関連する大脳皮質の活動について、全脳ではなく、一部の脳活動に焦点が当てられ、議論がなされてきた[4, 5]。これらの問題を解決するために、Dynamic Causal modeling(DCM)を用いて、大脳皮質における大脳ネットワークを探索するといった研究もなされている。DCMとは、Dynamic Causal Modeling(DCM)は因果的結合(effective connectivity)を調査するための代表的解析法である.DCMの特徴は,神経レベルでモデルを作成し,神経活動を脳血液動態反応へ順モデルを使って変換し,ベイズ手法により全脳における神経・脳血液動態それぞれのパラメータを推測するという点である.ただし、これらの方法を用いても、DCMにおけるユーザーが指定した関心領域(ROI: Region of interest)を必要とする。ROIについては、先行研究で示されたセットを使用する必要があり、これらで設定されている以外のROIについては、調査を行うことが困難であるとされている[6,7]。そういった難点を、近年ではEEGや脳磁図(MEG)を用いたコヒーレンス分析が挙げられる。この分析は、ROI設定が必要なく、全脳における安静時のネットワークを調査することができると言われている[8]。さらに、EEGやMEGを用いたコヒーレンス分析の利点としては、fMRI等に比べると、頭部の動きに関して、影響を受けにくいと言われている。これらの利点からも、今後の大脳皮質のネットワークに関する分析について、EEGやMEGを用いたコヒーレンス分析が今後の中心になる可能性があると考えられている。
さて、最後に特定の課題に関連するネットワークを調査する際の課題における運動パラダイムとしては、能動的タスク、受動的タスク、運動イメージタスクを用いる研究がほとんどである[9-11]。これらの課題において、運動実行、運動企図が含まれている。これらについて、パラダイムと分析が明確に分割され、分析されていることを確認する必要がある。
参照文献
1. van den Heuvel, MP, and Hulshoff Pol, HE. Exploring the brain network: a review on resting-state fmri functional connectivity. Eur Neuropsychopharmacol. (2010) 20:519–34.
2. Bray, S, Arnold, AE, Levy, RM, and Iaria, G. Spatial and temporal functional connectivity changes between resting and attentive states. Hum Brain Mapp. (2015) 36:549–65.
3. Cole, MW, Ito, T, Cocuzza, C, and Sanchez-Romero, R. The functional relevance of task-state functional connectivity. J Neurosci. (2021) 41:2684–702.
4. Chen, S, Li, Y, Shu, X, Wang, C, Wang, H, Ding, L, et al. Electroencephalography mu rhythm changes and decreased spasticity after repetitive peripheral magnetic stimulation in patients following stroke. Front Neurol. (2020):11.
5. Kenzie, JM, Findlater, SE, Pittman, DJ, Goodyear, BG, and Dukelow, SP. Errors in proprioceptive matching post-stroke are associated with impaired recruitment of parietal, supplementary motor, and temporal cortices. Brain Imaging Behav. (2019) 13:1635–49.
6. Chen, C, Lee, S, Wang, W, Lin, Y, and Su, M. Eeg-based motor network biomarkers for identifying target patients with stroke for upper limb rehabilitation and its construct validity. PLoS One. (2017) 12:e178822.
7. Nasrallah, FA, Mohamed, AZ, Campbell, ME, Yap, HK, Yeow, C, and Lim, JH. Functional connectivity of brain associated with passive range of motion exercise: proprioceptive input promoting motor activation? Neuroimage (Orlando, Fla). (2019) 202:116023
8. Serrien, DJ, Strens, LHA, Cassidy, MJ, Thompson, AJ, and Brown, P. Functional significance of the ipsilateral hemisphere during movement of the affected hand after stroke. Exp Neurol. (2004) 190:425–32
9. De Vico, FF, Pichiorri, F, Morone, G, Molinari, M, Babiloni, F, Cincotti, F, et al. Multiscale topological properties of functional brain networks during motor imagery after stroke. NeuroImage. (2013) 83:438–49.
10. Kim, D, Kim, L, Park, W, Chang, WH, Kim, Y, Lee, S, et al. Analysis of time-dependent brain network on active and mi tasks for chronic stroke patients. PLoS One. (2015) 10:e139441
11. Qiu, S, Yi, W, Xu, J, Qi, H, Du, J, Wang, C, et al. Event-related beta eeg changes during active, passive movement and functional electrical stimulation of the lower limb. IEEE Trans Neural Syst Rehabil Eng. (2016) 24:283